定年後再雇用制度とはどんな制度?注意点などを解説

2022.05.09

コラム

定年後再雇用制度とはどんな制度?注意点などを解説

近年は定年後もまだまだ精力的に活動している人が増えています。定年後は趣味に没頭するだけでなく、再雇用を希望する人も多い傾向にあります。
再雇用を考えている場合におさえておきたいのが、定年後再雇用制度です。企業の雇用担当者は制度の内容を十分に把握しておきましょう。今回は定年後再雇用制度についてご紹介します。雇用担当の方はもちろん、人事などに携わる方もぜひご一読ください。

定年後再雇用制度とは

厚生労働省が2021年に発表したデータによると、高年齢者の継続雇用制度を導入している中小企業は75.2%もあり、主に「再雇用制度」が利用されています。2021年には「高齢者就業確保措置」も新設されました。

定年後再雇用制度とは?

「定年後再雇用制度」とは、定年を迎えた社員を規定通りいったん退職させ、退職金を支払った後、改めて雇用契約を結ぶ制度です。ただし、労働条件や賃金も変更される場合が多く見受けられます。
企業には社員が希望した場合、定年後も65歳まで雇用を継続することが、高年齢者雇用安定法によって義務付けられています。定年後再雇用制度は、定年後も雇用を継続する方法として、最も多く活用されている制度です。

勤務延長制度との違い

定年後再雇用制度は、定年退職した社員を新たに雇用し直すものです。一方、同じ雇用形態のまま継続する制度が「勤務延長制度」です。この2つは、退職手続きを行うかどうかが異なります。勤務延長制度は、定年を迎えた社員を退職扱いにはせず勤務期間を延長するため、労働条件や賃金が大きく変わることはありません。また、退職金は勤務延長期間が終了した後に支払われます。

高年齢者就業確保措置との違い

2021年4月に施行された改正法によって、高年齢者(70歳まで)の就業機会を確保する目的として「高年齢者就業確保措置」が追加されました。そのため、高年齢者就業確保措置では努力義務として、次の5つのうち1つを講じるよう企業に求めています。

  1. 70歳までの定年引き上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度の導入
  4. 70歳まで継続的に社員と業務委託契約を結ぶ制度の導入
  5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    a. 事業主が実施する社会貢献事業
    b. 事業主が委託、資金提供する団体が実施する社会貢献事業

実際にどれくらい定年後再雇用制度は利用されている?

総務省統計局の労働力調査によると、1970年には労働力人口に占める65歳以上の構成比が4.5%だったのに対し、2018年には12.8%まで上昇しており、ここ50年ほどで約3倍に増加しています。さらに、男性の就業率を見ると、60~64歳は1990年に69.2%だったのに対し、2018年には81.1%までと、約12%も上昇していました。
また、同調査によると、65歳以上の労働力人口は、2010年の585万人から2020年では922万人と倍近くまで増加しています。これは、高年齢者雇用安定法の改正による定年年齢の引き上げが要因と見られており、今後もますます定年後再雇用制後の利用者が増えていくと考えられます。

定年後再雇用制度の企業にとってのメリット

企業にとっての定年後再雇用制度のメリットは主に3つです。

・優秀な即戦力の確保

再雇用者は、長年働いて得たノウハウや能力があるので即戦力になるだけでなく、高い信頼性もメリットです。一方、新人を採用した場合は、仕事に慣れるまでに時間を要するうえ、戦力になるまでに退職する可能性も考えられます。

・採用や研修コストが削減できる

再雇用制度で人材を確保した場合は、新規で人を雇わないで済むため、求人広告費などの採用にかかるコストを必要としません。さらに、新人教育にかかる人件費などのコストを削減することが可能です。

・助成金が利用できる

定年後再雇用制度を導入している企業は、条件に応じて政府からさまざまな助成金を受け取ることができます。そのため、積極的に定年後再雇用制度を活用し、再雇用にかかるコストを削減しましょう。

定年後再雇用制度で考えておきたいポイント

定年後再雇用制度で契約した後に、企業と対象者の間でトラブルが発生することがあります。そうならないために、ここでは考えておきたいポイントをご紹介します。

雇用形態や労働条件

1度定年退職をするため、再雇用では正社員以外の契約でも雇用できます。たとえば、嘱託やパート・アルバイト、契約社員などの雇用形態です。ただし、業務内容については、定年前とまったく異なる業種に就くことは認められていません。また、65歳以上の再雇用の場合、これまで以上に健康へ配慮が必要になることを覚えておきましょう。

給与や時給

再雇用後の賃金に関しては、定年退職時の賃金の50〜70%程度に設定されることがほとんどです。しかし、高齢による体力の低下などの理由から、作業効率が下がることも考えられます。そのため、業務内容や本人の実績に応じて賃金を決定したほうがよいでしょう。ただし、最低賃金などの雇用ルールは守る必要があります。

契約期間と更新について

嘱託社員の場合は契約の更新が1年ごとに必要ですが、5年を超えて契約更新を行う場合は、本人の申し込みにより無期転換ルールが適用されます。ただし、再雇用者の雇用管理計画が作成されており、都道府県労働局の認定を受けた企業は、無期転換ルールの対象外です。

福利厚生や手当

合理的な理由なく再雇用社員に手当を支給しないことは違法です。また、正社員と再雇用者の間に待遇差をつけることもあってはなりません。住宅手当や家族手当、通勤手当など定められた手当は支給するようにしましょう。

有給手当について

有給手当は、再雇用後に定年前からの日数分が持ち越されるため、通算する必要があります。ただし、労働基準法施行規則第24条の3の定めにより、再雇用後に週の所定労働日数が4日以下で、なおかつ週の所定労働時間が30時間未満になる場合は付与日数が変更になるため、注意しましょう。

