会社を離れてもどこかで誰かのサポートをしていきたい。業務委託はそれが叶う働き方。

2023.09.21

エキスパートインタビュー

会社を離れてもどこかで誰かのサポートをしていきたい。業務委託はそれが叶う働き方。

今回インタビューにご協力いただいたのは、セカンドキャリアでRD LINKのエキスパートとして活躍いただいている澤井さん。テルモ(株)で定年後再雇用ののち65歳を目前に退職され、現在は医療系大学非常勤講師、バイオデザイン先進大学の医療機器開発メンターなどの役割を担いながら、RD LINKのエキスパートとして医療機器開発スタートアップ企業のコンサルタントなどに携わられています。

業務委託で仕事をする面白さやメリット、また外部人材として働くうえで気を付けていることなどをお伺いしました。

RDエキスパート:澤井 健二さん

PROFILE

テルモ(株)にて、知的財産部で特許調査、出願、係争業務に従事。その後、企画調査部にて事業計画策定、商品導入/事業買収探索等のマクロ視点業務を経たのち、新規事業として在宅医療事業創生担当となる。病院~開業医~訪問看護師~薬剤師および患者様接遇を通して、現場ニーズの違いに応じたソリューション開発提供、国内標準システムとして定着化に貢献。またME開発企画でのリソースマネジメント(含開発進捗、QMS、教育訓練等)や、研究管理部(兼臨床開発部、兼テルモ生命科学振興財団)で開発者研修企画、バイオデザイン研修を通して臨床現場観察パイプを構築。プライベートで、東京女子医科大学・早稲田大学共同大学院にてレギュラトリーサイエンスを学ぶ。

退職後の情報収集の中でRD LINKを知り複業の世界へ

早速ですがRD LINKにご登録いただいたきっかけを教えてください

ネットでRD LINKさんのWEBセミナー説明会の情報を見つけて参加したのがきっかけです。昨年9月にテルモ社を退職して時間の余裕ができ、今まで自分がいた医療機器業界を外から見てみようとネットで業界の情報を見ていました。その時にRD LINKさんの説明会情報を見つけ、理系向けの複業ということで目に留まり参加した次第です。

説明会でお話を聞いて「へー、こういう世界があるんだ」と思い、私自身は直接の開発職ではありませんでしたが、理系出身でしたし、必要とされる場があるのであれば、今までの経験を伝えることで何かできるかもしれない、と登録させていただきました。

ありがとうございます。退職されて「何かするぞ!」「複業するぞ!」というよりは情報収集している中でRD LINKのサービスに興味を持っていただいたのですね

そうですね。やはり何かするにしても全然違う畑のことよりは、これまでの仕事の経験を活かして、社会貢献というとおこがましいですが、世の中に役立つ機会があるのであればと思っていましたので、RD LINKさんにそういう場や仕組みがあることを知り「あ、これは面白い」と思いました。

RD LINKさんとの出会いは偶然ではありましたが、自分がぼんやり考えていたことの実現可能な仕組みをお持ちのRD LINKさんが目の前を通り過ぎる寸前に、うまくキャッチした感じですね。「幸せの女神には後ろ髪はない。」の例えに近いかも、、、。(笑)

テルモ社は定年制度で退職されたのですか

制度上は65歳までですが、その少し前に自らの意思で退職を選択しました。基本的に60歳定年で、そのあとは再雇用で1年ごとの契約になります。私も再雇用で勤めていましたが、恐らく、会社としても積極的に再雇用で人材活用というよりも労働法的に再雇用をしなければいけないという側面があると思いますので、そうすると再雇用で残ってもやる仕事は現役時代と比較してどうしても制限されてしまうんですよね。

再雇用後は仕事内容が変わってくる、狭くなるということでしょうか

そうですね。あと、若い人たちの芽を潰しちゃうなと思って。なんだかんだ言っても煙たい存在ですよね(笑) なので良いタイミングで退職した方がいいのだろうな、とは思っていました。

引き際をご自身で判断されたのですね。その後のことはどのように考えられていたのでしょうか

プライベートですが、定年後に大学院でレギュラトリーサイエンスの勉強もしていましたし、退職前からプロボノで少し活動もしていましたので、会社組織を離れ、どこかで誰かのサポートをするのもいいかなと思っていました。

