株式会社光英科学研究所 代表取締役 小野寺洋子氏インタビュー

2022.06.07

企業インタビュー

株式会社光英科学研究所 代表取締役 小野寺洋子氏インタビュー

今回企業インタビューにご協力いただいたのは、株式会社光英科学研究所 代表取締役の小野寺洋子氏。

光英科学研究所は、乳酸菌生産物質の製造・販を主軸とし、「乳酸菌生産物質で、世界人類の健康増進に貢献する」という企業理念を基に事業を展開されています。16種35株の乳酸菌・ビフィズス菌を元菌とした独自の培養技術による同社の「乳酸菌生産物質」は、健康食品原料として幅広く利用されています。

これまでも様々な形で外部のプロ人材を活用してこられた経験のある同社。今回は研究アドバイザーの方の後任としてRD LINKのエキスパートがサポートさせていただくことになりました。

企業紹介

株式会社光英科学研究所
明治・大正・昭和にかけて乳酸菌及び乳酸菌代謝物質の研究を続けた正垣角太郎氏・一義氏の意思を引き継ぎ、昭和44年に「乳酸菌生産物質」発明者である正垣一義氏の特命により「乳酸菌生産物質」の研究専門機関として創業。平成6年に埼玉県和光市で法人化、乳酸菌生産物質の大量生産を開始。健康食品原料として「乳酸菌生産物質」の製造販売を行う一方、乳酸菌代謝物質の研究開発にも取り組んでいる。

プロジェクト内容

『発信情報の監修・アドバイス』×『学術のエキスパート』
自社の発信内容を監修いただいていた研究アドバイザーの方の引退に伴い、学術面における相談相手が不在となってしまうことから、後任として同様に学術的視点からアドバイスしていただける方を求めてRD LINKに依頼。

エキスパート支援内容

大学教授として専門知識が豊富なエキスパートをアサイン。特定のプロジェクトではなく会社の事業全体にまつわる相談相手として参画。光英科学研究所社の経営陣と月に1回の定例ミーティングを実施。同社が気になるテーマを都度ミーティングの議題として取り上げ、ディスカッションするなど学術的な視点からアドバイスを行っている。また情報コンテンツへの知識提供に留まらず、必要に応じて総評の作成なども対応。

RD LINKへの依頼の経緯

今回RD LINKを活用いただいた経緯をお聞かせください。

これまでお世話になっていた研究アドバイザーの方が高齢のため引退され、その後任を探してRD LINKさんにご相談しました。

当社は乳酸菌生産物質を開発する企業として、お客様に有益な情報を発信していきたいと考えており、自社サイトや各種イベントでの情報発信に力を入れています。これまでも研究アドバイザーの方に内容を監修いただいたり、どのような話をしたら良いか相談したりしながら進めてきたのですが、その相談相手が不在となるため今後どうしようかと考えていました。

自分たちで研究開発を進めながら蓄積してきたエビデンス情報についても、やはり改めて専門家にチェックしていただき、確認しながら正しい情報を発信することが重要だと思っています。RD LINKに登録されているエキスパートの方にご協力がいただければと考え、ご相談させていただきました。

お声がけいただきありがとうございます。

もともとRDサポートさんとは法人化した当初からお付き合いがあり、派遣や正社員採用を考えたいという時には折に触れてご相談していました。RD LINKの事業も立ち上げ当初にご案内いただいたのですが、その時は事業内容としては素晴らしいと思ったものの、当社としてお願いしたいことが整理できておらず、しばらくそのままの状態でした。今回はこのような状況になり、RD LINKのサービスを思い出し「これだ!」ということで、是非お力を貸してほしいと相談しました。

今回研究アドバイザーの方の後任ということですが、光英科学研究所社では過去に外部人材活用の経験はありますか。

もう10年以上前ですが “新現役パートナー制度”を活用したことがあります。経済産業省・中小企業庁で立ち上がった事業だったと記憶していますが、企業等を退職又は退職を控えている方々で、社会貢献活動の一環として、地域・中小企業支援などを行いたいとされる方々と中小企業をマッチングするという仕組みがありました。当社はその頃、理研インキュベーションプラザに入居しており、施設のマネージャーの方が新現役のコーディネーターも兼任しており制度を知りました。

