岩谷産業株式会社 マーケティング部部長 阿部周作氏インタビュー

2024.08.13

企業インタビュー

岩谷産業株式会社 マーケティング部部長 阿部周作氏インタビュー

今回企業インタビューにご協力いただいたのは、岩谷産業株式会社マーケティング部部長の阿部氏。

岩谷産業株式会社は、LPガス事業と産業ガス事業を基幹事業とし、今では人々のくらしや産業の発展に欠かせない重要な社会インフラの役割を担っています。その一方で常に自社シナジーを活かした新商品開発に取り組まれています。今回はそのひとつである健康食品事業でサプリメントのリブランディングに伴う商品開発と、機能性表示取得に向けた資料作成をそれぞれRD LINKのエキスパート2名がご支援させていただきました。

企業紹介

岩谷産業株式会社 1930年創業、1945年設立。創業以来、企業理念「世の中に必要な人間となれ、世の中に必要なものこそ栄える」のもと、LPガス事業と産業ガス事業を基幹事業として展開し、くらしや産業にエネルギー、産業ガス、マテリアルなど幅広い商品やサービスを届けている。1941年から、究極のクリーンエネルギーとして期待される水素の普及に尽力、現在も「住みよい地球がイワタニの願いです」を企業スローガンとし、環境への配慮を優先する企業として、持続可能な社会、循環型社会、脱炭素社会の実現を目指している。

プロジェクト内容

1『既存商品のリブランディングを伴う商品開発』×『健康食品のエキスパート』
自社の強みであるすっぽん原料を利用したサプリメントをリブランディングし商品力を上げたい。健康食品は基幹事業とは全く異なる領域ということもあり、なるべく短い時間軸で確度の高い商品開発を行うためRD LINKに支援を依頼。

2『ヘルスクレーム検討における資料作成』×『機能性表示食品のエキスパート』 すっぽん事業はプロジェクト1の商品のリブランディングに留まらず、今後も事業拡大を目指している。今後、作用機序を解明するために、臨床試験も検討しており、そのための設計図や資料作成の支援を求めてRD LINKに依頼。

母体の事業ではないため正社員採用よりもプロ人材の業務委託がフィット

今回正社員採用ではなく、業務委託での外部人材活用を取り入れられた経緯を教えてください

今回の開発対象はすっぽんサプリメントでしたが、私たちの部署はおもにBtoC向けの商品開発を行っており、やはりカセットこんろに関連する商品開発のウエイトが高いです。また会社としてもジョブローテーションがありますので、健康食品事業に経験者を正社員としてお迎えするというのはハードルが高いと感じていました。

逆に小回りが利く業務委託の活用がフィットしているということでしょうか

その通りです。フィットしましたね。健康食品事業自体は創業者が始めた事業であり、LPガスをお使いいただく地域のお客様に40年以上ご愛用いただいていますので、事業としての思い入れもあります。現段階ですと専門知識のあるプロ人材に協力いただくのが一番やりやすい形です。

なるほど。そのような中でRDLINKにご依頼をいただいたきっかけを教えてください

私が新商品開発担当に着任し、まず取り組んだのが健康食品の開発でした。しかし、私自身の健康食品の営業経験が短いこともあり、自分一人でトレンドに合った商品設計を考えていくことは難しいと思っていました。 どうしたら開発部門として経営から求められているスピードに応えながら、確度の高い商品を作れるだろうかを考えている中、展示会でRD LINKさんにお話しを伺い健康食品領域に明るい専門的なコンサルティングができる方と一緒に仕事ができたら希望が叶うのではないかと可能性を感じました。まさに出会いという言葉がぴったりでしたね。

専門知識やトレンドに詳しいエキスパートは意思決定の拠り所だった

実際にコンサルティング会社のコンサルタントと、RD LINKのエキスパートの違いは何かありましたか

一言でいいますとコンサルタントは抽象、エキスパートは具体という印象です。エキスパートは専門分野に特化していらっしゃるので、こちらの悩みや課題に対して考えなければならないことや、ほしい答えをお持ちになっています。課題に対する助言というより具体的な打ち手の検討や推進の伴走など、現場に近い位置での支援というイメージです。

RD LINKさんからご紹介いただいたMさんは、サプリメントについてとても知識が深く経験も豊富でした。また、強いのはトレンドを知っている点ですね。今の健康食品業界のトレンドというものをしっかり分かっていらっしゃって、その観点からサポートいただけました。

