複業はスキルの相互作用でできることが増えていく

2022.11.25

エキスパートインタビュー

複業はスキルの相互作用でできることが増えていく

今回インタビューにご協力いただいたのは、フリーランスで活動するMさん。食品メーカーでの品質管理経験を活かして企業の支援をする一方で、ご自身でも個人事業主としてジュエリーの制作販売やクラフトチョコレートのブランドを立ち上げるなど幅広くビジネスを手掛けられています。ものづくりという一つのキーワードで様々なビジネスに挑戦している、まさにパラレルワーカーですが、フリーランスは意図せずに流れ着いた道だったそうです。

学生時代からのバックグラウンドである「食」と、全く異なる分野の「ジュエリー制作」。どちらも大切にされている今の働き方について、またそこに至るまでの背景や思い、将来のビジョンなどをお伺いしました。

                                    RDエキスパート:Mさん(30代・女性)

PROFILE

農学部で農業経済を学び、新卒で食品メーカーに入社。約10年にわたり、販売システムの営業や開発、製造部門、品質管理や品質保証部門など様々な部門で仕事を経験。培った多様なスキルをより活かせる環境を求めて転職し、加工食品の品質管理、商品開発、広報などに従事。食品の仕事の傍ら、趣味の延長で制作販売していたジュエリーを学ぶために留学を決意し2020年に退職するも、コロナウィルスの流行で留学がとん挫し、そのままフリーランスの道を選択。現在は自身の繋がりやRD LINKのエキスパートとしての仕事を受けながら、ジュエリー作家として活動中。

コロナで留学がとん挫。やむを得ずフリーランスの道に。

Mさんは現在フリーランスで活動されていらっしゃいますが、まずはこれまでのご経歴について改めて教えてください。

私は正社員として2社で働きました。まず新卒から10年間、フルーツや野菜の輸入および加工の会社に勤めていました。最初は営業をやり、その後事務や経理にも少し携わりました。その後に、ものづくりの現場を見たいという思いから製造部門に異動し、品質管理や品質保証を経験しました。10年間で色々な部署を渡り歩き、どちらかというと手広く仕事をしていた感じなのですが、社内ネットワークができたことで業務がスムーズに進む良さはありました。ただ会社としては1つの部門で長く働くことがスタンダードでしたので、様々な部署で経験を積んでも評価対象としての実績にならず、このままでは給与を上げることも難しいなと思うようになりました。それであれば今まで10年間で経験してきたことをトータルで活かせる仕事をしたいと考えて、少し小さな規模の会社に転職しました。

色々ご経験されているとのことですが、新卒入社の時は何か特定の職種での入社だったのでしょうか。総合職ですか。

職種としてはシステム営業です。まだECサイトとかDXといった言葉もない時期だったのですが、ECビジネスを推進していきたいという会社の意向がありました。そこでフルーツや野菜に特化した売買や受発注のシステムを開発していて、通販サイトの立ち上げをしたり受発注システムの要件定義をしていました。

その後色々部署異動をされたということで、ものづくりの現場を見たかったというお話もありましたが、異動に関してはMさんご自身が色々な部署を希望されたということでしょうか。

いえ、私が異動希望を出したのは、現場を知りたいという最初だけですね。

なるほど。それ以外は会社からの異動辞令だったものの、なかなか評価体制と一致せず転職されたということですね。

はい。転職した会社では商品づくりの川上から川下まで携わり、色々な経験をさせていただいたのですが、ずっと続けていたジュエリー制作にも本腰を入れて取り組みたいという気持ちから、留学しようと思って退職しました。そうしたらコロナが始まって行けなくなってしまい、そこからフリーランスとして働いています。

ジュエリー制作を複業でされていらっしゃったということでしょうか。

作家活動をしていまして、シルバーや天然石を用いたコスチュームジュエリー類を作っています。でも複業としてやっていたわけではなく、趣味でやっていたことが少し商売になってきたという感じです。それでちょっと本腰を入れようかなと思ったんですよね。

