研究者が複業するうえで気を付けていること~研究者と経営者と時々RD LINK~

2023.04.11

コラム

研究者が複業するうえで気を付けていること~研究者と経営者と時々RD LINK~

執筆者:中嶋章悟
過去の自己紹介文はこちら(https://rdlink.jp/expert_interview07

本記事では、研究者が複業するうえで気を付けていることを、私の経験を踏まえ、
仕事の選び方』『仕事の仕方』『各関係者とのコミュニケーションの取り方』という内容で記載いたします。

仕事の選び方は自分自身にプラスになるかどうか

まずこちらでは、専任研究者としてではなく複業可能な私の事例として記載します。
前回の記事にも書きましたが、私が感じる研究者の複業におけるメリットとデメリットが下記です。

メリット
・仕事に新鮮さを感じる
・転職ではないので、正社員よりも始めやすい
・新しい経験につながる、ネットワークも広がる
・新しい経験が本業や未来の仕事に役に立つかもしれない
・自分の市場価値が客観的に見える
・自分の経験をお金に換えられる、収入のアップにつながる
・収入の柱を増やせる
・自分の仕事が今いる環境以外にも求められていると実感できる

デメリット
・自分の時間が減る
・本業への影響(就業許可、職場との調整など)

このメリット・デメリットを踏まえて、『自分自身にプラスになること』かどうかが、私の『仕事の選び方』の行動原則です。

自分自身へのプラスと書くとなんだか自己中心的に見えてしまいますが、私としては自身の成長こそが社会貢献だと考えており、できることを増やしていき、その延長線上で自分だからできたという結果を更新し続けることが重要だと考えています。

研究者の自分にできる研究以外のことはないか

わかりやすい事例として、私がRDサポートでRD LINKのエキスパートとして仕事をさせていただくまでの経緯を説明します。

私がRDサポートに関わる以前は、
1 ウイルス関連の基礎研究
2 自身で経営するKJP株式会社
3 某文具メーカーで企画(業務委託の複業)
の業務を行っておりました。

3は週1回程度の打合せに参加するものでしたが、自身が過去に介護業界で経験した仕事を生かせる内容でしたので楽しんで仕事をしていました。ただ残念ながら3の企画そのものが終了し業務委託が終わってしまうタイミングでした。また、私は複業ができる環境にいるので、せっかくなら新しい経験もしてみたいし、そもそもリアルタイムで基礎研究を行う研究者として何かできないのかと日々考えていました。

その当時、何気なくGoogle検索にて『研究 複業』と検索したところ、検索上位に『RD LINK - 理系専門職の複業支援サービス【個人向け】』とのサイトを見つけ、世の中には既に研究者が複業できる仕組みができているのかと感心した記憶があります。サイトを見ると、食品関係や製薬関係が多いのかなという印象で、それでも研究者も複業をしようと思えばできる環境があるのだなと感じました。

またその頃、周りの研究者や大学院の学生など数人に、「研究者って複業に興味はある?ニーズってあるのかな?」などと聞いていました。その返答に「自分の研究能力を生かせるならやってみたい。収入につながるのなら尚のこと」というものが多く、その一方で「そもそもそんな仕事ってどこにあるの?」という反応も多かったです。

そんな話を聞きながら、自分は現役の研究者だし、一方で営業経験を含む社会人としての経験があるから、研究者の複業支援をできたら面白いんじゃないかなと思い始めていました。

ただ自分で事業としてやり始めるのは、現状の自分の時間やノウハウ的にも厳しいし、どうしたものかなーと、しばらく考えていました。

一歩を踏み出し機を掴んだ

次に行動したのが、2022年のお正月。新年だし何か新しいチャレンジをしてみようと考えて、ダメもとでRD LINKのHPから問合せしてみようと思い立ちました。「研究者の複業支援がしたいので何かご一緒できないでしょうか、でも社員としての応募ではないのですが、、」などと問い合わせフォームに記載した記憶があります。すると、すぐにご返信をいただき、しかも経営陣の皆様とすぐに面談させていただく機会を得ました。私の考えにも共感いただき、気が付けばRD LINKに業務委託の立場で参画させていただくことになりました。

こうして参画してから約1年が経過し、今このような形で研究者の複業というキーワードで記事を書かせていただいております。

振り返ると『自分自身にプラスになること』、すなわち自分のやりたいことや特性や経験をベースに仕事を選ぶ(応募していく)ことで、自分にも周りにも成果の面でも、良い結果が出ていくのではないかと思う出来事でした。

仕事の仕方で気を付けるべきは時間と情報

こちらでは『時間管理』と『情報管理』について記載します。

まずは『時間管理』について。
こちらは自分自身の現在の課題でもあるのですが、仕事の手を広げすぎると時間がどんどんなくなっていきますし、仕事も積み重なってしまいます。研究者としてはやりたい仕事ややらなくてはならない仕事が方々にある中で、追加で複業をするとなると限られた仕事にしか手が出せないと思います。特に新しく技術や能力を身につける分野だと、複業はおろか、勉強でもなかなか手がだしづらいのではないでしょうか。

私はフリーランスという立場なので、正規の仕事をしている方とは若干異なりますが、フリーランスは時間など融通が利く一方で労働時間がありませんので、仕事を方々で受けてしまうと仕事が積み重なってハードワークになりがちです。好きなことをしているので私の場合は仕事が趣味にもなっていて、とても幸せなことなのですが、やはりできるだけ効率的に仕事の時間管理をしていきたいと試行錯誤しています。