弊社は健康食品の会社ではなくエネルギー企業ですので、社内だとどうしてもその観点が少ないんですよ。その中の一事業として長きに渡り展開してきている事業ではありますが、やっぱり世の中のトレンドに関しては社内では十分に捉えきれていませんでした。そのため、Mさんに今のトレンドや、トレンドの基本的な押さえ方を指導いただけたので、非常にスピード感がありました。

Fさんも同じでした。Fさんには、すっぽん原料を研究し、さらに深堀りたいという内容についてサポートいただきました。我々が得たい成果について、どういう観点で研究を進めたら良いかというガイドラインを作っていただきました。なかなか一般的なコンサルタントの方に相談できない内容なんですよね。

なるほど

開発にあたって抑えなければいけない要素や、世の中のトレンド、商品設計、想定できるターゲットや販路などの答えを持っているのは、やはりエキスパートだと思いました。ただMさんも答えをすぐに教えてくれるわけではないんですけどね(笑)

RD LINKはノウハウをクライアントの中に残してクライアント自身の成長に繋げていただくことを前提の支援をしていますので、企業様に考えていただくことは多いかもしれません

初期の頃Mさんとの懇親会の席で冗談交じりに「なかなか答え教えてくれないですね」と言ったことがあるのですが、「教えるのは簡単ですが、最終的に皆さんが考えることで結論を出すことが大事ですので」と言われました(笑)

おかげさまで、メンバー全員がMさんに言われた内容について、必死で情報を探したり調べたりしましたので、知識レベルも向上し組織として成長できました。

それはとても嬉しいご報告です!Mさん、Fさんとは具体的にはどのように仕事を進められたのでしょうか

Mさんは最初にマイルストーンを作成してくださいました。契約期間の関係もありましたので、最初の目標設定として、いつ頃までに何をやらなければいけない、何を考えなければいけないのかを、項目ごとに全て出していただき、それを日程とともに確実にクリアしていきましょうとプロジェクト内で合意形成しました。

ミーティングの進め方としては、Mさんから「〇〇について次のミーティングまでに調べて状況教えてください」と与えられた宿題を、弊社メンバーで調べてMさんに戻す、それをMさんが「ここはOKです、では次△△について調べてください」と。その繰り返しでしたね。

ミーティングの場以外でもMさんとの連絡は日々取られていたのでしょうか

前半はミーティングに対する準備の日々でしたので、その間に連絡を取ることはほぼありませんでした。後半になり、より商品が具体化されてきて商品名を決めるなどのフェーズに入ってきたら、頻繁に連絡をとっていろんな微調整をさせていただきました。最終局面はすごく密にやり取りをしましたね。

マイルストーンに沿ってプロジェクトを進めていく中で、密な連絡や確認が必要なフェーズになり自然にそのような動きになったということでしょうか

そうです。予め決められた時間に打ち合わせるという形ではなく、私たちの知識もついてきて段々商品開発が進んできて必然的に取るようになりました。これはすごく良い形なんじゃないかなと思っていますね。

ミーティングはオンラインで行っていたのでしょうか

はい。基本オンラインで2回対面がありましたかね。

メールやオンラインがベースのコミュニケーションにおいて、何か困ることや不都合に感じることはありましたか

ありませんでしたね。すごくスムーズでした。画面越しでは伝わらないこともあるかと思い1回懇親会を行いましたが、仕事をするうえではオンラインコミュニケーションで特に不都合はありませんでした。

MさんやFさんと働かれて良かった点や、貴社の組織で何か変わられたことなどあれば是非教えてください

社内の誰よりもその分野に詳しいエキスパートと話をして決めたことに関しては、社内で合意を得やすかったです。例えば商品名は、チームでアイデアを100案以上出し、Mさんにも色々なアイデアを出していただいて、最終的に「鼈美力(すっぽんみりょく)」になったわけです。

100案のアイデアを出してプロの方にも相談しながらこういう方向性で決めましたと言えることで、私たちのチーム内での意思決定でもそうですけど、周りの納得度がすごく高くなる。

新しいチャレンジにおいて誰かが決めなくてはいけない。その時の意思決定の拠り所になったのがエキスパートの存在でしたね。

すごく分かる気がします。RD LINKも新規事業で右も左も分からない中で進めるにあたりプロ人材の力を何度も借りていますが、それにより自信をもって社内へプレゼンできることも多いので、それと似ていると思いました はい、そうです。自信を持って言えますよね

