事例が少ない研究者の複業、どうやって私は現在の仕事に就けたのか。~研究者と経営者と時々RD LINK~

2023.03.14

コラム

事例が少ない研究者の複業、どうやって私は現在の仕事に就けたのか。~研究者と経営者と時々RD LINK~

自己紹介文はこちら(執筆者:中嶋章悟)
前回のコラム

フリーランスとして複業されている方は多くいらっしゃいますが、私のように理系博士人材がアカデミアで基礎研究をしながら他の仕事をしていることはかなり珍しいと思います。そもそも基礎研究者で複業というのもあまり聞きません。

企業とアカデミアの間に立ちはだかる壁

なぜ研究者に複業者が少ないのか。これにはいくつかの理由があると思います。その中で私が思う理由を2つ挙げます。

1つ目に、アカデミアと一般企業の間に大きな壁があることです。
アカデミア研究者が企業に転職するというのはなかなかハードルが高いというか、その逆に企業からアカデミアに戻ろうとする場合にも壁があるように感じます。アカデミアと企業では求められる経験やマインドが大きく異なることが起因しているのでしょうか。

2つ目に、アカデミア研究機関に所属して研究をすることが簡単ではなく、また本所属の研究者には兼業制限があることです。
企業研究者が、個人の想いだけでアカデミア研究機関に所属するのはほぼ不可能です。企業所属の博士研究者であっても自分の想いでアカデミアでの研究をするには時間もないでしょうし、給与においてもアカデミアにおいて無給で研究をすることはほぼ現実的ではないこと、その一方で有給での仕事はフルタイム以外ほぼ存在しなという経済的な面での問題もあります。

最近は個人でも、また会社業務としての社会人での博士課程入学も増えていますが、まだまだそのようなケースは少ないでしょうし、企業方針にもよるのでなかなか個人の希望だけでは動けません。またアカデミア研究機関に本所属している研究者は、就業規則のために複業が難しいのが現状です。一部の自身の研究成果で大学発ベンチャーをするなどの例外を除いては。

なぜ私は流動できているか

この2つのハードルを私がくぐり抜けてこられた背景としては、3つあると考えています。

1つめにストレートに研究をしてきていない、研究を自身の主軸となる仕事にしていないという点があります。修士課程修了後に企業へ新卒入社し、またいくつかの転職や起業を経験した後で博士号を取得したため、研究を中心に歩んでいません(博士課程時は、自身で小さな事業を経営し収入があったから出来た)。研究ではない仕事の経験値や稼ぐスキルを磨いてきたことで、実際にいまも研究ではない仕事を収入の柱にしています。

2つめに、1つめの延長線にあるのですが、働き方がフリーランスに近いという点です。正規所属しているのが自身で運営する会社のみで、融通が利くというのが大きいです。

3つめに、もともと縁があった先生のもとで博士号を取得し、そのままポスドク?のような形で基礎研究を続けているという点です。やはり縁はとても大切で、私の先生は私が思っていることやりたい世界を理解して所属させてくれており、未だに科学論文や申請書作成の指導やサポートをいただいています。

この3つの点で、アカデミア、企業の仕事で居場所があり、またある程度融通が利く仕事でもあるために、アカデミアと企業の壁を感じることなく、行き来が簡単にできてしまっています。

私がこの働き方ができているのは、昔から「毎日違う仕事をするような働き方をしたい」という仕事観をイメージしてきたことが大きく、自分の好奇心によるものだと思います。またやはり何より重要なのは積み重ねてきたということです。基礎研究も自身の仕事も継続して積み重ね、自身で出来ること、武器になること、専門領域だけなく多領域の経験値を増やし続けてきたことがこの働き方をできている理由だと思います。

またRD LINKでは経験値があれば、この複業を比較的スムーズに行える仕組みがあります。RD LINKのサポート範囲が企業向けなので、アカデミア機関で複業したいというのは少し難しいとは思いますが、企業研究者が別企業での複業は叶えられます。

またアカデミア研究者が複業という形で企業に所属できるチャンスは広がり、アカデミアから企業へという壁を気軽に超えられるメリットがあると思っています。個人的にはこの壁を低くするためにも、研究者にとって複業というのは意義があることだと思っています。正社員ではないので、アカデミア人材も企業も双方がある程度気軽に始められる複業が浸透すれば、また新しい世界ができるのではないでしょうか。RD LINKの事業には理系博士人材の流動化に寄与できる強い意義を感じています。

自分の感覚、適性も大切に

色々な仕事をするとした時に、実体験から、自分の適性も理解する必要があると思っています。

私の過去の仕事から自身の特性を考えると、毎日同じ仕事を繰り返すのが苦手でした。例えば、新卒で食品メーカーにて品質管理として勤めていた際は、決まったルールの中で食品を同じスペックで作ることが重要で、それを管理するという、いわば食品を世に出すための門番のような仕事をしていたのですが、どうにも毎日同じことをするのが苦手な性分でした。

その会社は2年半で退社し、小さなベンチャーに転職したのですが、そのベンチャーでは仕事内容、お金、人間関係など、本当に苦労しました。この苦労した時の経験、また前回のコラムで書いた飲食店アルバイトの経験を通して、しっかり積み上げることの大切さを学び、そこから今に至る10年ほどは「やることは違っていても自分の能力含めて積み上げること」をイメージして生きています。

この積み上げる重要性を理解できたからこそ、理系博士を取得し、またそれを生かした仕事を行い、自身の会社でもできることを増やしています。そのようにできることを増やしてきたからこそ、現在複業という働き方ができていると思っています。

新鮮な気持ち、幅広い経験、新しい世界、が仕事を楽しくする

複業をすることは、様々なメリットデメリットがありますが、私自身では得られるメリットの方が大きいため、好んで複業する道を通っています。様々な環境や人と一緒に仕事をしてみることは新鮮な気持ちを与えてくれ、幅広い経験につながります。その結果、方々の仕事を楽しむことにもつながっています。

その経験の積み重ねが新たな道をつくることや、研究者としての働き方のモデル例となるかもしれません。仕事を楽しめる、それが複業の楽しさなのかなと思います。ぜひ理系の方も、複業へのチャレンジをおススメします。

関連記事