もう少し自分の作品の世界観を確立していきたいという思いがあり、天然石などを用いる素材を広げていく中で、もっと学ばなければいけないことが沢山あると感じるようになりました。そこでジュエリーを本格的に学んでみようと思い留学を考えて仕事を辞めたら、コロナが流行し行けなくなってしまったという・・・。

会社員を辞めて全く別の道で海外に学びに行くというのは、大胆で勇気のいる行動だと思うのですが、不安はありませんでしたか。

もちろんありましたが、1社目2社目を辞める際に「社員で来ませんか」と声をかけてくれた会社さんがいくつかありましたので、もし先々困ったらアルバイトでも良いから働かせてもらおうかなというちょっと甘い考えはありました(笑)

なるほど。留学から帰国されたらまた会社員と作家活動の2本の柱で働いていく計画だったのでしょうか。

その当時は帰国後にどんな仕事をしようという明確なビジョンはあまり無かったのですが、派遣でも良いし社員でも良いし、雇用形態にはこだわらず何かしら納得のいくものづくりができればいいなと思っていました。実は最近季節限定ではありますが、クラフトチョコレートのブランドも立ち上げたんですよ。

そうなんですか!すごい行動力ですね。Ⅿさんは仕事が途切れないという印象があるのですが、今RD LINKからの仕事以外は基本的にはご自身のジュエリーやお菓子の仕事をされているのでしょうか。

いくつか個人で食品系の会社のお手伝いもしています。社員としてお声がけいただいた会社があるとお話しましたが、私も留学するつもりでしたので「社員は難しいですが、何かお手伝いできることがあったら是非お願いします」というお話をして、単発のお仕事をいただいたりしました。更に、私からも「こういう開発やリサーチのお仕事があればできます」ということをお話したら「あ、じゃあちょっと頼みたいことがあるんだけど・・・・」と言ってくださることもありました。そういう感じで繋がりがあった会社さんに声をかけていただいたり、自分から声をかけたりして仕事をいただいています。

ご自身でも営業活動をされているのですね。

そうですね。声をかけていただけるのはありがたいですし、お断りして終わってしまうのももったいないぐらい素敵な会社が多かったので、ご縁を繋げ続けていくためにも何か役に立っておきたいという思いがありました。

求められていること+αの価値を提供する

フリーランスになって2年程になられますが、実際に業務委託で働かれてみていかがですか。

会社ごとに性質や抱えている課題が全く違うので、常に刺激と学びがありますね。RD LINKさんからの最初の仕事だった外資系食品メーカー様の時は、私自身、外資系の企業と密にやり取りするということが初めてだったので、英語が飛び交う環境に慣れるまでは脳がすごくハードでした。やっぱり即戦力として求められているので大変ですが、クライアント先でお世話になる方々も品質保証や品質管理のプロフェッショナルで、学ばせていただくこともすごく多かったですね。

外部人材として働くことと会社員として働くのとでは何か違いはありますか。

クライアントの方々との接し方は、会社の中での先輩上司みたいなやり取りとは全く違います。業務委託ですので、社員よりも求められていることが明確でピンポイントになり、目的に向かってのやり取りをするため、接している時のお互いの真剣度は違うなという感じはしますね。こちらも「絶対に間違えられない」「妥協できない」という良い意味でのプレッシャーを受けて、逆にそれで自分のパフォーマンスが上がるというのはあります。

しがらみがない関係性なので、純粋にプロとプロのやりとりになるのですね。厳しい世界でもあると思いますが、Ⅿさんがフリーランスで働くからこそ自分の中で大事にしていることや心掛けていることはありますか。