コーディネーターの方からは、当社の規模を考慮すると最初から顧問契約や中途採用をするのではなく、必要とする技術や知りたいことに対してピンポイントで対応してもらえる新現役の制度の方が合うのでは?と提案いただき、お願いしました。

当時はその時に考えていた化粧品事業に関する技術的なサポートをしてくださる方や、経理的な原価計算ができる方にスポットで来ていただきましたね。

そのような制度があったとは、恥ずかしながら知りませんでした。

“新現役パートナー制度”は、企業で長年の経験を積んだ方々や色々なスキルや技術をお持ちの方々が、定年退職された後に完全引退されるのはもったいない、ということで仕組みができたのはないかと思います。

エキスパートが入って変わったこと

RD LINKのエキスパートを活用されてみていかがですか。

エキスパートの方とは月に1回定期的にお話させていただき、「こうしたらいかがですか?」「この点はどうですか?」という形でどんどんご提案いただいています。私たちも、乳酸菌生産物質をもっと多くの方に知っていただくために、いったい何をしたら良いのだろう、社会で求められていくニーズは何だろう、と思いながらも、自分たちの視点だけでは見えていなかったことが多かったと感じています。エキスパートの方との対話を通して、新しい視点や気付きを沢山いただいています。

毎回のお話の中で、新たな発見や道筋を示唆していただき、すごく良い刺激をいただいています。その分、自分たちももっと成長していかなければならないという課題を感じていますが、そういった課題に気づくことができるようになったことが、大きな進歩だと思っています。

実際にはエキスパートの方からのご提案に対して、すぐに実行できる事もあれば、時間をかけて取り組んでいきたい事もありますが、エキスパートの方にはその点も率直にお伝えして、ご理解をいただきながら進めています。何よりも、定期的にエキスパートの方と対話することができるというのは、当社の将来にとっても大事なことです。

正社員ではなく外部人材ということで、こういう風に関わってもらえると嬉しいなど、求めるスタンスは何かありますか。

お互いを尊重し、どちらか一方の考えを無理やり進めるのではなく、進む道をご一緒に作っていく関係が良いと思います

エキスパートの方々の経験をもとに「このようにしたほうが良いのでは」と、改善や改良のアドバイスをいただけるのは勿論ありがたい事ですが、一方で企業側の事情として、アドバイスをいただいたものの、まだその点についての改善や改良が難しい、という時もあります。

そのような時も「たしかに、将来的に大事な取り組みだが、今は時期尚早かもしれないね」「では少し視点を変えて、こちらの方向でいきましょうか」といったように、状況を受け止めていただきつつ、時には別の新たな方向性も示していただけると、とても助かります。

歩み寄りの姿勢ですね。

あとは対話力と言いますか、コミュニケーション力ですね。これまでに外部人材として、あるいは50代を越えて中途採用で入っていただいた方などは、みなさんコミュニケーション能力に非常に長けていました。

そういう方々は、業務の邪魔にならない程度に、スタッフ全員に分け隔てなく話しかけていらっしゃいました。といっても、さりげなく「今日は暑いねえ」とか「どう、元気にやってる?」など、ひとこと声をかける感じなのですが、そういう風にしていると、スタッフから「話しやすい人」と信頼も集まり、時には部署をこえて仕事についてのノウハウを相談する場ができたり、そこから学びに繋がっている様子がうかがえました。

もちろん、無理におしゃべりをする必要はなく、物静かな方でもまったく問題ないと思います。ただ正社員でなくエキスパートとして企業へ参画されるとなると、社内スタッフからはどうしても“外の人”としての視線で見られることが多いので、そういう中で、できるだけフレンドリーな雰囲気を出していただけると、お互いに安心してお仕事ができると思います。

