株式会社AutoPhagyGO 代表取締役社長/石堂美和子氏インタビュー

2022.09.27

企業インタビュー

株式会社AutoPhagyGO 代表取締役社長/石堂美和子氏インタビュー

今回企業インタビューにご協力いただいたのは、株式会社AutoPhagyGO代表取締役社長の石堂美和子氏。

株式会社AutoPhagyGOは、細胞の再生を司るオートファジー研究の成果を通じて、広く健康長寿に貢献することを目的とし、2019年に設立された大学発ベンチャー企業です。事業の拡大推進に当たり、今回は素材開発、薬効薬理、人材育成という3つのポジションでRD LINKのエキスパートを活用いただきました。

企業紹介

株式会社AutoPhagyGO
各企業との共同研究で得られたオートファジー研究の知見・ノウハウをベースに産業活用の基盤を作り、プラットホーム内での企業間のコラボレーションマッチングを促進し、得られた資金を再び大学との基礎・臨床研究に循環させる、新しいタイプの大学発ベンチャーを目指している。

プロジェクト内容

1『素材開発の強化』×『ニュートリション、ヘルスケア領域の素材開発エキスパート』
自社のスクリーニング技術を保有する優位性を最大限に生かし、新規に素材開発を新たな事業の柱としたい。原料ビジネス経験・知見がある専門人材に素材探索から販売までのサポートを求め、RD LINKに依頼。

2『実験の構築』×『薬効薬理試験のエキスパート』
オートファジー活性をベースとした医薬品及び機能性食品等の薬理に特化した研究経験者が不在。社員のキャリアとして細胞生物学系動物実験経験はあるが、薬理についてリードできる人材の支援を求め、RD LINKに依頼。

3『組織開発』×『組織強化・採用強化コンサルティングのエキスパート』
現状、代表の石堂氏がピープルマネジメントの理論を用いて、社員とコミュニケーションを
取っているが、組織がより大きくなる前にマネジメントやリーダーシップのメソッドを社内に落とし込みマネージャーの育成や組織強化につなげたいとの希望で、RD LINKに依頼。

RD LINKへの依頼の経緯

今回正社員採用ではなく、業務委託での外部人材活用を取り入れられた経緯を教えてください。

大きく2つあります。1つは、正社員では採用ができなかったケースです。今RD LINKから来ていただいている「薬理や動物実験のエキスパート」というのはまさにそうなのですが、1年程頑張って会社で募集をかけましたが採用がうまくいきませんでした。当社はベンチャー企業ということもあり、やはり応募する方も勇気がいるのかなと思いますし、なかなかフィットする人材に出会うことができませんでした。

もう1つは人材として必要でも正社員で採用するほどではないというケースです。「食品の素材開発のエキスパート」と「組織開発のエキスパート」の方がこちらにあたります。このポジションに関しては、FTE(full-time equivalent(フルタイム当量))をかけられるほど組織が大きくない時に正社員として雇用するよりも、必要なポイントについてご意見いただけるような専門性のある方と業務委託契約を結んだ方が良いなと思いました。

雇用するほどではないけれど、ちょっと人が欲しいという時はありますよね。

はい。ベンチャーだと特に、どの業種にアタックをかけていくかといったビジネスモデルを探索しています。そのフェーズで仮にその分野の専門人材を採用してしまうと、万が一色々調べた結果「攻める領域を変えた方がいいかもね」という結論に至った場合でも雇用の義務が発生しますので、リスクが高くなります。やはりそういう探索フェーズの時には、スポットでエキスパートの方からご助言いただける形が一番ありがたいですね。

エキスパートが入って変わったこと

これまでにRD LINKのエキスパートを3名活用いただいていますが、一緒に仕事をされての感想をお聞かせください。

何か新しいことチャレンジしたい時にはちょうど良いサービスだと思っています。最初の素材開発の方は、本当に我々が何も分からない中で大枠の道筋を作るところを一緒にやっていただき、とてもありがたかったです。

今入っていただいている薬理の方も、動物試験のケースを作るというベースのところをディスカッションしているのですが、スライドをサっと作っていただいたり、積極的にディスカッションを進めてくださったりと、非常に助かっています。やはり専門家の力を借りることでスピードは格段にアップしますね。