求められていること+αの価値を提供したいと思っています。良い意味で期待を裏切る仕事ができるように心がけています。最初にお話ししたように、私は新卒の時に色々な部署で自分なりに様々なスキルを身に付けてきましたが、それを発揮できる場所をなかなか見出せなかったこともあり、今はせっかく身につけてきたものはどんどん出していきたいと思っています。そしてどうせ出すなら相手が求めているものプラスαで出したいんです。「こういうこともできますよ」と提案するとすごく喜ばれますし、役に立てていることを感じられるので、そういうスタンスはどんな働き方をする上でも意識してきました。

プラスαの価値提供がMさんが仕事を引き寄せるポイントなのでしょうね。そして意図せずかもしれませんが、それが最終的に冒頭でお話しされていた「給与を上げたい」という部分にも繋がっていますよね。目的はスキルを活かして役立ちたい、だけど、結果的に仕事が増えて収入も増えるという循環になっていますよね。

まさにそんな感じです。

仕事のスケジュールはどのような感じなのでしょうか。

基本的に日中に仕事をして夜はあまり働かないようにしていますが、平日や土日というのは特に関係なく仕事を入れたい時に入れるという感じでやっています。コミュニケーショントレーニングや情報収集も兼ねて、夜に知人のバーで働くこともあります。

自分カレンダーでスケジュールを管理できるのはフリーランスの利点でもありますよね。

そうですね。まだいけますのでお仕事ください(笑)

おっと!頑張ります(笑)その「まだいける」という感覚についてですが、業務のキャパシティーについてはMさんご自身の感覚で捉えられているのですか。

そうですね。忙しい時は本当に休みもないし寝る時間もほとんどないという状況もあります。そういう状況から週5程度で働ける生活になると何か物足りなくなってしまって、もっと仕事したいなと思ったりします。

一般的には複業で業務過多になることへの注意喚起がありますが、個人に置き換えると忙しい方が自分の最高のパフォーマンスを出せるというタイプの方はいますよね。Mさんはそちらのタイプなのかもしれませんね。

まさにそうです。ほんとにそうです。

弊社はエキスパートを守る責任もありますので、業務量のバランス調整も行っていますが、登録いただく方は仕事好きで「楽しくてやっちゃいます」という方も多いので、そういう方の方がフリーランスや複業には向いているのかなとは思います。

複業はスキルの相互作用でできることが増えていく

今後また会社員に戻るという選択肢はありますか。

今はあまり会社員に戻ることは考えていませんが、何とも言えません。ここで骨をうずめたいと思える会社があったら、それはそれで働きたいなと思うこともありますが、今は自分の商売の中でやりたいことが色々あり、それらとのバランスを保ちながらできる正社員の仕事というのは無いだろうなと思っています。

自分のやりたいことをベースに、複業やフリーランスで仕事を選びながら働くのが今は合っていらっしゃるのでしょうね。

はい、そうだと思います。仕事のバランスの面でもそうですし、収入の面でも複数の商売をやっていると、どれかダメでもどれかの売上が立ったりしますので、それで収入を担保できます。仕事をひとつに絞ってしまうのは自分にとってはリスキーだと思っています。

フリーランスで何か大変なことはありますか。

今の話にも通じますが経済的なことも含めて、先の予定が見えないことですね。私の場合はフリーになるぞ!と思ってなったわけではなく、コロナの影響で留学ができなくなったという事情があって急遽フリーランスで活動し始めたところもありますので、先行きの不安はやはりあります。ただ逆にコロナ禍で色々挑戦と言いますか、試行錯誤していく中でここまで乗り越えてきているので、この先も何とかなるかもしれないという気持ちもありますし、正直仕事については本当に気にしなければ何でもあるので、働けば食べられるという風に思っています。

すごいですね。ポジティブと言いますか、ある種の覚悟を感じます。

収入以外でも複業の良い点というのもあって、業種が違ってもスキルを活かせたり新しく得たりという相互作用があります。例えばジュエリーの制作販売で得たECサイト運営のノウハウがありますが、それは食品メーカーさんからECサイトを作りたいという相談を受けた際に役立ちました。業種が違っていても使えるスキルが色々あるんですよね。