はい、そうです。自信を持って言えますよね。

当事者は企業。チーム編成から合意形成まで社内の体制作りが重要

エキスパートを受け入れるにあたり気を付けた点はありますか

チーム編成はすごく気を付けました。とにかく意思決定スピードを上げたかったので、チーム編成はできる限り決裁権のある人間を少数で集めました。大勢集めてしまうと、たくさんの意見がでるのは良いのですが、逆になかなか決められない。絶対に受け手の体制が大事だと思っていました。

あとはバランスよく役割分担ができる人選をしました。開発部門から私、営業部門の責任者、グループ会社の小売り部門の担当者、デザイン会社の担当者という最小限の人数で編成しました。なので、エキスパートと合意できればその後の意思決定は早かったですね。

なるほど!他の企業にも参考になりそうな、大きなポイントですね。外部人材の活用というのは、受け入れる側の体制やリテラシーも大事だと言われています

そうだと思います。例えば若い社員のみでチームを作って何かやれ、と言っても、確度、スピード感、意思決定の面でなかなか難しいと思います。やはりチーム内に最終判断ができる人が誰かいないと、決められないし決まらないかもしれませんね。

そうですね。エキスパートに委ねるのではなく、あくまでも当事者はクライアントであるということですよね

はい。それも非常に気を付けた点です。

明確なゴールのイメージをもって臨む必要があります。弊社でも事前に営業部門とのミーティングの中で損益、数量などKPIを定めて設計図的なものを作り「すっぽん事業」のゴールのイメージを共有しました。

ゴールを明確にできたことでⅯさんからもレベル感が分かりやすいと言っていただきまして、おそらくスケジュールも立てやすかったのではないかと思います。

クライアントが主体的に「ここまで行きたい」という目標を持つことは重要だと思いました。

阿部さんご自身がMさんとのコミュニケーションの取り方で気を付けられていたことや意識されていたことはありますか

一番に大切にしていたのはミーティングの前準備です。1時間という限られた時間の中で意思決定して次に進むことをものすごく意識していました。Mさんは非常に合理的な方でしたので、弊社も意見や見解や答えを持ち、事前に資料を共有しミーティングで確認し、エキスパートの知見から色々教えていただく。「答えをもって臨む」それが我々の準備なんですよね。それをエキスパートのレベルに合わせていくことで、高めることができたら良いと感じていました。

これから世に出していく商品に関してはすごく機密事項も多いと思います。秘密保持の観点で外部の活用をためらう企業様もまだ多いのですが、御社では売上計画など具体的に情報開示されたということで、情報の取り扱いについてはどのように考えられていたのですか

今回の案件でいうと、正直そんなに秘密にすることはありませんでした。売上などの目標に関しても自社で発表しているような内容を取り込んでいたので、あまりそこは気にならなかったですね。でも成果を出すためにはある程度の情報開示や依頼側の要望をできる限り具体的に共有することは必要だとは考えています。

RD LINKを活用して良かった点や、ここはもう少し改善されると良いなと感じた点などがあればぜひ教えてください

特に不満なところはありません。本当に(笑)

人材のご紹介の確度も高かったと思います。選択肢もご提示いただいて、どの方とやるのが一番良いのか、ちゃんと各エキスパートの方の特徴を理解し提案いただきました。似たような方ではなく、Aさんはここに強い、Bさんはここに強い、という形で選択肢を示していただけたのがありがたかったです。

その中からどなたとタッグを組むか私たちの責任で選びますので、必然的に真剣になります。その結果、この人とうまくいくためにはどうするのが良いのか、というマインドにより一層つながったのかなと思います。

阿部さんの部署ではコンサル会社も利用されていたと先ほどお伺いしましたが、いわゆる個人事業主といいますか、業務委託の個人の方との契約もありますか

あります。食品事業は個人の方と契約していますが、長いお付き合いの方ですね。新しく個人の方と契約するというのは、なかなか判断が難しいですよね。

やはりその点ではRD LINKさんからご紹介いただくことが一つのお墨付きだと私は受け止めています。実績もお持ちですし、すごく安心感がありますよ。

ありがとうございます。弊社が面談をした方を責任をもってご紹介させていただくステップはサービスとして大事にしている部分なので嬉しいです

エキスパートの参加は、健康食品の知識以上の「経験」をチームにくれた

外部人材だからこそ、求めるスタンスやコミュニケーションの取り方などはありますか

あります。ご経験や知識が豊富であることは皆さん間違いないですが、やはり企業側として求めているレベル感があったり、企業の体質がありますので、そこに寄り添っていただきたいと思っています。企業側の目指すゴールに対して知識を活用して出してサポートいただけると嬉しいですね。