組織開発・人材育成のエキスパートの方に関しては研修などの実務面で手を借りられるのも良いのですが、中立的に外から見てそれぞれの社員のフィードバックをいただけることも非常にありがたいですね。人事関係には、やはり内部だけではなく外からの目があった方が良いと思います。人材育成は一番大事で力を入れなければいけないところですので、個人的にはもっと何かできることがないかずっと考えています。

エキスパートの方が複数名入ってくることに対して、社内の皆さんの反応はどんな感じだったのでしょうか。

当社はそれをせざるを得ないような人数と構造なので、そこは皆さんそんなに違和感がないと思います。技術顧問などで大学の先生方にも入っていただいていますし、事業開発もフルタイムの人は1名のみで、直接契約している業務委託の方が2人いらっしゃるような状況です。だから当社はもう正社員と業務委託頼みなんですよ(笑)でもベンチャーはそれでやるしかないんじゃないかなと今は思っています。

ありがとうございます。弊社のエキスパートだけが特例なのではなく、組織全体が様々な働き方のスペシャリストで成り立っているのですね。

そうですね(笑)

人材側ではベンチャー企業のお手伝いをしたいという方が非常に多いのですが、受け入れる側として、こんなマインドセットで来てほしいというものはありますか。

ベンチャーは本当に何でもありなので「ここは専門ではないので分かりません」ではなく、「専門ではないけれど知っている人がいるので繋げましょうか」など、何かを出してくれる人だと本当にありがたいです。最初は特にそうは思っていませんでしたが、実際に来ていただいて結果的にやっぱり何でもありという人が一番助かると感じています。

業務委託という特性上、業務範囲の線引きは必要ですが、ベンチャー支援には「もっと何かできるはず」というマインドの方が向いていると言えそうですね。

そうですね。「これはこういうことですか?」「じゃぁこんな感じでどうですか?」と、どんどん進めていける人が良いですね。

RD LINKの良さと外部人材活用の留意点について

直接契約の方もいらっしゃるとのことですが、RD LINKのようなエージェントが入ることのメリットやデメリットは何かありますか。

はい、率直に言って、エージェント経由では外れが圧倒的に少ないと思います。RD LINKさんの場合も、3人とも当社のリクエストに叶っていたというのは、事前に何人かのフィルターで見ていただき、スキル面だけでなく、ベンチャー向きの柔軟な考え方を持っている方かどうかとか、会社の雰囲気に合いそうかどうかといったフィルタリグがされている点なのだと思います。
どうしても人なので、フィットするかどうかは完全には分からず、そこはトライ&エラーを繰り返すしかないとは思っていますが、そのエラーがRD LINKさんの場合は少ないのでとても助かっています。

ありがとうございます。ちなみに御社は中小機構や自治体などの行政機関のマッチング紹介は活用されていますか。

いえ、知りませんでした。今は自社のHPで募集をしたり、求人サイトなどを利用しています。

行政機関も当たり外れがありRD LINKはマッチングの精度が高いと弊社としてはありがたいお言葉をいただいたことがあり、もし活用されていたらお伺いしたいなと思いました。

活用はしていませんが、その通りだと思います。行政の場合は技術的に何ができるかという点が主で、その方がどんなコミュニケーションを取られるか、どんなマインドなのかといった細かい部分までの把握やマッチングはなかなか難しいと思います。やはりそれは民間の仕事だと思います。

エキスパートとの仕事の仕方や連絡の仕方はどのようにされていますか。

RD LINKさんに仲介いただき、会議のスケジュールをセットしていただいて定期的にお話させてもらったり、ご助言もらったりしています。あと「こういうことを調べてもらえますか」とお願いして次までに調べてきてもらうとか、そういう形でやっていただいています。

メールやオンラインでのコンタクトがメインだと思いますが、その点でのやりづらさや不便は何かありますか?