挨拶だけでも印象は違いますよね。

そうですね。とはいえ、明るくて温和で優しければ良いということでもありません。エキスパートご自身の経験から、「これは、しっかり言っておかなければならない」という時には、厳しいご意見をいただきたいと思います。状況に応じて、柔軟にコミュニケーションを図っていただければ有難いです。

求められる人材にはスキルだけではなく人柄も重要ということですね。特にどうしても経験を積むほど人はこれまでの価値観に固執してしまう傾向がありますので、柔軟な対応ができる方だと良好な関係が築けるということなのだと思います。

その通りですね。例えば、エキスパートの方とのお話の中で新しい企画が進んで、いざ社内の現場でやっていこうかという時に、その通りに進むこともありますが、時には状況に合わせた工夫が必要になることがあります。
現場スタッフの意見として「エキスパートの方のおっしゃることも分かるけど、うちの会社、そんなに電気代使えないしさ」とか「ご提案のようにしたいけど、うちだけでなく取引先の事情もあるから」とか、細かいことなんですけどね(笑)でも、そのような声も受容しながら、それでもチャレンジを止めることなく、お互いに協力して新しい道を切り開いていけると良いのではないでしょうか。

色々な企業様のお話を聞くと実際にはそれがリアルで、そういった事情を汲めるかというのは外部人材として非常に大事なポイントだと思います。

おっしゃる通りですね、あとは企業との相性もあるかと思います。私たち企業サイドも、お迎えするエキスパートの方々が、生き生きと充実感のある活動をしていただけるような環境づくりを、心がけていきたいと思います。

RD LINKの良さと外部人材活用の留意点について

これまでの直接契約と異なり、RD LINKが介在することのメリットやデメリットがあるとすればどんなことですか。

今回は、エキスパートとしてRD LINKさんから大変著名な大学教授の先生をご紹介いただいたのですが、私どもから直接ご連絡を差し上げても、なかなかこのようなご縁が繋がるのは難しいと思います。そういう点で、RD LINKさんを介することで、素晴らしい方をご紹介いただけて良かったと思います。

あと、安心感ですね。RDLINKの担当コンサルタントの方には、エキスパートの方との打ち合わせ以外でも、折々にご相談させていただき、とてもありがたいと感じています。
気軽に担当コンサルタントの方に相談できたり、エキスパートの方にも繋いでいただけるという安心感を持って経営を進めていけるというのは、とても大きなことだと思います。デメリットは特に感じません。

エキスパートと顧問との違いを感じることは何かありますか。

人によりますので一概には言えませんが、「顧問」には色々な点でご相談に乗っていただくことはできても、先方から積極的なご提案をいただいたり、私どもの見識を大きく広げていただいたり、という事までしていただけるかというと、なかなか難しいかもしれません。

エキスパートの方に関しては、先ほども申し上げたように、相談したことに対してどんどん積極的な提案をいただき、新しい気付きや視野を広げる機会をいただいていると感じます。

今後活用を考えている企業様へのアドバイスはありますか?

私たち企業側としては、課題を解決してくれるサービスということに100%の思いを込めてしまうというか、その方に頼みさえすれば何でも叶う、と最初は思いがちなんですよね。「エキスパートの人が来てくれたから、すべて大丈夫」と(笑)

ですが、これまでいろいろな方にご支援に来ていただいた経験から学びましたが、エキスパートの方に全てを委ねるのはおかしいな、と(笑)。課題解決の主役である私たち自身が、自律的に動いていかなければなりません。そのためのアドバイスやサポートをしていただくのが、エキスパートの方々だと思います。

そして「お互いに一緒に取り組んでいきたい」という思いの強さが、一番大切なのかなと思います。先ほどの相性の話もありますが、まずはエキスパートをご紹介いただいた際に、直接その方とお話しする時間を設けていただき、この方とご一緒にやっていきたい、というエキスパートの方に出会えると良いのではないでしょうか。

ありがとうございます。現在、各企業様の中で “複業リテラシー”という言葉があるのですが、外部の人材をどういう風に有効活用するのか、受け入れる企業様がきちんと考えて迎えていただくことが大切になると考えています。弊社のような第三者が入ることで、そのあたりを整理させていただき一番良いチームが作れるといいなと思っています。

