株式会社メリータイムフーズ 代表取締役 飯森正裕氏インタビュー

2022.02.24

企業インタビュー

株式会社メリータイムフーズ 代表取締役 飯森正裕氏インタビュー

今回企業インタビューにご協力いただいたのは、株式会社メリータイムフーズ代表取締役の飯森正裕氏。

2002年に設立した株式会社メリータイムフーズは、アジアから水産物などの素材を輸入し、国内へ販売されています。今や日本の食生活の必需品となっている輸入食材の供給を守る一方で、食品に関する「安心・安全」も大事な要素として取り組まれています。「食を通じて夢を叶える」を合言葉に、世界に点在する産地と日本の消費者を結ぶ架け橋となるべく事業推進されています。

そんなメリータイムフーズ社に今回RD LINKを活用いただきました。今回は新規分野への参入に関して壁打ち相手としてエキスパートを活用いただきました。壁打ちでの議論からその後どのように進められているのか、お伺いしてきました。

企業紹介

株式会社メリータイムフーズ
平成14年設立。メーカー機能を兼ね備えた食品商社として、インドネシア・ベトナム・ミャンマーなどから、エビ・マグロ・イカ・貝などの素材を輸入し、国内へ販売。

プロジェクト内容

『既存販路を活かした新しいビジネスプランの検討』×『生鮮食品のエキスパート』
事業拡大のために、これまでに培ってきた販路を活かし、既存の水産物や冷凍食品類以外にプラントベース商品を始めとした新たなジャンルの商品の事業展開を検討しているが、プラントベース業界や商品特性の知見が自社には不足している。他にも既存商材に機能性の付加価値を付けた商品展開プランなども検討。これら新規ビジネスの事業化に向けた戦略構築のために、まずは現状のビジネスプランについて専門家の意見を求めてRD LINKに依頼。

エキスパート支援内容

生鮮食品企業にて商品開発や機能性表示食品の開発・届出から広報マーケティングまで幅広い経験を持ち、現在は個人事業として生鮮食品を中心とした商品開発やPRのコンサルティング業を営むエキスパートをアサイン。まずはファーストステージとして3か月間の契約で、事業開発面でのビジネスプランやミッションについての壁打ちミーティングを4回実施。事業運営に対しての意見共有、ビジネスプランの課題抽出に関する意見交換、今後の事業計画立案に関する意見交換を行う。現在はメリータイムフーズ社内で今後の事業推進について検討中。具体的に進めることになればセカンドステージへ移行予定。

RD LINKへの依頼の経緯

今回RD LINKを活用いただいた経緯をお聞かせください。

最初は人材派遣でお世話になっているRDサポートさんにプラントベースドフード事業に詳しい人材がいないかとご相談しました。業務内容的に派遣社員では対応が難しいということで、プロ人材の業務委託活用というRD LINKのサービスをご紹介いただきました。その時に初めてRD LINKの存在を知り、エキスパートの紹介をお願いすることにしました。

具体的にどのような案件のご相談だったのでしょうか

今の日本の食品市場というのは非常に進歩し、複雑になってきています。フードテックなどの新しい色々な要素が入ってきて、弊社もそのような新しい分野への参入を考えています。弊社のような小さな会社単体で全てを自社リソースで対応するのは不可能に近いですし、もし独自に参入したとしても知見が無いので多分漏れが多いんじゃないかなと思います。今回はまず新規事業の導入部分で専門家のアドバイスをいただきたいと考えました。

なぜ正社員ではなく派遣や業務委託の人材だったのでしょうか。

弊社自体も何しろ未知のものをやるわけですので、そのために正社員を採用して、もしその新規事業がうまくいかなかったからじゃぁ配置転換ねと他の業務に従事してもらうというのはその方にとっても不都合でしょうし、弊社にとっても不都合だと思います。 そういったことを考えると外部の人たちの力をお借りしたほうが物事が早いし、経費的にも必要な時にだけ必要な分をということで、足りない知見と費用面の両方をカバーするのが外部人材の活用だと思いました。