最初は自分の力で貢献できるのか不安だった

RD LINKからの仕事を始める前と始めた後で、何か思っていたこととのギャップはありましたか

最初は正直「自分にできるだろうか…」という不安がありました。「色々なことが経験できそう」というワクワク感もありましたが、ちゃんとできるかな?という緊張ですね。

これまでのように、会社組織の手厚いサポート(総務人事経理等)ある中で、自由にできたり、新しい事ができたり、というものと違って、新しいビジネスを進める組織外の方にとって、自分が専門家として業務委託で求められることの意味合いがなかなか見えづらかったですね。想定はしていても実際にクライアント支援に入った時に、クライアントニーズに合うか合わないかとか、自分の専門外でわからないことの相談が実際あったときに自分にそれを解決できるのか、といったことですね。どんなふうに自分がそこにサポートできて、クライアントに対して何が提供できるかって、どうしてもやる前は見えないんですよね。だからやはり不安はありました。

始めてみたら意外となんとかなりましたが(笑)

そうだったんですね。未知の不安の中で最初となる案件を受けてみようと思われたのはどのような理由からですか

案件の内容を拝見した時に、ピンポイントの深い専門性というよりは、開発ステージの入口から保険償還、ビジネスモデルといった出口まで、俯瞰的なご相談だったので「それならば、自分の様々な経験知からできるかもしれない」と思ったのと、最初は2ヵ月契約でしたので、もし自分がクライアントの期待に応えられない場合も一度リセットできるという短期間スタートだったということが、トライしてみようという気持ちの後押しになりましたね。

意外となんとかなったということですが、具体的に教えていただけますか

自分の力で貢献できるか、わからないことがあった時に対応できるか、という点に不安があったのですが、それは2つの対応策でなんとかなるとわかりました。

1つ目はネット情報の活用です。今の世の中、ネットで何でも調べられます。文献情報、知財情報しかり、厚労省などの一次情報も色々な学会の情報もそうですし、FDAやCMS(メディケア・メディケイド)等、海外の情報も。それは本当に良い環境になったと思いますので、ネット検索でもって、相談内容についてお応えする時の裏付け確認として駆使しました。

2つ目は友人や知人の存在です。もともと、長年の医療機器メーカー勤務、医療業界におりましたので、今、自分の周りには相談に乗ってくださる様々な分野の知人・友人がいるという肌感覚はありました。勿論、クライアント情報の秘密保持もあるので、全部を開示しては聞けませんが、自分の考えの視点、プロセスを確認する形で周囲の方に相談しています。答えは一つ、という世界ではありませんので、クライアントには「こういう考え方をしてみたらどうですか?理由はこうです。事例もこれこれです。」と一緒に考える形での提案としてお伝えすることならできます。

今は依頼案件に対して「できそう」という感覚がどの程度持てれば、なんとかなると思われていますか

そうですね。スタート時とこれまでの間で、自分がわからない部分を知り、調べ、自分としての「解」を準備するという仕事の取組み自体は、組織人としては当たり前のことでもあり、7~8割できそうだな、との経験者としての肌感覚があれば、十分受けることができると思います。

知らないことがある状態で関われたことが逆に良かった

今実際に業務委託での働き方を経験してみて、次に仕事を受ける時に向けてもっと準備しておこうと考えていることはありますか

今働きながら意識していることとしては、自分の経験知・情報の引き出しのアップデートですね。前職での経験値の引き出しは幾つかの分類に整理されていますが、実際に複業をやってみて、引き出しの数とその中身の深さが足りないところに気づくことができました。それに気づいた段階で引き出しを増やしたり、その引き出しに新たなアウトプットを溜め込んで知見を深めていくように意識しています。

具体的には、自分が提供していることがクライアントのニーズに沿っているかを、自分の一方向の視点だけにならないように、相手の視点や案件に近い事例を基に応用問題として多面的に確認しあうことと、自分が調べたものをワークの都度資料などの形にして提供するようにしています。

それがアウトプットとして、先方には思考プロセスも含めてその後の会社財産として残せ、自分自身にとっての新たな引き出しの中身にもなっていきます。そこで得たものは次の仕事でも例えテーマが違っても考え方としては多分使えると思います。

コミュニケーションを図りながら活かせる知見を提供し、足りないところは補いながら進めるということですね

はい。先方は、もちろんわからないことがあるので私に支援を求めるわけであり、先方が求めていることをニュアンスとしては理解しても、正確に何なのかを私が100%理解しているとは限りません。また、最初聞いただけでの私の回答も100%ではない場合もあります。

