セカンドキャリアとはどんなもの?定年退職後のセカンドキャリアを考えるには
人生100年時代とも言われる現代では、定年退職後も働き続ける選択をする方が増えているのが現状です。
今回の記事では、今注目が集まっている定年退職後のセカンドキャリアについてご紹介します。
セカンドキャリアをスタートするために必要な準備や見つけ方もご紹介しますので、ぜひ新たな選択肢の一つとして参考にしてみてください。
セカンドキャリアとは
まずは、セカンドキャリアについてご説明します。
セカンドキャリアとは?
セカンドキャリアとは、「第二の人生における職業」のことです。
もともとはキャリアチェンジを意味しており、引退を迎えたプロスポーツ選手によく使用されていました。
しかし、終身雇用制度が終焉し、人生100年時代とも言われる現代では、40~50代の中高年層がこれまでのスキルや経験を生かして新たなキャリアをスタートすることを意味する言葉として使われています。
また、キャリアアップや将来を見据えたキャリアの転身、子育て後に従事する仕事という意味も含まれている言葉です。
なぜセカンドキャリアが注目されている?
終身雇用制度の終焉や少子高齢化による人手不足の影響などで、シニア世代の人材雇用が注目されるようになりました。少子高齢化が進む日本において、さらなる生産年齢人口と労働力の減少が見込まれる近年、さまざまな企業が「セカンドキャリアの支援プログラム」や「中高年社員のセカンドキャリア開発」などに力を入れるようになっています。
実際に、内閣府が発表した「平成29年版高齢社会白書の高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向」を見ると、2010年には65歳以上の就業率は9.1%ですが、2016年には11.9%まで上昇しています。
セカンドキャリアを考えるタイミング
30〜50代の年代別に、セカンドキャリアを考えるタイミングやポイントをお伝えします。
<30代>大きな目的はスキルの転身
30代は新たなスキルを身につけるために転職し、セカンドキャリアを築いていこうとする人が多い年代です。
まずはこれまでの経験やスキルを振り返り、自分のキャリアの棚卸しをすることから始めましょう。
これまで築いてきたキャリアや自分の強みがわかったら、今後の人生をどのように生きたいかを仕事とともに考えます。30代はまだまだ中途採用の募集も多く、スキルの転身をしてこれまでと異なる業種にもチャレンジしやすい年代です。セカンドキャリアのために新たな資格の取得が必要になる場合は、資格取得にかかる費用や期間など、入念に計画を立ててから退職の準備をしましょう。
<40代>将来を見通してのスキルアップ
40代は将来を見通し、スキルアップを目的としてセカンドキャリアを検討する年代です。
社会人経験を積んだ40代ともなれば、これまでに養ったスキルや経験が高まる一方、ファーストキャリアの行きつく先が見えてくる時期でしょう。ファーストキャリアでの限界を感じて、違う働き方や仕事を検討し始める方も少なくありません。
セカンドキャリアとして、これまでに養ったスキルや経験を活かしながら新たなスキルを獲得することで、新しく今までより自分らしい生き方や働き方ができる可能性が広がります。スキルも経験も併せ持った40代だからこそ、将来を見越した選択が重要と言えるでしょう。
<50代>定年後・子育て終了後の新しい働き方
50代は定年後や子育て終了後の新しい働き方としてセカンドキャリアを検討するタイミングです。
これまでは自分のやりたい仕事でなくても、「家族のため」「雇ってくれた会社のため」といった責任感から続けていた人もいるのではないでしょうか。責任感から解放されることが多い50代は、これまで興味があった仕事に挑戦しやすい時期とも言えます。
「人生100年時代」と言われる現代では、50代以降の挑戦は遅くありません。これまでの知識と経験を活かして自分らしいセカンドキャリアを見つけましょう。
定年後も働いている人は多い?
ディップ株式会社が2020年に行った「定年後の就業状況」の調査によると、全体の45%が定年後も就業していました。なかでも、60~64歳では7割以上が就業していることがわかります。
雇用形態の多くは契約社員や派遣社員、アルバイト・パートといった有期雇用で、その割合は全体の50%以上です。
さらに定年前の就業意向を見ると、約50%が定年後も働きたいと感じており、実際に定年後も働きたいと考えているうちの60%以上が定年後も就業しています。
一方、定年後の就業意向が高くなかった人も、60~64歳では40~60%が就業していることがわかりました。
この調査結果から、働く目的は個人で異なりますが、定年後も多くの方が新たなキャリアをスタートさせていることがわかります。
定年後のセカンドキャリアに向けて必要な準備
定年後のセカンドキャリアを充実させるためには何が必要なのか、こちらでしておくべき準備について解説します。
・ライフプランを考える
まずはセカンドキャリアに向けて、退職後のライフプランを考えましょう。
ライフプランとは、自分や家族のこれから起こるであろう未来のライフイベントを踏まえて人生設計やマネープランを練ることです。10年、15年先の自分の理想的な姿を想像することで、どのような仕事で何歳まで働くのか、いつまでにどのような力をつけて成果を出せばよいのかといった目標を立てやすくなります。
さらに、長期的なライフプランを考えることで、金銭的な意識も高くなるでしょう。理想的な生活を送るためにはどれくらいの資金が必要なのか、仕事とともに資金管理も行っていく必要があります。
・自分について客観的に考える
