京都グレインシステム株式会社代 表取締役専務 田宮尚典氏インタビュー
今回企業インタビューにご協力いただいたのは、京都グレインシステム株式会社代表取締役専務の田宮尚典氏。
京都グレインシステム株式会社は、創業以来、経営理念「健康と感動を食生活へ」のもと、事業活動に取り組まれています。事業の拡大にあたり、今回は新規事業推進として健康訴求素材の開発アドバイザリーと海外への事業展開に向けた活動の支援、また海外顧客への営業ツールとしてのレシピ開発の計3つのポジションを、それぞれRD LINKのエキスパート3名がご支援させていただきました。
企業紹介
京都グレインシステム株式会社
1990年創業。農産物の製造加工及び受託加工業として、飲料原料事業を軸とし、食品原料事業、健康食品原料及び生薬原料の刻み加工事業、海外輸出入事業を展開している。近年では、飲料事業から食品、健康食品・医薬品へと事業を拡大し、これまで飲料事業向けに培ってきた技術を磨き、並びに新たな技術を取り込み、開発に努めている。
プロジェクト内容
1『健康訴求素材の開発』×『機能性表示食品のエキスパート』
新規事業として健康食品原料事業の強化と拡大に取り組んでいる。原料委託製造の依頼先と加工した原料販売先を面で開拓したいが、健康食品の開発や営業の経験が浅く、アドバイスと業務支援を求めてRD LINKに依頼。
2『原料の海外展開』×『素材開発、海外事業のエキスパート』
自社原料の海外展開を促進していきたいが、どの様な顧客がマッチしているのか、どこにニーズがあるのかといった情報収集に苦戦している。また、海外向けの新規素材開発に関しても支援を求めてRD LINKに依頼。
3『レシピ開発』×『食品商品開発のエキスパート』
2の「海外展開への支援プロジェクト」の中で、海外取引先に向けて展示会などで自社製品(原料)の用途を具体的に提案営業できるようレシピ開発に取り組むことになり、追加でRD LINKに依頼。
新規事業だからこそ技術系の専門人材の支援を求めた
今回正社員採用ではなく、業務委託での外部人材活用を取り入れられた経緯を教えてください
RD LINKさんに依頼した2021年はコロナ禍の真っただ中で、海外への渡航も制限されて営業活動がままならない状況でした。それをどう乗り越えていくかを模索しており、新規事業として主力の飲料原料事業ではない健康食品原料の事業拡大を考えていましたので、もともと正社員でというよりは外部からタイムリーに実績や実力がある方と一緒にコラボレーションしていくという形を考えていました。
新規事業ということで最初から社外で専門家を探していらっしゃったということなんですね
はい。新規事業はゼロからイチを生み出す活動になるため、コストをどうかけていくべきか正解がまだなく、売上につながる事業になるのかも不透明など不確定要素が多いため、どちらかというと私たち経営陣が率先して推進するという意味合いが強くなります。
専門家の派遣会社を3社ほど利用して海外事業の専門家を集めるなど、様々な職種での外部人材の方との接触を計っていましたが、RD LINKさんは食品技術系の理系プロ人材をメインに斡旋されているということで、興味を持ちお話を伺いました。そうしたら本当に健康訴求素材の知見に明るい方や食品原料の海外事業に強い方などがいらっしゃってお願いしたという次第です。
様々な人材サービスを利用されていたのですね
はい、色々同時に活用していました。新規事業なので社内の人材リソースだけでは足りないと言いますか、やはりタイムリーに専門知識がある方のサポートがあった方がスピードも違いますし、心強くもありますよね(笑)
社内メンバーの方には既存事業もあるので、どこまで新規事業に巻き込むかは難しいところですよね
そう、忙しいですよね、やはり。すぐに売り上げに直結するものではない新規事業に、どこまでリソースを割くのかということもありますから、まずは私の方で見定めながら取り組んでいます。
様々な職種のプロ人材を探していたということですが、どのようなルートで接触を計られていたのでしょうか
色々やっていましたよ。商工会議所さん、JETROさん、中小企業庁や金融機関からの斡旋など、そういう人材マッチングはありとあらゆるものに参加していました。
