複業へのチャレンジ方法。研究者ができる小さな1歩の進め方~研究者と経営者と時々RD LINK~
執筆者:中嶋章悟
過去の自己紹介文はこちら(https://rdlink.jp/expert_interview07)
今回は、研究者が複業するために具体的にどうしたらよいのか、ということを私の経験を踏まえてまとめてみます。
私は30代後半の研究者(と言っても研究者としては博士号をとって数年の若手)ですので、学生から若手、中堅の方で、これから複業という働き方を視野に入れたいという方に向けてこの記事を書いていますもしかしたら転職を視野に入れている方、研究職ではない仕事も経験したいという方にも参考にしていただけるかもしれません。
やりたい複業って何ですか
孫氏の兵法で『彼を知り己を知れば百戦殆からず』と有名な言葉があります。彼(相手方、やりたい複業)を知って、己(自分)を知れば、100回戦って負けることがない。片手落ちだと勝率は50%で、両方落ちると勝てる見込みがないということわざです。この言葉を念頭に、まずはあなたの「やりたい複業」を考えてみてください。
前回記事で、私が「研究者の自分にできる研究以外のことはないか」と掘り下げ、自身の経験値からも研究者の複業支援ができたら面白いんじゃないかと思い始め、RD LINKのエキスパートとして、仕事を始めた経緯を書きました。
ぜひまずはあなたの「やりたい複業」を考えてみてください。ただ、ポイントは全く新しいことではなく、あくまでも自分の「できること・経験」からつなげて考えてみていただけたらと思います。
複業を通して求めることを考えてみよう
次にあなたの「やりたい複業」を通して何を求めているか、掘り下げてみてください。
経験値なのか、収入なのか、あたらしいネットワークや環境なのか、複業の動機の大多数はこのあたりなのでしょうか。ただ経験値とひとつをとっても、それぞれの背景や、未来で思い描く、形にしたい何かで、1人1人違ってくると思います。私も上記のように、自分の経験値とやりたいことの延長線上でRD LINKがあったという感じで、いまに至っています。
もう少し自分の経験を書きます。
新卒で働いた食品メーカー時代に「飲食店を自分でやってみたい、だから飲食店で働いてみよう」と思ったことがありました。若かったというのもありますが、食品メーカーで大量に作られる食品というよりも、自分で心を込めてひとつひとつ作ってみたい、という思いが強くなったのだと思います。
今思えば、食品メーカーで作られる製品は、まず製品開発者の想いがあって、そこに原料を生産してくださる方がいて、それを実際に工場でたくさんの方が携わって試行錯誤して大量生産できる状況を作って、またそれを流通させ、実際に販売する方がいるというように、本当に多くの方の想いが重なってできたのがひとつの製品なのですが、若いころの私はひとつの部分を切り取って見ることしかできず、なんだか工場の製造ラインで作られる食品、もう少し言うと心がこもってないものを食べていていいのかと思ってしまったのです。そのため自分で飲食店をやってひとつひとつのメニューに心を込めてつくりたいという想いに至ってしまいました。
さすがに資金も、飲食経験もないため、自分1人で飲食店を開業するにはハードルが高すぎることから、まずは飲食店でアルバイトをしてみようと思い、実際に居酒屋チェーン店で働いてみました。当時会社員でしたので、日中仕事が終わったあとの夜の時間です。
実際に働いてみると、夜の時間ですのでお客さんがたくさんやってきて、特に土日は目が回るような忙しさでした。夜1時頃まで働いて、家に帰ったら泥のように眠るような日々でした。特に始めた当初は、夜うなされるというか、お客さんが店員さんを呼ぶチャイムの音が夜寝ていても頭に響いて、よく眠れないようなことが多々ありました(笑)
そんな状態で疲れ切っていたので、日中の本業でも眠気がとれず、その頃に本業で良い仕事をした経験が残っていません。本業ではないのですが、休日に寝坊して受講予定だった講座の先生からの電話で飛び起きたことがありました。さすがにとても落ち込みました。何のために働き始めたのだろうとも。
ただ実際に得た経験値としては、居酒屋での接客はこういう感じなんだ、こういうお客さんが多いな(優しい人が殆ど)、常連さんに名前を憶えてもらえるとうれしいな、厨房での料理ってこんな感じで作っているんだ、ピーク時の洗い場はすさまじいな、などなどたくさん経験できました。
しかしながら、日中への影響(本業含めて)や、自身の体力的にも厳しく、結局は2か月ほどで辞めてしまいましたので、完全な成功とは言い難いですが少なくとも一歩踏み出したから得たもの気づけたものはあります。
本当にいろんな方々に迷惑をかけてきた私の経験談でしたが、自分の経験値としては大きくて、前回記事にも記載した【ボールを相手に返す】【仕事は円。円は縁】という仕事観の基盤を作った経験の1つでもありました。
このような感じで、複業を通して求めることをイメージできれば、実際に複業へ踏み出す動機にもなりますし、実際に踏み出すと得られる経験は多岐にわたると実体験から言えます。
自身の能力と経験を棚卸してみよう
次に自分を掘り下げてみるという内容です。
何となく、自身のやりたい複業がイメージできたとしても、その仕事要件に自身が当てはまらないと、仕事を得ることが難しいと思います。
掘り下げるにしても、実際にどうやっていいのかわからないという方もいらっしゃるのかなと思います。
そのような方にお勧めしたいのが、『職務経歴書を書いてみる』です。