つまり先方の求めにマッチングしていないこともあるので、お互いに会話や資料を介して細かくやりとりをしてきたことが、自然とキャッチボールになって認識のずれを防ぎながら進められていたのだなと感じました。仕事進捗につれ、伝えたつもりでいたことが伝わっていなかった、とお互いに気づくシーンも多々ありました。

こういう進め方というのは想定できていなかったので、最初から意図的に行っていたわけではありませんでした。

意思疎通のためのコミュニケーションは大切ですね

はい。そういう意味では、私自身が依頼内容に対して100%はわからないまま関わることも逆に良かったと思いました。専門的に詳しいと、問題と回答を手元にもつ学校の先生のようになってしまい「これが正解です」「合っています」「間違っています」「そんな余計なことはしてはだめです」という一方向のコミュニケーションになりかねないと思います。

しかし、逆に自分の持っているものだけではそれができなかったので、お互いキャッチボールしながら「このあたりはまだ理解不足なのかな」「これは根拠を持って伝えきれてないかもしれないな」と私の中でも行ったり来たりしながら話をじっくり進められました。先方の担当者の方も時間を作って真摯に耳を傾けていただけたこともあり、私の場合は、クライアントにも恵まれていたと思いますのでそこは感謝しています。

外部人材として支援する際のコミュニケーションの取り方は会社員時代とは異なりますか

はい。外部人材としてというか、実は、会社員時代の大いなる反省の上でこういうコミュニケーションになっています(笑)

そうなんですか(笑)

実は、私はせっかちで物事を決めつける、押し付けるという感じが強いんです。前職でも、一緒に仕事に関わった後輩や他部署の方から「あの時は怖かった、怖い人だと思っていた」と言われることが多々ありました(笑)

でも先ほどお話ししたように、今回RD LINKさんからクライアントの依頼内容を見せていただいた時、概要は理解できましたが、全部の詳細は理解できなかったんです。自分の中では、仮説として「多分こうだろう」というのはありましたが、根拠を持って解説して事例を含めて「問題に対する回答はこれです」とお伝えできるものは手元にはありませんでした。

そうすると、せっかちなことはできないし、決めつけられないし、押し付けもできない。そんな環境でしたから逆に良かったですね。前職の退職前に、プライベートで「心理的安全性」についてのWEBセミナーを受講してようやく気づきがありました。その講演内容を基に「心理的安全性」を仕事のベースに、一呼吸置くということを意識しました(笑)

相手の話をしっかり聞き、コミュニケーションロスの無いように進める、それでうまく進むことも体験としてわかりました。特に外部からの人材として入る場合は、クライアントの目指す姿への理解や寄り添いが重要だと思いますので、一方向からではなく、多面的なコミュニケーションは意識しています。その分、話が長くなる弊害はございますが、、、(笑)

「お世話になった人」の棚卸しでつながりが活きてくる

複業をやってみたい、業務委託で経験を活かしてみたいという方が増えているのですが、特にこれからセカンドキャリアに入っていく方に向けて、準備しておいた方が良いことなどのアドバイスがあれば教えてください

よく言われることですが、やはり一度自分の棚卸しはしたほうが良いと思います。50代になると四半世紀は仕事をしているでしょうから、5年~10年間で何かひとつやってきたとしても3つ4つのことに関わっているはずです。例えば同じ営業でもエリアが変わったり扱う商品が変わったり、開発だったらいくつか商品を出してきていると思います。

少しずつ役割が変わってきているでしょうから、その5年~10年間のスパンで棚卸しをしてみて、その時に自分が何を残したか、どんな失敗をしたかということももちろんですが、どんな人のお世話になったのかを棚卸ししておくことも大事です。その人たちとの内面的なつながりを残しておくことが後々につながります。

なるほど。お世話になった方の棚卸しというのは意外としないかもしれません

準備と言うと大げさになって構えてしまうのですが、友人や知人の棚卸しをして「あの時はありがとうございました」という節目節目の連絡はしても良いと思いますね。

先輩が、偉い立場になってしまうとなかなか話ができないですし、退職してしまった方はもっとそうですが、今であればメールやSNSなどもありますので、先輩に対しては「今こんなことをやっていて、こんなことで悩んでいたのですが、あの時仰っていただいたことを上手く活かしています」「自分は、今はこんな相談に乗れるようになりました」とか、カジュアルな発信を意識して近況報告をするだけでも良いと思います。連絡をもらった方も「覚えていてくれたんだ。あの時のことが役に立ったんだ。」ときっと嬉しいと思います。