どういう分野をサポートしてもらうのが良いかも明確ではなかったので、まずは気になる分野で試しに取り組んでみて、上手くいきそうであればそこに予算をかけて広げていけば良いかなという感じで進めていました。
具体的にはどのような進め方をされていたのでしょうか
例えば大枠として「販促エリアを拡大する」と置き、北海道や九州などそのエリアを拠点とした営業を得意としている方にサポートに入っていただき、弊社の営業がカバーできないところをフォローいただきました。一緒に開拓に取り組めるような方にサポートいただき、探り探りやっていましたね。
御社は何人ぐらいの外部プロ人材と業務委託契約をしているのですか
常時5人ぐらいですね。
常時5人は結構多い印象です
我々OEMメーカーは仕掛けを打っていかないとなかなかビジネスに繋がりませんので、いかに1歩でも半歩でも先を提案できるかが重要なんです。クライアント先の事業課題が何なのか、どんな課題ニーズを持っているのか、需要を聞き出すことに成功すれば我々の仕事の成功にも繋がると考えていますので、その需要喚起という意味でもプロ人材とのコラボレーションができる案件をいろいろ探していました。
需要を喚起したり、キャッチしたり、またその需要にスピードを持って対応していくために、外部の力も借りながら進めているのですね
その通りで、ゼロからイチを生み出そうと思ったら、そうやって先に先にやっていかないとね。年間1000件の開発案件をやろうと思ったら、必然的にそういう動きになりますよね。先んじて考えて、情報を集めて、色々な人とお付き合いをして、そのなかでクライアントに課題解決をどのように提案するかということをひとつひとつコツコツと、でもスピード感をもってやっていかないと難しいと思います。いろいろなプロ人材からBtoBでのマッチング案件を提案いただきなが取り組んでいかないと目指すところに到達しないですよ。
社員は新しい知識や技術だけでなく、ダイナミックな仕事の仕方もエキスパートから学べた
実際にRD LINKのエキスパートを活用されてみていかがでしたか
自社社員だけではどうしても新しい挑戦に二の足を踏んでチャレンジできないという部分があったんです。そこにエキスパートが入って「一緒にやろう」「一緒にこの事業領域に行こう」と背中を押してもらえたのはありがたかったですね。
また、私個人としても会社としても、外部から人が入っているということを必然的に意識しますので緊張感が走ります。それはそれでプラスの刺激で良い方向になります。しっかり進めなければ、と気が引き締まりますよね(笑)
また若い世代は特に、どうしても通常業務の中では日々目先の案件や売り上げに頭が行きがちですので、今回専門分野の知識が豊富で外の世界を知っているエキスパートの方々と一緒に働くことで新しい知識や技術を得られたり、ダイナミックなストーリーを考えることや10年後20年後の未来を見据えた仕事の仕方などを体感してもらう機会にもなり、刺激を受けたのではないかと思います。知識だけでなく、マインド面で受ける影響も大きかったと思います。
エキスパートと働くことで社内の人材育成の面でも良い影響が出ているというのは、弊社としても嬉しいです
またエキスパートの方にはひとつひとつ明確なプロジェクトとして参加していただいているので、仕事の意味合いが伝わりやすいですよね。健康訴求素材の開発を支援いただいたNさん、原料の海外展開を推進いただいたSさん、営業用にレシピを開発いただいたFさんも皆さんそれぞれの得意領域でサポートいただいていて、仕事がしやすかったです。
意味合いが伝わりやすいというのは業務委託契約の特徴ですね。エキスパートの方もプロジェクトの支援として自身が入っているので、期待役割の範囲が明確で、お互い共通のゴールに向かって最短距離で進めますね
そうです、事業領域の狭いところをぐっとスポットで入っていただけますからね。弊社の社員教育では、全体で補完しながら全体最適化を目指していきます。専門家を育成したいわけではなく、オールラウンダーで製造できる人材を教育しているんです。