特に研究者の方、中でもアカデミア所属の方の場合、一般企業への転職を目指さない限り職務経歴書を書く機会がまず無いと思います。中には、研究概要書は書いたことがあるけど・・・という方がいらっしゃるかもしれませんが、職務経歴書は一般企業の方が読む書類、特に研究になじみがない方も読む書類のため、わかりやすく自身が経験したことを書いていく必要があります。
職務経歴書をしっかり書くことができれば、自身の能力や経験が形として示せるので、複業を実現するためにもとても重要なことだと思います。
一方で、そもそも職務経歴の書き方がわからない、、という方もいらっしゃるのかなと思います。
そんなときは、人材エージェントを活用するという方法を、私はお勧めします。RD LINKに登録する際も、必ず職務経歴書(もしくはそれに近い形の経験値がわかる書類)を提出します。RDサポートの正社員転職支援のサービスも同様です。
基本的に、人材エージェントへの登録は無料ですし、職務経歴書のテンプレートや事例集を提供してくれるたり、応募企業に合わせて職務経歴書の修正アドバイスをしてくれるところも多いです。
私は過去、転職エージェントサービスを利用し、転職したことがあります。最初の転職では職務経歴書を書いたことがなかったため、何度もアドバイスいただきました。最初に登録した人材会社から、実際に転職先を見つけていただいた人材会社まで、いろいろな人材会社の担当者に私の職務経歴書を見ていただき、客観的な視点を得ることができました。
やはり人材のプロに見ていただくと、職務経歴書の書き方から、良くなる表現や魅せ方なども教えていただけました。
これを繰り返して職務経歴書を作り上げると、自分の能力と経験が、誰に対してもわかりやすい形として示せるようになります。そもそもとして、自分のこれまでの経験を、しっかりと振り返る機会になります。
人材会社の方から「あなたのスキルや能力をこういう企業・仕事に生かせるのではないか」と客観的視点からアドバイスをいただけたりもしますので、自分の能力の社会への生かし方も見えてくると思います。
もちろんRD LINKに登録いただくのも良いと思います。
理系複業人材専門のプロですので、研究者の方々への有益なアドバイスができると思います。もちろん私もそのような機会があれば、何かしら尽力出来ればとも思います。
というように、しっかりと自分を掘り下げる、その手段としては職務経歴書を書くことをお勧めします。
新しいことにチャレンジするなら保険(リスク対策)をかけよう
複業の最も良いところは、本業という収入の基盤がある中でチャレンジできることです。
転職とは異なり、人材側も企業側も主に業務委託という制限が少ない中で就業できるため、双方のリスクが低減できます。お試しに近いような形ですね。
また起業しようと100%コミットして私財も出してチャレンジしてみたけど、なかなか事業が成長せずうまくいかなかった、、などに比べても、何か違うなという状況でも後戻りしやすいのが複業です。
最近見た好きな記事で、フワちゃんが電気通信大学の入学式で語ったことが記事になっていました。「どっちに転んでもいいように保険をかけて夢に挑戦していた」という内容です。
フワちゃん 「保険をかけながら夢に挑戦する」のが“賢いやり方” サプライズ登場の入学式スピーチに若者感動
この記事にすごく共感しましたし、実際にいま私の仕事内容も、保険をかけてリスク分散させて仕事をしています。やっていることのひとつが転んでも、別の仕事で収入があるので生きていけるし、残った仕事で自己実現させていけばいいという考え方です。
フワちゃんがすごいなと思うのは、大学生の段階で、そのリスク分散をして、実際に行動し、自己実現できている点です。私の場合は失敗から学んだと言いますか、転職も何回か経験し、起業でうまくいかなかったこともありましたので、その経験から保険をかける今の生き方に至っています。
複業は収入面での保険に繋がります。それが新たな経験、現在の本業での気分転換(新鮮さを得る)、新たなネットワークなど、得られるものも大きいです。
複業はリスクが少ない自己実現へのチャレンジだと思います。もちろん本業があっての複業ですので、しっかりと本業の社内規定に乗っ取ってチャレンジしてみてください。
やりたい複業にチャレンジしてみよう
ここまでに記載した「自分のやりたい複業を考える」「自分の能力と経験を掘り下げる」ことができれば、複業にチャレンジできる十分な土台ができてきたと思います。
実際にRD LINKのエキスパートに登録し、実際の複業情報に触れてみるのも1つの手段だと思います。
実際の複業情報に触れられれば、複業に必要な能力がまた見えてくるかもしれませんし、まだ自分の能力ではこの仕事は難しいな、といった感覚も得られると思います。もしかしたら、現在の能力や経験値で得られる複業もあるかもしれません。
『彼を知り己を知れば百戦殆からず』
これを実践できれば、あとは行動していくのみです。
友達や周りに複業したいということも伝えるのも良いでしょうし、少しでいいので行動してみることが重要だと思います。行動(発信)しないと何も変わりません。思っていても、なかなかチャンスは転がってきません。行動が最も重要です。
行動と振り返りを繰り返していければ、必ず複業を見つけられるでしょうし、複業に限らず自己実現につながると思います。
まとめ
今日のテーマは、研究者に限らず、一歩行動してみるということを中心にまとめました。その基盤となるのは、自分と相手を知ることだと思っています。自分と相手を掘り下げ行動すれば、絶対に負けません。
複業情報と書きましたが、RD LINKではエキスパートのコミュニティもできつつあります。私自身も自己実現の途中、まだまだやりたいことがたくさんある人間ですので、1歩行動した先の世界を一緒にお話しできたらうれしいです。