私は、そんな感じで、在職中にお世話になった社外の30人の方々に退職の挨拶と今後に向けた想いをお伝えしました。ドクター、看護師、薬剤師、事務の方とか。あとは大学の先生やベンチャー企業のみなさんとか、そういう方たちにも挨拶と近況報告をしましたね。今関わっている非常勤講師や東大・東北大の仕事も、その方たちが「特定企業に所属しない企業経験者の視点に期待」と、待ってましたとばかりに声をかけてくださいました。そこにはワクワクする見たことのない景色がありました。ひとえに長年の企業経験があったからこそ。

仕事上でのつながりやネットワークというと役立つかどうかで考えがちですが、そうではなくもっとシンプルに今までの御礼を伝えるぐらいの気持ちでコンタクトを取ると広がる可能性があるということですね

そうですね。私が50歳手前の時に、社外からおいでになった元S社開発役員の方から、人生の先輩として「50代は60歳以降の人生を豊かにするための大切な仕込みの年代。だから人との繋がりを大切にしなさい。」と言われたことがありました。その時はその意味がよく分かりませんでした。当時は60歳定年でしたし、その後の60歳からの人生なんて正直わかりませんでした。ただその言葉が妙に印象に残っており、50代になってからは、意識して社外の方との繋がりを作るようにはしてきました。50歳から退職までですので約15年間。

まずはやってみる、で道が開けます

澤井さんはご自身のネットワークからも仕事を受けられていますが、弊社のようなエージェントを使って仕事をするメリットやデメリットは何かありますか

新しいことというのは「0→1」なので、やはり怖いですよね。例えば、自分の人生を振り返ると、会社に入社することで、まず大きな「0→1」を経験しますが、そこは会社組織が仕事の環境を創ってくれます。その後は、会社という組織の中で「2→3→4」と与えられた仕事上の経験を積ませてもらえます。

それがいざ、会社組織を離れて、自分の力で働くという場面になると、自分の力で「0→1」という仕事環境作りが必要ですので、これは未経験であり、年齢もいってますので、とてつもなく怖いのです。でも、RD LINKさんでは既に企業とのリレーションがあり、様々なエキスパートの方に案件を紹介するシステムも整っています。つまり、既に仕事環境という舞台が用意されていると思います。

RD LINKさんのようなエージェントを利用するということは、既にあるベースをうまく活用して自分の培った知見を活かしてみることになり、それは「0→1」を作る必要はなく、既に整っている土台である「1」をベースに「2→3→4」にしていくことなので、実はとてもチャレンジしやすい環境です。

複業や業務委託など今までとは違う働き方をするにあたり、最も勇気がいる「0→1」の環境を整えてくれているのがRD LINKさんなのだと思いました。不安な人ほど自分の力だけではなく、第三者やプロのエージェントの力を借りると良いと思います。

あまり頭の中で「エージェントはこうあるべきで、自分はこうあるべきで、クライアントはこうあるべきで」と堅く考えすぎず、フランクに相談してエージェントの提言にも耳を傾けるスタンスでお付き合いすると、お互い気持ちよくお付き合いできるとは思います。

個人で活動していくことを目指している方に応援のメッセージとしてどんなことを伝えたいですか

私が言うのもおこがましいですが、やりたい気持ちがあるのであれば少しでも早くトライしていただけたらと思います。

バイオデザインの中でよく言われる「Fail Fast,Learn Faster」という言葉があります。「早く失敗すると早く学べる」という意味です。その前に私は「Try」を付けて考えています。ちょっと早めにトライしてみて、早めに失敗して早めに学ぶ。会社組織を離れたひとり立ち位置となった今、RD LINKさんからの案件も含めて、そのイメージでチャレンジしています。

複業や業務委託は今の状況を大きく変えなくても+αで小さくチャレンジしやすいので、まずはそこからやってみることで道も開けてくると思います。

まずはトライしないと次に続かないということですね。本日はありがとうございました。

                                 インタビュアー:髙本 記事:三浦

関連記事