専門性が高いからこそプロジェクト型での活用がお互いにとって良いということですね

新しい事業というのは多分10個のうちひとつ成功するかしないかだと思うんですよね。そのために都度社員を雇うとなったら、うちに社員が10人増えちゃったということになりますからね(笑)

特殊な技能というのは外部から入れた方が早いと思います。専門人材がプロジェクトごとに入ってきて一つの段階が終わったら次の段階に行くというのは非常に合理的ですよね。

もしその人がうまくできなかった場合にも、プロジェクトごとだからということでそこで潔く終わりにした方が、エキスパートの方も失敗ではなく“成功しなかった事例”として頭に入れて、次の企業で次のことをできると思います。企業側としても失敗も成功のためのひとつの糧だと考えた場合にはそういうやり方もあると思います。

エキスパートが入って変わったこと

メリータイムフーズ社では過去に外部人材を活用した例はありますか。

業務委託で契約している方というのは何名かいます。例えば我々の知らないマーケットを知っている方ということでマーケティングの業務委託というのもあるし、商品開発についても知見や経験ある方と業務委託を結んでいます。実は業務委託というのは我々としては馴染みのある手法なのですが、RD LINKさんのことは初めて知ったというところですかね。

今回エキスパートを活用されてみていかがでしたか

豊富なご経験と知見をお持ちですし、やはり違う分野から入ってこられた方なのである意味新鮮な響きを持ちましたね。Nさんの解説や説明があるからこそ、我々も「あ、なるほどな」と目が開いてきます。Nさんとの会話で出てくる色々な単語や会社名や分野のことを、我々自身でも開拓しながら考えていくということをやっていますね。

Nさんが入ったことで視野が広がるきっかけになったという感じですかね

そうですね。新しいことをやる時に全体像やその一部分でも理解していないと、その分野にもう一歩踏み込むことはできないですから、導入部としては非常に意義がありました。ただこちら側もしっかり何を得たいのかを真剣に聞き出す姿勢は必要だと思います。専門家の方から学ぼう、得ようという目で見ないと簡単に視野は広がらないですよ。

一方でNさんに提案いただいたプラントベースドフードが唯一のブレイクスルーの可能性なのかというと、そこはまだ見極めが必要だと思っています。導入としては良くても、事業としては成果物のある所を目指す必要があります。現在はNさんに提案いただいたプランを含め社内で検討している段階ですね。

正社員とは異なる外部人材ということで求めるスキルやマインドはありますか。

このスタイルでしかできません、この知識だけしか教えませんというのではなくて、応用で色々なアイデアを頂けるといいなと思います。

今回は事業計画の壁打ち相手としてのエキスパート活用だったと思います。壁打ちのサービスは比較的多くありますが、選ぶ際に何か気を付けるべきポイントはありますか。

やっぱりエキスパートの方や業務委託先の会社のレベルがある程度以上高くないと、壁打ちもあまり役に立ちません。少し調べれば誰もが分かるような話であれば意味がありませんよね。本当に経験した人じゃないとわからないようなことを教えていただきたいので、Nさんのようなその道の専門家にアドバイスをいただくのが良いと思っています。

RD LINKさんのようにエージェントが弊社の要望をまとめたうえで人材をマッチングしてくれたり、弊社としても事前にしっかりエキスパートと面談してどんなご経験をお持ちの方なのか知れるというのは安心ですよね。

ただ先ほども申し上げたように、そういった形で知識を得ることと事業を組み立てることはまた違う話になってきますね。

確かに知識を得ると事業を組み立てるというのは、全然違う目的であり方法も異なりますよね。

そうですね。だから日本国内の食品市場だけ見ていると、いつまでたっても芽が出ないのかもしれませんけどね。プラントベースドフード事業に参入したとしても、販売先となる小売や外食産業などの業界内で果たしてどのくらいの方がプラントベースドフードの将来について真剣に考えているかというと疑問もありますし、タピオカじゃないですが雰囲気やブームで踊っているような気がしているところも感じ、そこに弊社ならではの付加価値を付けるのはなかなか難しい感じはしています。