そのため新規プロジェクトが立ち上がったときは社内公募で現場から参加メンバーを募ります。現状を打開したい、新しい分野に挑戦して会社のなかで存在として付加価値を上げていきたいというモチベーションが高い人材は、新規事業に就くことが多く、そういった社員がプロジェクトとしてピンポイントで深入りするということは、本人たちにとっても勉強にもなりますしスキルアップにもなりましたね。
専門人材に柔軟に対応いただける利点と、費用対効果をどう考えるかという難しさ
RD LINKの良さやデメリットについてお聞かせください
RD LINKさんは技術的な専門性の高い方をフレキシブルに活用できるのが魅力だと思います。
エキスパートの専門性が高いので、事業の機会がどんなところありそうか、加工機械はどれを使ったら良さそうか、どのような技術を使ったら良さそうかなど、技術屋同士の会話もできます。もちろん弊社だけがメリットを享受するのではなく、情報が交換できればお互いに成長できるのではないかとも思いました。
金融機関や公的機関からの人材派遣は無料もしくは非常に安価で利用できるのですが、金融機関であれば口座開設が必要だったり、公的機関であれば「〇〇の事業の一部としてXXの展示会に行ってください」「パンフレットの予算はこの中で使ってください」など条件やルールが厳しく設けられており、活用の自由度は低いです。
一方でRD LINKさんのエキスパートシェアリングは民間の事業サービスですので、我々がやりたいように進められてありがたいですよね。例えば、Nさんは最初は機能性の学術支援をメインとして入っていただきましたが、そこから派生して営業同行のご支援もいただきました。もちろんRD LINKさんやエキスパートご本人と話し合いながらではありますが、必要な形に合わせながらフレキシブルに対応いただけるのはメリットだと思います。
条件が細かく設定されていると、ハンドリングも大変そうですね。そこを考えながら条件の中で事業推進をしなければいけないということになりますよね
まさにその通りです。予算と時間が決まっているのでなかなか使いにくい面はあります。
逆にRD LINKのデメリットやネックと感じられたことはありますか
そうですね、やはり費用感になるのではないでしょうか。基本的にはどうしても種まきの部分での活用になりますので、半年や1年という短い期間の中でエキスパート活用の成果を出すというのは難しいと考えています。開発は気の長い仕事で、我々OEMのメーカーであれば3~4年はかかりますからね。多くの会社は恐らくそこまで待たず、もっと早く成果を持ってきてほしいという話が出てもおかしくないと思います。
エキスパート活用で投資した額に対してどれだけリターンがあるのかと考えた時に、短期的な見え方はマイナスになるかなと思います。もちろんエキスパートに支援いただくことで必ず前には進むのですが、新規事業のゴールはもっと先ですからね。
エキスパートの方に求めるマインドやスタンスなどはありますか。また田宮さんご自身が、エキスパートと働く際に気を付けていることがあればお伺いしたいです
屈託のない意見を交わせるのが理想ではありますね。もちろん私がこうしたいと言った時のエキスパートの方の反応は様々です。「そうは言ってもまず一歩目はこの領域で、二歩目はこの領域でいきましょう」と道を標してくれる方もいますし、「クライアントのあなたがそこまで言うなら、まずやってみましょうか」とおっしゃる方もいて、それは個人の性格もありますよね。
そのあたりは性格のマッチ度の問題ですし、私は自分自身が判断してサポートを依頼していますので、基本的にコミュニケーションの取り方でどうこうというのはありません。ただ受け身ではなく積極的に意見を発していただきたいとは思っています。そのうえで議論を交わし方向性を一緒に決めていくことができる方は一緒に働きやすいですね。
コミュニケーションの方法として、今回オンラインのみでしたが不都合はありませんでしたか
不都合というほどではありませんが、対面できるともっと良かったかなと思う部分は少なからずありますね。特に弊社はモノづくりの会社ですので、基本的には工場を案内して、どういったことができるのか、どういった商品を作るのか等を見ていただきながら次のステップに進むという形を取っていましたので、オンラインのみになると少しコミュニケーションとしては弱かったかなとは思います。
