食品化学新聞の連載第3回目が掲載されました
※本連載は食品業界の企業や働く理系プロ人材方に向けて、働き方の多様化について様々な角度でお伝えする企画となっております
11月25日号の食品化学新聞に「RDサポート新しい働き方への招待<第3回/全6回>」が掲載されました。
第3回は企業向けキャリア自律支援サービス「プロテア」を展開しているパーソルプロセス&テクノロジー株式会社の宮崎将氏と、RDサポート取締役でLINK事業部マネージャーの大島の対談記事となります。
一般的に本業の仕事ではない仕事を行うことを副業と呼ぶが、多くの副業の意味合いは収入補填が理由に挙げられることが多く、自己成長を目的とするケースは少ない。そこで注目されるのは、同じ読み方であるが、漢字の違う「複業」だ。「複業」は自律的なキャリア構築が目的で、「副業」とは区別される。パーソルプロセス&テクノロジー株式会社に所属しながら、NPO法人二枚目の名刺に所属して複業する宮崎将(みやざきまさる)氏は、「プロテア」という事業を立ち上げ推進している。「プロテア」とは複業による“キャリア自律”を目的として、適切な複業活動に取り組むことを支援するサービスのこと。今回は宮崎氏と、理系専門職の複業支援「RD LINK」に携わる大島氏がそれぞれの視点から複業をテーマに対談を行った。
大島 改めてプロテアのサービスについて教えてください。
宮崎 複業マッチンサービスは今世の中に多くありますが、複業したい方と複業で働いて欲しいと考える企業等をつなぐ「点」の支援です。持続的な人と組織の成長を考えると、複業において自分がどう成長したか、そこでの経験を次にどう生かせるかが大切です。「プロテア」は、複業した人材と所属企業に対して、複業効果をフィードバックするサービスです。複業をした結果、どのようなキャリア開発ができたのか、どういうリテラシーが身に付いたのかを本人が可視化でき、企業にはレポートとして返しています。
大島 本人の可視化と企業への可視化は少し違うと思いますが、どのようにお考えですか。
宮崎 可視化については攻めと守りの可視化があります。まず守りの可視化は、「時間」と「コンディション」。時間管理はもちろんですが、時間の長短だけが本人のコンディションに関わるわけではありません。そのバランスを可視化して本人が心身共に良い状態であることが大事です。攻めの可視化は「行動」と「効果」。同じ内容の複業でも本人の内省の度合いによって効果が変わりますので、その効果についてキャリア資産という新たな指標を用いて可視化することが大事です。
大島 複業というとサブの「副業」のイメージで、ブラックボックス化しやすい、お小遣い稼ぎに見られるなど、未だ後ろめたい部分がありますが、複業で得られた経験と成長を本人と企業がお互いに確認できれば良いのかなと思います。
宮崎 人生100年時代で、個人としては今の会社で働き続けることを前提
とするのか、会社としても終身雇用を前提とするのかにより、キャリアプランニングの仕方も変わってきます。安定した会社が前提から覆される時代ですから、個人が主体的に考えていかないと立ち行かなくなってきています。
大島 RD LINKも新規事業ですが、御社の中でプロテアが立ち上がったキッカケを教えてください。
宮崎 私自身キャリアに迷った中、社外で活動(複業)したことで、自分のモチベーション向上ややりがいを見出したという現体験と、所属企業にとっても自身の価値の再定義や社外での人脈形成など組織にとってもプラスとなるメリットを感じました。複業を個人のためのものに留めず、組織にも還元できるものであると確信し、グループ内のビジネスコンテストで起案し承認されたことを機に、新規事業として進めました。
大島 素晴らしいですね。しかし、まだ複業は一部の人々によるものに留まっていると思います。
宮崎 複業という同じ取り組みをしていても個人と企業で捉え方も抱える課題も全く違うことが一番の問題だと思います。若手層は自社だけでできる経験が非常に少なく、ミドル層は自身の価値を再定義できないままプレイングマネージャーとして目の前の仕事に追われている。シニア層は役職定年でキャリアが途絶える。そういった様々な課題に対して、企業は十分なキャリア支援ができていません。
個人側では、やはり隠れて複業している方がまだ多いです。複業の意識調査では、会社に複業を申請している人は24.8%、申請していない人は54.0%となり、会社に申請している人は半数以下です。複業の内容が多様化する中で実態を把握していない企業も多くあると思います。
大島 企業としてはライバル会社で複業してほしくなく、別の業界での複業経験はどう評価するか基準が明確でないこともネックになっていると思います。個人でも収入補填と捉えている方もおり、堂々とキャリアとして人に言えないというのが現状なのかなと考えています。どうすればもっと複業が広がっていくと思いますか。
宮崎 個人の考えですが、例えばやりたいことが明確にある方は自分から発信して仲間を集めて真似ていく方法が良いと思います。やりたいことが漠然としている方は、複業している方の仲間に入れてもらい、横の繋がりで声をかけてもらえるようにすることです。無料セミナーやイベント参加で体験的にトライしてみることも良いと思います。
大島 なるほど。研究開発分野の複業の可能性についてはどう思われますか。
宮崎 ある食品会社から同業他社を集めて勉強会ができないかという相談を受けたことがありますが、形になりませんでした。やるとすれば、オープンイノベーションのような形で、社会課題を解決にもっていくような研究開発を行うとかですかね。食糧問題やSDGsなどのテーマで勉強会を行うなど、社内ルールだけに縛られずに取り組める出島的な場所があると、研究開発としても非常に幅が出てくると思いますし、そういうチャレンジの場所があってもいいのかなと思います。
大島 文系と比べて理系分野はキャリアの広がりがないと感じる人が多いです。弊社も約300件ある案件の4割以上が研究開発や商品開発という企業の方向性を担う案件で驚きました。それぐらい開発現場は焦っているのでしょう。
宮崎 地方で複業として特産品の販売マーケティングをしている方がいるのですが、ご本人はその経験が自社に還元できると全く思っていないんです。でも本来であればその経験は十分に自社の商品開発に活かせるはずで、その企業が複業を後押ししていればイノベーションが起こりえます。そんな事例がどんどん出てくるといいなと思っています。
大島 そうですね。プロテアなど、様々なサービスを通して複業という柔軟な働き方、理系分野での複業についても広がっていくと良いなと思います。