私は大丈夫です。むしろオンラインの方が一日に複数の会議を入れられますので助かる部分もあります。もちろんたまには実際にお会いできるとありがたいですが、普段の業務はオンラインで問題ありませんでした。会えることよりも、メールでスムーズにコンタクトが取れることの方が大事かなと思います。

正社員とは異なる勤務スタイルということで、連絡のタイムラグを気にされる企業様もいらっしゃいますが、そういったストレスを感じることはありますか。

正直ちょっと今私が忙しすぎて、逆にご連絡いただくまで忘れているという感じなので・・・(笑)確かにそうですよね。気になるお気持ちも分かりますが、でもそれは業務委託という形態の問題ではなく、そのエキスパートの方の資質の話かなという気がします。できる方は何事も期日に通りに遂行されるのではないでしょうか。

そうなんですよね。仕事の進め方というのは正社員や業務委託という形の問題ではない部分の影響が大きいのですが、愛社精神という言葉があるように外部人材への不安を持つ企業はまだまだ多いですね。RD LINK活用でのデメリットは何かありますか。

我々には色々活用しがいがあってベネフィットが大きいですね・・・。敢えて言うなら、やはりどうしても単価は高くなりますよね。仕方ないですが。
あ、あとは時間ですね。エージェント利用に限らずですが、業務委託の方を活用する場面は大体がすごく忙しい時になるわけですが、スムーズに働いていただくために指示出しにもある程度時間がかかります。指示といっても手取り足取り教えるということとは全く違うものですが、お願いしたいことを的確に伝えることは簡単ではありません。本当に自分が忙しくなってくると、その対応がちゃんとできるかが問題です。

御社では石堂さんがエキスパートとやりとりをされていますが、今後別の社員にお願いしていく予定はありますか。

人材が育てば任せたいなと常々思っていますが、そこが目下の課題です。結局、当社のようなベンチャー企業が業務委託に頼るところというのは、外に頼んででもやらなければいけないぐらい大事なことで、ちょっとチャレンジングなことだったりするんですよね。そこをハンドリングできる人材となると役員レベルの思考を持った人になります。その役割を能動的にチームメンバーが買って出るぐらいになったらすごく良い会社になるなと思っていますが、自分の専門外で失敗するリスクも高い中、チームメンバーが躊躇する気持ちもわかります。その辺がチームで動かせるようになると良いですね。

外部人材を活用するうえで気を付けていることなどはありますか。

とにかくエキスパートの方への指示出しが命なので、何を頼みたいかということを明確にしておくことが大事です。そのためには仮説が必要で、これをやったらこうなる気がするからその検証のためにここを教えて欲しいとか、受け入れ側として何をチームに足すと良くなるのかということをちゃんと考えておくことが必要だと思います。

R&D人材の複業について

研究や開発など理系の専門職の方が複業することに対してどのように思われますか。

私自身、製薬メーカーの在籍中に1年ほど兼業させてもらったんですよ。

そうだったんですね!

そうなんです。十数人いるチームのチームリーダーだったのですが、週1で別の仕事、週4でチームリーダーをやるという新たなチャレンジをしました(笑)

すごい!

ですので、複業反対とか絶対言えません(笑)

所属企業では研究のチームリーダーをされながら、兼業でAutoPhagyGO社の立ち上げをされたということでしょうか。

そうです。メディカルのCNSという中枢神経領域のリーダーをやりながら、今の会社の立ち上げに携わりました。業務的には全く関係性がなかったので、兼業届を出して承認いただきました。実は今も元の製薬企業で業務委託として働いています。

えー!そうなんですね!

はい(笑)収入の担保という側面もありますが、製薬業界ではやはりネットワークがあるのは大事だなと思っています。将来的には良い薬品候補があったらその製薬企業に売り込みたいと考えています。そういう目的もあり、繋がっておくということはとても大事で、製薬業界のネットワークはずっと大切に持っておこうと思っています。

ゆるやかなネットワークの重要性は本当にあちこちで耳にしますし、私自身も感じているところです。

製薬業界は人材の流動が激しく、外資系は本当にプロジェクト単位で人が動きます。例えば、癌の薬の販売や開発をしたいという方々は、開発が頓挫して自分の会社がそれをやらないとなったらそれをやっている別の会社に移るんですね。一度退職しても、またやりたいことができそうであれば戻るケースもあります。そういう意味で、結構人は動きますが決してマイナスな意味ではなく、志ある人たちがどんどん動いていてお互いにやりがいを持つことができます。