R&D人材の複業について思うこと

小野寺さんは研究開発分野での複業についてどのようにお考えですか。

各企業の研究開発は知財の関係もあり、すべてを社外へオープンにすることは難しいと思いますが、かといって社内の限られた態勢だけで本当に新しいものを生み出せるかというと、そこにはやはり外部環境との接点も必要だと思います。

私自身は、なるべく新しい発見をするために色々な方とお話しをしたり、共同の取り組みで、様々なことを広げていく方がお互いにとって良いのではないかと思います。秘密保持契約などでルール決めをして、互いのルールを守って共同作業を進めていくと良いのかなと思いますね。

当社は小さい会社ですので、何か新たなチャレンジをしようとするとき、どうしても人手が足りません。そのような時に、エキスパートの方々からご協力をいただけると、とても心強いです。そしてお世話になるばかりでなく、何かその方にお返しできるものがあれば、積極的に取り組んでいきたいとも思いますし、ご一緒に何かを作っていくことを視野に入れていくことも必要だと思っています。

今後R&D分野の複業は広がっていくと思いますか。

私は広がっていくと思います。広がってほしいという気持ちの方が強いかしれないですね。もちろん複業促進には色々な課題があると思うので、簡単ではないと思いますが、広げていくことに意味があるのではないでしょうか。

複業される方は、今後さらに増えていくと思います。会社や仕事以外の部分で、もっと自分はやりたいことがあるんだ、という方はたくさんいると思いますし、その芽は摘まないほうが良いなと思います。会社の規定もあると思いますが、できれば外の仕事にも力を注げる状況にした方が、元の仕事にも生きてくるのではないかと思いますね。

-複業をすると退職に繋がるのではないかと心配する声も聴きますが、複業が今の会社の仕事にも活かせたり、モチベーションや満足度が上がるという調査報告も出ていますので、もっと柔軟に企業と人が繋がれるようになるといいなと思います。

私がこれまでにお会いした複業している方々は、みなさん本当にイキイキしていて、夢を追いかけて楽しさややりがいを感じていらっしゃるようでした。そのことが、ご本人にも会社にも良い影響を与えているような感じがします。

ちなみに御社には複業制度はありますか。

現在のところ複業制度はないのですが、かといって禁止もしていません。スタッフから相談があれば、本業に差し支えない範囲であれば、という事で個別に対応してきました。今後は、ますます複業にスポットライトがあたると思いますし、当社としても将来的には、複業制度について前向きに考えたいですね。

大手企業の複業解禁ニュースも増えていますよね。

そうですね。これは私の想像ですが、定年を迎える人が増える中で、定年して完全に引退できるかというと、退職後にすぐ年金受給ができるとは限らないので、生活のことを考えると働き続けたいという人は多いのではないかと思います。また生活のことだけでなく、体が健康であれば、定年後も引き続き社会貢献したいと思う方も、少なくないのではないかと。かといって、企業が定年後の人材を全て受け入れることができるかというと、難しいケースもあるかと思います。

定年だけに限りませんが、企業側としても社員が複業で予め自社以外の仕事のステージを作ったり、人との繋がりを育んだりして、定年後の活動について準備することができれば、個々の人生プランも立てやすくなると思います。そういう意味でも複業を推進したほうが良いという判断になる会社も多いのかなと思います。

弊社のエキスパートに登録される方の中にも「あと半年で定年するので、その後も働きたいです」という方が増えています。御社の複業は相談ベースというのも良いですね。容認か禁止か、ゼロか100ではなく、話を聞いてそれに応じて考えていくというところから企業も人も試せると動きやすそうです。

正直なところ、当社もまだ複業の推奨までは至っていないですし、相談ベースでの対応はしていますが、「実際に複業しながら、自社の業務も頑張ってやっています」というモデルケースができていないので、これからもっと社員にとって良い状態にしていけたらいいなと思っています

本日は貴重なお話をありがとうございました。

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