RD LINKの良さと外部人材活用の留意点について

業務委託での人材活用は例があるとのことでしたが、エージェントを使われたのは今回初めてですか。

そうですね。それは初めてです。

RD LINKを実際に活用してみていかがでしたか

弊社の場合これまでは、〇〇さんの友達が知っているよ、そのことなら△△さんが詳しいよといった人脈に頼ってきています。かといって我々のネットワークが広いかというとそういうわけでもありません。

RD LINKさんに限らずですが、プロ人材のエージェントには当然経験のある人たちが登録しているはずなので、自分たちの知っている人たちでというよりも、エージェントを通しての方がもっと幅広く良い人材にお会いできるのかなと思います。

RD LINKさんの場合は他と違い専門性の高い人材がいらっしゃるので良いと思いますよ。まぁ人材サービスの場合はフィーも高くなってくるので、そこはバランスだなと思いますけどね(笑)

今回外部人材の活用にあたり、立ち上がりに苦戦したり現場が混乱したりということはありませんでしたか。

そこは正直我々のウィークポイントだと思います。

弊社の場合、みんな今の売り上げ利益を稼ぐのに精一杯です。大手企業など組織に余裕のある会社であれば「あそこは本当の意味でのR&Dだからね」という見方ができるかもしれませんが、余裕のない環境ではどうしても人は「自分たちは必死なのに、なんであの人は座っているだけで費用が掛かるコストセンターになっているのか」という近視眼的な見方をしてしまいます。

私が社長の立場で説明すれば良いのかもしれませんが、それをただ私が言ってしまうと「社長がそう言っているんだから仕方ない」と納得しないまま我慢させてしまうことにもなりかねません。そのあたりは私としても一番気を遣わなくければいけないところです。何のためにそれをしているのか、それがどうなるのかということを、合理的にも感情的にも理解してもらわないといけないのは大変なところですね。

なるほど。ギリギリのリソースで既存事業と新規事業の両輪を回すとなると色々と負荷がかかりますよね。

RD LINKさんを活用する数十万というコストでも大手の何百億円のうちの数十万と弊社の売り上げに占める数十万はやはり違いますし、そのあたりは会社の規模やレベルによって限界はあると思います。そのジレンマが無ければ私たちももう少し気楽にチャレンジできると思うんですが、それがやはり正直中小企業の一番のネックになるんじゃないかなと思いますね。

今様々な規模の会社の方に使っていただいているので、RDLINKが何を提供できるかもですし、エキスパートの方も自分が属していた会社とは違うということを理解いただくことは必要ですね。

R&D人材の複業について思うこと

経営者の視点から見て複業という働き方についてはどのように思われますか。

ダイバーシティということでみんな目が開いてきたし、特に働く若い方々がひとつの会社にずっといるよりは技術を持って週の3日はこの会社、2日はこっちの会社といった形で色々な所で働くということが起きつつあるのは事実ですよね。そうするとやはり我々の時代とは違う基準で働き方を考えていかれるのだと思います。

特に若い方々は環境問題や資源問題や人権問題についてしっかり教育を受けてきていると思うので、そういった人たちが多様化してくると100人中3人や4人は自由に動き回って働く人たちが出てくるのかなという気はします。これは環境ということだと思いますし。

例えば私たちの年代の女性はみんな2~3年働いて結婚というのが本当に当たり前だったけど今はそうではないですよね。社会が変わっていけばおのずと中にいる個々も変わってくるでしょうし、それがまた社会全体を変えていくでしょうし、それは否めない事実だと思うんですよね。

そういった面では良い方向というか、面白い方向に向かっていくんだろうなという気はしますよね。

R&Dという分野での複業はどう思われますか。

研究や開発部門にいる技術者の方はいわゆる職人なので、ベースの知識を活かして複業はやりやすいかもしれませんね。

私自身は理系文系という概念にはあまりこだわらないですが、確かに理系の方の方が学ばなければできないということが多い気がします。基礎の知識があってそれを社会で何十倍の積み立てをして、総合的な力をつけているというか。いわゆる何かが崩れても他で代用できるというか。 職人って案外幅広いですよ。これが無くてもこっちを転用してなんとかやれるよと言えるのがやっぱり技術者であり職人だと思います。例えば我々はマニュアルに書いてある部品が無いとギブアップだけど、その部品を作っちゃうというのが職人。それはベースとなる知識があってこそできることです。