自ら業務に締切を設け集中時間を作る

最近気にしている方法に『集中する時間を作る』です。どうしても方々の仕事を持ってしまうと、日中はメールや電話での連絡が多く、細切れの仕事になってしまうことも多々ですが、私の場合は今回の記事執筆、論文や資料作成などは、あまり連絡がこない朝の数時間を集中時間にあてています。

この集中する時間はある程度の目的意識がないと作れません。そのための方法として、自分自身に合うなと思っているのが、締切りを作ることです。例えば締切りがある申請書などは必ず締切り日に間に合わせて作ると思うのですが、そのようなイメージですね。ズルズル先延ばしにして時間を使うよりも、締切りを作って仕事をした方が時間的にも成果的にも効率的だなと思っています。(私は締切り直前に集中してガガーとするタイプなので。)締切りが見えていれば逆算もできますし、特に論文や資料など何かを作成する場合は、手を動かしていなくても、何気ない時間で頭の中で構想を作っていることがあることが多々あります。仕事の時間管理において、締切りはすごく重要だと思っています。

また昨年から個人的に資格の勉強をしており、昨年は旅行系の資格にチャレンジしました。今年は士業系の資格にチャレンジ予定です。この時間を捻出するのも大変なので、朝の1時間、昼の1時間は最低限勉強をすると決める方法をとってます。これも締切り(試験日)があるので、それに向けて逆算して時間を作っているイメージです。

自分の会社経営とのバランス

私は経営者という立場もありますので、そのことも余談程度に触れてみます。

私の会社は、メンバーは総勢6名(役員と業務委託含む)で、ようやく内1名が従業員として増えたのですが、やはり自分1人でできることは限られています。そのために人数を拡大していきたいところですが、予算が無ければ人を雇えません。今私の会社は最初の拡大フェーズの1歩手前にいると思っており、またようやく会社としてもできることも増えて収益化できるビジネスも構築できたため、今私が頑張って収益を上げることができれば拡大できると考えています。

そのためにも時間管理をしっかりしつつ、優先順位をつけて仕事をしています。

ちなみに資格の勉強は今後拡大していくためにシナジーがあるビジネスを考えており、そこに向けて時間を投資しています。昔は資格に興味が全くなかったのですが、やりたいこと/やらなければならない状況になると、人は勉強できるんだなとすごく感じています。

情報管理の作法を知る

次に『情報管理』について。
基礎研究をしていると、学術論文や知財化など、重要な機密情報を扱っていることがほとんどだと思います。あえて知財情報を公開することは無いと思いますが、知財情報を学会発表してしまって知財化できなかったなどということは、そこそこ聞いたことがあります。
また複業をする場合、就業先でも多くの機密情報があるでしょうし、秘密保持契約を結んだうえで就業をしているとは思います。

このあたりの情報管理は、まずは心がけで大きな情報漏洩を防げると思います。ベースとしては情報管理の作法(知財化がどうしたら出来るか、情報漏洩のリスクなど)を知ることですが、うっかり自分のやっていることをまわりに伝えてしまう可能性もあると思います。
しかし、あくまで自分の経験ですが、仕事の成果が出始めて自分に自信がつき始めると、自分自身を押し出すことは重要でなく結果を出すことの方が重要で、まわりにこんな仕事しているんだと言うことも無くなったなと思います。お金をもらったらその道のプロだと個人的には考えていますので、私自身は淡々と、またしっかりと情報管理は心がけています。

各関係者とのコミュニケーションの基本は報連相

研究者に限らず、スペシャリスト(自身の技術を突き詰めていく方)とゼネラリストタイプ(関係者と協調して仕事を進める方)があると思っています。私は後者タイプで研究でも他仕事でも関係者が多い仕事スタイルです。今回はその後者としての例です。

研究でも、私の会社でも、フリーランスの仕事でも、骨格の仕事となるものできることはあるのですが、それだけでは事業拡大していけなかったり仕事が完結しなかったりしますので、周りの方に協力は不可欠です。

こちらからお願いすることや、またご依頼いただくこともありますが、私はボールをしっかり相手に返すことを意識しています。社会人に成りたての頃にたくさん言われた、ホウレンソウ(報告/連絡/相談)です

共同研究をしていく、共同で申請書を出すことが研究分野ではよくありますが、結果が出たらしっかり共同研究者に報告や相談をする。この繰り返しで成果に繋がっていきます。自分1人でできなかった研究は特にで、私の研究成果はほとんどが自己完結していません。この繰り返しで実績がたまっていき、自分のできることも増えていっているなと感じます。

また誰かを紹介いただき実際に会うことができたら、紹介いただいた方に報告と御礼をしますし、何か発展することがあれば、またその紹介者に連絡と相談をしていく。この繰り返しなのかなと思います。

円になるようなイメージで、ぐるっと回っていないときは何かが足りなくて滞っていたことが多々です。そしてそういう時はだいたい成果が出ていなません。円は縁だなと思います。

人間関係も同様で、昔の自分の経験で、自分から約束したのにフェードアウトしてしまったときがありました。今思い返すととても恥ずかしいのですが、やはりそうなってしまうとその関係性全く今に続いていません。今の自分であれば、無理な際は相談していたでしょうし、謝っていたと思います。
それができなかった、つまり円になっていなかったので、続かなかったのだなと思います。

結局、いま続いている関係は、円になっているから続いていると実感しています。研究に限らず、この基本的なことが各関係者とのコミュニケーションを取るうえで重要なのかなと思います。

まとめ

今日のテーマをまとめてみると、研究者だからという特異性はあまりなく、社会人として共通する内容が多いなというのが感想です。複業するうえで、やはりベーシックな能力や作法の上で、自分にしかできない仕事が乗ってくるのだと思います。基本の上に、自分を磨いていけば、おのずとできる複業が増えていけるのではないでしょうか。

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