世界のビジネススピードについていくためには、小さな範囲からでも足りない力は外から借りたほうがよい
研究や開発分野で外部の人材と働く場合に守秘義務への不安を感じる企業様も多いのですが、貴社では情報の扱いはどのように考えられているのでしょうか
弊社が培った技術が漏洩する可能性についてはやはり不安はゼロではありませんが、そこを担保する意味でも、安心できる仲介事業者を通しての人材活用をしています。JETROさんや農水省、経産省からの派遣も国の管轄で国の保証が付きますし、金融機関も同様です。RD LINKさんも守秘義務契約の書面を取り交わしていただけるので安心しています。
なるほど。そこは弊社も慎重に進めていますので、少しでも安心してサービスを利用いただけると嬉しいです。もう一つよくあるケースとして、漠然とした課題感はあるものの何を支援してもらえば良いかがまとまらないという企業様がいます。貴社の場合はどのように課題を絞り込んで支援をお願いしているのかお聞きしたいです
弊社の場合は、新規事業を推進する際は私が事業構想をしてからプロジェクトを発足し、そのプロジェクトに社員や専門家の方を入れていきます。そのためまず最初に、新規事業の事業領域や予算配分をどうするか経営層の判断が必要です。投下予算が10万円と1,000万円では、プロジェクトとしてできることも変わってきます。私は経営側にもいますので、最初の判断から関わっています。
大手企業であれば一部門での判断もあると思いますが、中小企業の場合は特に、会社としてその新規事業にどれだけ真剣に種を蒔いていくのか、年間どれくらいの種を蒔くのか、どれだけ水やりをするのか、といったことを経営者が明確に打ち出さないといけません。新規事業にはリスクもありますので、社員に考えろと投げるのは良くないと思っています
その経営判断の中で外部人材の活用も可能な予算が付けられた場合に、プロジェクトとしては事業構想に基づきまずはお客様のニーズをどのように拾っていくかが重要になりますので、お客様の声を既に持っている又は声を拾いに行ける人材を探しに行きます。そのためその領域の知識や知見があるかを基準として専門家を探します。
具体的な支援業務の内容はそのあとにすり合わせていきますので、まずは必要とする専門知識を大枠でイメージできていれば大きくズレることは無いと思います。
研究や開発で新規事業を推進したいけれど社内の知見だけでは難しいと分かっていても、秘密保持や費用対効果の懸念からなかなかRD LINKの理系エキスパートの活用に一歩踏み出せなという企業様に何かお伝えできることはありますか
今は小さく産んで大きく育てようという開発が多いですよね。
こういうコンサルテーションのビジネスは、日本よりもトップダウンが強い中国やアメリカの方がはるかに活発です。日本企業のように議論して社内承認を取ってということはほとんどなく、スピードが非常に速いです。私が海外企業と接している感覚値では、日本の10倍のスピード感で動いていると感じます。
日本の市場や仕事の仕方がスタンダードだと思っている方やなんだかんだ大丈夫だと思っている方もまだ多いと思いますが、まずは小さい範囲でも良いので足りない力は外から借りてでもどんどん動いた方が良いと思います。
ありがとうございます。必要な知見を必要な時に得られ、ビジネススピードに対応できることはエキスパート活用の利点だと考えていますので、ぜひ小さな範囲からでも活用いただけると嬉しいです
結局会社としては新規事業をやらなければと思っていても、現場レベルでは「さて何をしようか」という話しは多いんです。そこで誰に聞くのかということになります。
弊社も取り組んでいますがSDGsなどはそのわかりやすい例です。SDGsに取り組まなければいけないと誰もが思っていますが、実際に何をしていけば良いのかは分からない。弊社はOEMメーカーとして国内外の顧客と接しており多くの情報を持っていますので、クライアントからSDGs関連の相談もよく受けます。RD LINKさんのエキスパート活用も同様で、わからないことは外部の専門人材のサポートを受けながら成長できたら良いと思います。
本日はお忙しい中ありがとうございました