定年後再雇用の流れ

定年後再雇用をするまでに企業が行う手続きを解説します。再雇用を希望する対象者としっかりコミュニケーションを取りながら進めましょう。

再雇用までの流れ

再雇用までの手続きは、次の流れで行います。

対象者への通達と意思確認
定年退職の対象者に対して、個別面談や書類で再雇用制度の概要を説明し、再雇用を希望するか否かの確認をします。対象者が再雇用を希望する場合は、「再雇用希望申出書」を提出してもらい、企業で定められている手順に沿って手続きを進めましょう。また、対象者が再雇用を希望しない場合は、「再雇用辞退申出書」を提出してもらい、退職手続きを行います。

面談と雇用条件の説明
再雇用希望者と個別に面談を行い、業務内容や労働時間、賃金などの雇用条件を提示し、内容を確認します。事前に雇用条件を伝えることで再雇用後のトラブルが防げるため、ここでは対象者からの要望も踏まえて話し合い、お互いの認識を共有しておく必要があります。

③再雇用の決定と手続き
お互いに合意が取れた後は再雇用の手続きを行いますが、その前に定年退職の手続きを終わらせる必要があります。退職金を支給する場合は、就業規則の定めによって金額を決定し、予定していた日程に支払いができるよう手続きを進めましょう。

注意点

定年後再雇用者の雇用保険や、健康保険などの手続きに関しての注意点は次の通りです。

<雇用保険>
週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあれば、継続して雇用保険の被保険者として処理できます。この場合、ハローワークへの届け出は不要です。一方、週間の所定労働時間が20時間未満になると雇用保険の被保険者資格を失うため、管轄のハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出する必要があります。なお、2022年4月以降は65歳以上の兼業・副業者について、複数の勤務先の勤務時間を合計して週20時間以上となれば、雇用保険に加入できます。

<健康保険>
再雇用労働者の基準として、週の所定労働時間および月の所定労働日数が、常時雇用者の4分の3以上であれば、引き続き74歳まで健康保険被保険者として継続できます。ただし、途中で勤務時間の短縮など雇用条件の変更があった場合は、健康保険の加入対象から外れる場合があります。

<厚生年金>
厚生年金は70歳の誕生日前日まで、引き続き加入が必要です。ただし、健康保険の加入対象から外れた場合は、厚生年金保険の資格も失います。再雇用後の社会保険料は、定年退職時の資格喪失届と再雇用による資格取得届を一緒に提出することで、再雇用された月から新しい保険料に変更されます。そのため、手続きを行わなければ9月の定時決定まで定年退職前の保険料を継続して支払うことになるため、注意しましょう。

<介護保険>
介護保険料は65歳の誕生日の前日まで、引き続き給与から天引きが可能です。ただし、健康保険の加入対象から外れる場合は、介護保険料の負担はありません。また、65歳の誕生日以降も継続して介護保険被保険者でいられますが、保険料の天引きは給与からではなく年金からに変更されます。

定年後再雇用制度で利用できる助成金の種類

定年後再雇用制度を導入している企業や高年齢者雇用への取り組みをしている企業には、高齢者雇用促進に関するさまざまな助成金が用意されています。そのため、ここでは代表的な助成金をご紹介します。助成金をうまく活用して、人材確保の問題を解決しましょう。

・特定求職者雇用開発助成金

<特定就職困難者コース>
高年齢者や障害者といった就職困難者を、ハローワークなどの紹介により雇用する事業主が受けられる助成金です。ただし、受給するためには次の要件のいずれにも当てはまる必要があります。
● ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇い入れること
● 雇用保険の一般被保険者として雇い入れ、65歳に達するまで2年間以上継続雇用することが確実であると認められること

<生涯現役コース>
雇い入れ日の満年齢が65歳以上の離職者を雇い入れる場合に受けられる助成金です。ただし、受給するためには、次の要件のいずれかに当てはまる必要があります。
● ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇い入れること
● 雇用保険の高年齢被保険者として雇い入れ、1年間以上継続雇用することが確実であると認められること

・65歳超雇用推進助成金

65歳以上への定年引き上げや高年齢者の雇用管理制度の整備など、高年齢の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する制度の導入に活用できる助成金です。この助成金には、次の3コースがあります。

<65歳超継続雇用促進コース>
「65歳以上への定年引き上げ」「定年制度の廃止」「66歳以上まで雇用する継続雇用制度の導入」「他社による継続雇用制度の導入」の4つうち、いずれかを実施した場合に受給できます。

<高年齢者評価制度等雇用管理改善コース>
高年齢者の雇用管理整備計画を作成し、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の認定を受け、同計画の実施期間内に実施した場合に受給できます。

<高年齢者無期雇用転換コース>
無期雇用転換計画の認定と実施により、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換させた場合に受給できます。

・高年齢者処遇改善促進助成金

高年齢者処遇改善促進助成金は、2021年4月に定められた助成金です。60~64歳までの労働者の処遇を改善するために、就業規則などで定める高年齢者の賃金規定を増額改定した企業を対象にしています。ただし必須条件があるため、支給には高年齢雇用継続基本給付金が減少していることが必要です。また、増額改定した賃金規定の適用年度によって助成率が異なります。

まとめ

企業にとって少子高齢化の影響もあり、新たな人材の確保は難しくなってきています。一方、近年は人生100年時代と言われており、定年退職を迎えた方もまだまだ働き盛りといえます。そのため、定年後再雇用制度をうまく活用してみてはいかがでしょうか。
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