なので、私は「〇〇会社」というよりも「外資系製薬産業」に勤めている感覚を持っていました。将来的にこれをやりたくなったら、あるいはここで上手くいったら次はこっちに行こうとか、もし人材が必要だったら引っ張ることもできますし、仲間が困っていたら誘うこともできます。通常は人材の流動性が出てくるとそういう状態になるはずなのですが、日本は1社の中で全て完結しようとする傾向が強いので、上手くいかなかった例なども外からはなかなか見えません。

外資系では正直仕事ができない人の噂も回ります。一見ドライで怖いという良くない世界に聞こえがちですが、実際はそういう世界の方が正常で健全な気がするんです。流動性が結果として正常な社会を生むという世界ですね。業務委託も一度関係性ができて「あ、この人すごい」と思った方と、もっとフルタイムで関われるためのファーストステップという意味でもすごく良いなと思っています。

もう本当にRD LINKが目指すところと言いますか・・・・製薬業界は海外と日本の差というのはあるとは思いますが、産業自体が強くなるなら人材流動も強固なネットワークも良いということですよね。

おっしゃる通りです。本当にそうなので、ぜひRDサポートさんには頑張っていただきたいですね。

一方で、そこまで人材が流動するとどうしても情報管理の面が気になるのですが、その点は製薬業界としてはどういう雰囲気なのでしょうか。

機密情報問題は、本当にその通りで、そのため非常に厳しい管理をされています。例えば会社を辞めるとなった瞬間に全部、特に上層の人ほどその日にPCをそのまま置いて帰ってもらうという感じです。日ごろからPCも全て追跡されていますので、何か問題があればすぐに表出すると思います。

なるほど。

当然頭の中の記憶は消すことができませんので、情報と言えばそのぐらいですね。だからといって、安易に情報を出すことのリスクを皆知っているので誰もやらないという感じです。

頭の中にある情報を活かしながらも関係者に不利益を被る行動はアウトということを理解されている方が、柔軟に動きながら新しいものを生み出していくというのは理想形ですね。

業界として人が流動できるルールが大分整っているので、そんなに大きなトラブルにならないのだと思います。企業はリスク管理として情報は流出する前提で動き、仮に情報を流出させた場合のリスクを個人にしっかり理解させることが大事だと思います。でも結局人と人との繋がりなので、外部のステークホルダーとの強い信頼関係に基づく人的ネットワークなどは、人材の転職と共に流出するんですよ。もうそこはどうしたって無理なんです。でも無理だと分かっているので、逆にどの企業もそういう強いネットワークがある人材を採用するという風潮です。誰もが知るスーパーMRさんとかは引っ張りだこですよ。

本当に個人が評価されて、仕事をどんどん掴んでいく世界ですね。

そうですね。とてもシンプルだと思います。

日本ではまだまだ人材流動の文化もシステムも追いついていませんが、RD LINKを活用することで少しでも安心して外部の力を借りながら、新しいものを生み出してもらえる企業が増えるといいなと思います。

そうですね。ベンチャー企業として言うなら、やはり製薬企業は給与体系がとても良いので、働き手が正直ベンチャーに就職するメリットがあまり感じられないと思います。ベンチャー企業側も相当の給与を保証しないと良い人材は来ないことを理解していますので、やはりそういう方にエキスパートとしてフルタイムではないけど関与してもらうというのは、製薬系・創薬系のプロジェクトでは今後は一般的な形になるんじゃないかなと思っています。

先ほども触れましたが、ベンチャー支援をしたいという人材はたくさんいます。そういう人材が新進気鋭のベンチャーに関われる機会が増えると、産業として強くなりそうです。

私のように、元々研究をやっていて行く末はまたトランスレーショナルリサーチをしたいとか、ベンチャーに興味があるという人は結構いるのですが、家族がいて給与が下げられないという人も多くいます。そういう人が複業でやってみて「ああやっぱり面白い!」と思ってもらう形のワンステップとしても、お互いハッピーで良いのではないかなと思いますね。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

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