部品から作れるのが技術者というのは非常にわかりやすいですね。理系の方は専門性が高いがゆえ自分では応用が利かないと思っている方が多いです。

いや、皆さんたぶんできると思いますけどね(笑)理系の方は勉強が好きですよね。専門性の中で応用ということなので十分できると思います。

今後食品業界でも複業という働き方は広がっていくと思いますか。

広がっていくとは思いますが、まだ働く人々の自由度というか流動性が日本の場合あまり無いのかなと思っていて、よく言われる欧米型の働き方が一般的じゃないですよね。多分まだ各企業にいっぱい埋もれちゃっているのかなと思います。 特に食品業界の場合は昔から保守的なところがあり、特に日本はその傾向が強いです。だから次々職を変えるという人がそんなに多くないような気もするし、どちらかと言えば、人脈や経験というものがその会社に自分が生涯いられる武器となるような属人性の強い面もあります。IT業界のようにGoogleからFacebookに移るというような、ああいう大胆な動きはちょっと起きないかなという気はしますけどね。

弊社も20年食品業界を専門にお取引させていただいていますが、やはり保守的業界という印象はありますね。御社のように外部人材を積極的に活用される企業も増えて、ずいぶん変わってきましたし今後も変わっていくとは思いますが。

そうですね。やはり研究や開発は根幹だと思いますし、外の力を必要としている企業ニーズはあると思います。

弊社の場合も技術がないので、そういう足りない部分は技術を持った会社と協業してやるとか、技術者を外から入れてやっていかないと机上の空論になってしまいます。モノを売るというのはある程度マーケットに入っていれば何とかなると思いますが、そこに“当社ならでは”という光り輝くものを作れるかどうかが重要だと思うんですよね。それはやはり技術がある人がいないとできないですよね。

ちなみに御社は複業制度を導入されていますか。

今のところは認めていませんが今後は可能性があると思います。日本だけで見るとあまり感じませんが海外を見ると、このままではどんどん遅れてしまうなという例がたくさんあるんですよね。そうならないためには、外からの人材も入れて早くキャッチアップしていかないといけません。

世界の境界がなくなってきているので、食の分野だから日本が一番です!なんて言っていると他の分野同様に、いつの間にか他のアジアの国々に追い抜かれて逆に買収されるなんてことが起きてしまいます。

弊社の場合はあまり終身雇用にこだわらず、やりたい人たちが来てその時に盛り上がってもいいのかなと思ってはいます。

メリータイムフーズ社の今後の展望

最後にですが、今回Nさんとの議論でプラントベースドフードを含め昆虫食などいくつかビジネスプランが出たと思いますが、今どのように検討を進められているのか教えてください。

そうですね。色々アドバイスをいただいた中で、弊社として一番ポジショニングが取りやすく、馴染みやすく、また利益が見込めるものというのは何なのかなというのは一回引いてから考えないといけないと思っています。間違えた判断をして上手くいかなかった場合の時間や費用は全損になってしまうので、やはり経営者としては慎重になりますね。

また、壁打ちでアイデアをいただいたとしても、RDサポートさんやエキスパートの方にその事業に出資いただくわけではないですから、弊社がオールリスクを取る以上はより一層シビアに俯瞰して本当にこれで良いのだろうかというところをしっかり見極める必要はあると思います。

昆虫食というのは今すぐにというのはないですね。どちらかと言うと今検討しているのは国内養殖です。今回のコロナも含めて、サプライチェーン自体が寸断するリスクというのは非常に高いですし、シーレーン(Sea Lane)が閉ざされたらどこから輸入すればよいのかとなりますよね。それを考えると、国内で生産するというも我々の大事な役目であり、少なくとも検討しなきゃいけない事業だと思っています。

日本の食卓にいかに安心安全な食を届け続けるかですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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