これは活かせるというスキルはどうやって見つけているのでしょうか。

こんなスキルを身に付けようというよりは、やりたいことをやりながら身に付けたスキルを転用するという感じです。

例えば、ジュエリーで国内のEC販売だけでは買ってくれる人が少ないという壁に直面した時に、食品業界では海外向けの、いわゆる越境ECを取り入れているところが増えていたので、じゃあジュエリーでも越境ECをやってみようかなと試してみました。

実際に日本以外のアジア圏で日本より高い値段で売れるようになり、日本では売れないものが海外では売れるということが分かったのですが、それは越境ECのことを食品の仕事でざっくりとでも知らなければ取り入れられなかったと思います。また実際の運用ノウハウはジュエリーの仕事の中で学びましたので、次はそのノウハウを食品関係の仕事で「越境ECをやってみたい」というところに転用できるかなと思っています。そういう感じで色んなノウハウを使いたいと思っています。

Mさんはご自身でも積極的に仕事の幅を広げてていらっしゃいますが、ご自身で直接仕事を受けるのと弊社のようなエージェントが入るのとで何か違いはありますか。メリットデメリットを感じることがあれば教えてください。

違いはめちゃくちゃあります!自分でやってみて分かったことはすごくありまして、個人と会社で直接やり取りをすると、どうしても“言った、言わない”が出てきてしまうことがあります。そうなると結局自分が不利になってしまうことがすごく多いのですが、RD LINKさんが間にいらっしゃるとすごくフェアなやり取りができるので安心感があります。

なるほど。個人だと本当に自分で自分を守る必要がありますよね。

そうですね。今のところそれほど大きなトラブルはありませんが、私個人とクライアントの直接のやりとりですと、関係を維持していくためにどうしても気を遣わなければいけないことが多くなります。その点、クライアントのRD LINKさんへの信頼が既にある状態で仕事をいただくので、RD LINKを通している私という個人の信頼度も上げてもらえるといったメリットはあると思います。

体力の続く限りモノづくりをしていきたい

複業や起業をしようかなと迷っている方にメッセージをいただくとすれば何を伝えますか。

先ほどの話にも近いですが、自分が持っている専門的なスキルにプラスして、何かそれと掛け合わせることで自分の提供できるサービスが良くなるようなスキルをもうひとつ見つけることをオススメします。そうでないと多分、社内で人材がまかなえると思うんですよ。

例えば品管品証の仕事でも、私は自分の仕事でデザインもやっていますのでデザインツールが使えるのですが、そのスキルがすごく役に立ちます。今RD LINKさんよりいただいているフルーツの会社さんでは保健機能食品の開発に関わるリサーチや表示作成をさせていただいていますが、「表示を作ります」だけではなく「こういうレイアウトでこんな風にしたら伝わりやすいのでは?」といった、デザイン面も含めた提案ができます。そういう何かプラスαの掛け合わせで、更に価値が大きくなるようなスキルを持っていると良いと思います。フリーランスで働くと、やっぱり個性を出したくなります。少なくとも自分だけの掛け合わせのスキルがあると、他の方との差別化ができると思います。

最後にですが、Ⅿさんにとって将来的な理想の生活と仕事のスタイルはどんなものでしょうか。

そうですね、ここまではコロナの状況に流されながらきているので、大きなビジョンは今はあまり無いのですが、できることなら体力が続く限りは“作る”ことを止めずに続けたいと思っています。それはジュエリーのブランドもそうですし、クラフトチョコレートのブランドもこれから手に取る誰かにとって意味のあるものにしていきたいです。そういう自分らしいものづくりの形を追求していき、それを求めてくれる人がいるという状況を作っていきたいですね。あとは私自身にそういう気持ちがあるからこそ、それと同じ気持ちで業務委託で受けている仕事もしていきたいです。それによって新しい商品開発などで役に立てたら嬉しいです。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

                                 インタビュアー:髙本 記事:三浦

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