なるほど

あとMさんと仕事をして何より良かったことは、健康食品の知識の吸収ではなく、商品開発の基礎を学べてチームのレベルが上がったということです。

きちんと基礎的な分析を行い、今回の商品のコンセプトは徹底的に強みを活かすことになりました。それは今私たちの全ての商品開発の基本になっています。

またプレゼンの仕方も教えていただきました。今はすべてその段取りに沿ってプレゼンをするようにしていますね。だから健康食品以外で良い気付きをいただきました。。

ありがとうございます。フレームワークの活用やプレゼンは実際難しいですよね。RD LINKのサービスは、知識を落として終わりということではなく、エキスパートが入ることで、クライアント企業が社内でノウハウを蓄積いただき社員の方のスキルベースが引き上がることも一つの目的としていますので、非常に嬉しいお言葉です

そうですね。それでみんなで一気に取り組み、それをMさんがまとめて絞ってくれ、チーム内で意見を交わしながらどんどん話が進み、解像度もあがりました。基本が大事だということ、健康食品の開発以上のことをチームに伝えていただき、ご契約期間でお支払いした費用以上の気付きを得たと思っています。これは大変価値のある経験をさせていただきましたね。

Fさんのご支援は必要な資料を作成いただき納品という短期集中での内容でしたが、具体的な動きを教えていただけますか

Fさんには本当冬休みの宿題のようなご依頼になってしまったんですけど、弊社としてはとにかく時間がありませんでした。社内で今回リブランディングを行うすっぽん原料研究に向けた開発予算の枠を確保するためにガイドラインが必要でした。

12月の初旬に必要なステップや時間軸、開発の費用感など弊社が知りたい情報や成果を提示して、年明けにFさんから資料のベースをいただきました。まず何をして次に何をしてという手順書のような形でまとめていただき、非常にわかりやすいものでした。それもとにミーティングさせていただき最終的な微調整して納品いただきました。

今回は、スポット的なお願いにもかかわらず、Fさん、弊社の目的に寄り添っていただき、成果はしっかり達成できましたし、本当に社内稟議までの1ヶ月の納期で対応いただけたので非常に助かりましたね。

それもひとつのエキスパートの活用方法です。中長期支援もあればスポット的な支援もあり、いずれも企業さまの事業スピードを加速させる手段で必要なことだと思いますし、エキスパートにとっても様々な仕事のラインナップがあったほうが良いと思います

最後に、困っていたり悩みを抱えているものの、なかなか外部のプロ人材の活用に踏み切れない企業様に向けたメッセージをお願いします

そうですね。まず、今回のご依頼の背景には私の中の危機感がありまして私の背中を押したのは自分自身でした。これまでに健康食品のエキスパートの支援を受けて商品を作るというのは私もやったことないですし、会社としてもそのような形で外部人材活用したことがないという中で、このままでは進まないという危機感ととにかくやらなければという決意でRD LINKさんを利用してエキスパートの支援を受けることにしました。

活用を迷ったらまずは小さい範囲からでも活用してみたら良いと思います。迷うということはいろいろ決めかねているということだと思うんですよね。そこで専門家に頼れるというのはとても強い武器になるので、会社として頼って良いラインを決めて、そこまでは頼れば良いと思います。

自分たちの力で何とか頑張りたいという企業様もいますよね

その気持ちは非常にわかります。それが理想ですよね。ただいくら社内のメンバーでアイデアを持ち寄ったり情報をキャッチしてきても、それはどうしても同じ組織カルチャー、同じコミュニティの中にいるメンバーなので、出てくるアイデアの範囲は狭くなります。会議と同じで声の大きい人、先輩、思い付きアイデアが豊富な人、大体こういった人の意見で運営されていきますので、答えはいつも同じになる確率が高くなります。そういう意味でも核となる商品開発には外部のエキスパートに入っていただくというのは非常に有意義だと思います。

-本日はお忙しい中ありがとうございました

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