定年後のセカンドキャリアとして新たな道に進む前に、まずは「自分について」客観的に考えることが大切です。たとえば自己分析では、3視点から見る「Will・Can・Must」 の法則を使った考え方をするフレームワークがあります。
- Will:できるようになりたいこと、やりたいこと
- Can:自分のスキルや経験など今の自分にできること
- Must:やらなければならないこと、求められること
「Will・Can・Must」 を整理しながら考えてみると、 今の自分にどのようなスキルや経験があって今後は何がしたいのか、そのためには何が必要なのかを客観的に見つめ直すことができるでしょう。
さらに、社会や企業から求められていることを加えて、定年後のセカンドキャリアで何をするのかを併せて検討していきます。
・学習する
定年後のセカンドキャリアで新たな資格や知識が必要になる場合は、必要な資格を取得できるように学習しましょう。資格を持っていると、自分の知識を客観的かつ明確に証明できます。スムーズにセカンドキャリアを進めるためにも、できるだけ早くに学習を開始し、転職に役立つ資格を取得しておくことで余裕を持ってセカンドキャリアが実現できるでしょう。
そのためには、あらかじめ自分が興味のある分野で求められている資格について、調べておくことが大切です。目指す業種によって必要な資格は異なるうえ、取得までに有する時間も考えて行動しましょう。
・講習会やセミナーに参加
ハローワークや民間企業が開催している講習会やセミナーを探して、積極的に参加することも定年後のセカンドキャリアの形成に役立つでしょう。講習会やセミナーに参加して情報を得ることで新たな目標を立てやすくなるほか、自分のセカンドキャリアについて具体的に考えやすくなります。
また、自分と同じような立場の人と触れ合うことで、同じ目標を持つ仲間との出会いや同じ興味を持つ人に相談する機会にもなるでしょう。講習会やセミナーへの参加は、自分の視野を広げるチャンスでもあり、同時に人脈形成にもつながります。
・妥協できることも考える
定年後のセカンドキャリアとして仕事を探す際は、妥協できることも考えておきましょう。
できるだけ希望に合った仕事に就くことが理想ですが、条件の優先順位を考えて妥協できる条件を見つけておくと、より仕事を見つけやすくなります。
具体的には、賃金水準や仕事内容、仕事の方針、やり方などです。長い間1つの企業で働いていると、無意識のうちにその企業での習慣や常識が自分にとっても当たり前となってしまうことがあります。転職をする際は前職との間に環境の変化があることを認識し、環境の変化に柔軟に対応する姿勢を見せることが重要です。
・人脈を築く
定年後のセカンドキャリアを見つけやすくするためには、人脈を築いておくことも大切です。
人脈があれば、興味のある仕事を紹介してもらえる可能性が高まります。日頃から人とのつながりを意識するだけでなく、セカンドキャリアを支援するセミナーへの参加や、人材と企業をつなぐマッチングサイトに登録するなど、積極的に行動するとよいでしょう。異業種や他業界の人との交流もおすすめです。特に、興味のある分野につながる人との接点は、スムーズな転職につながる可能性があります。
定年後のセカンドキャリアで求められるもの
ここでは、定年後のセカンドキャリアで求められるものを3つご紹介します。
・専門性の高いスキル
新卒に比べて社会人経験のあるセカンドキャリアは、これまでに培った専門性の高いスキルが求められます。
特に50代以上や定年後の転職者は、即戦力になれるかが重要です。
自分のスキルや強みを把握し、企業にどのような貢献ができるのかを明確にしておきましょう。
定年後のセカンドキャリアとしてこれまでとは異なる職業に挑戦する場合には、あらかじめスキルを身につける準備期間も必要です。
・豊富な経験
退職前に携わっていた業務と同じ職を希望する場合、セカンドキャリアではこれまでの経験が重要視されます。これまでどのような仕事に携わってどのような経験があるのか、アピールできるように準備をしておきましょう。
仕事の進め方やコミュニケーション能力、部下の管理能力も高く評価される経験の一つです。もし、これまでと異なる職種を希望する場合でも、前職での経験や業種から、スキルを広げることができるかもしれません。培ってきたスキルや経験の活用はもちろん、そこから派生するジャンルへの挑戦も視野に入れましょう。
・目的を見失わない
目的を明確にすることでどのようなキャリアを形成すべきなのか、方向性や必要なことがはっきりと見えてきます。たとえば、定年後のセカンドキャリアの目的が「生活費のため」「貯蓄のため」なら収入を条件に仕事を探しますが、「生きがいを見つける」「社会とのつながりを持つ」なら、ボランティアなど報酬のない活動もおすすめです。方向性を決めるためにも、まずは目的を書き出してみましょう。
セカンドキャリアの目的を明確にすることで、定年後のビジョンが見えてくるはずです。
定年後にセカンドキャリアを見つける方法
続いて、定年後にセカンドキャリアを見つける方法を7つご紹介します。
再雇用制度を利用する
定年前と同じ職場で再雇用制度が利用できれば、定年後も引き続き同じ職場で働くことができます。
新しい知識や新たな人脈を築かなくても、これまで勤めてきた企業で働くことができるため、比較的選びやすいセカンドキャリアと言えるでしょう。
しかし、再雇用制度は定年退職をした企業で、改めて正社員以外の雇用契約を結ぶため、定年前と同じ条件で働くことは難しくなります。今まで部下だった人の下につくことになったり、収入が減ったりすることもあるため、利用する場合は納得できる条件かよく考えてから契約しましょう。
<メリット>
- 慣れた企業ですぐに仕事ができる
<デメリット>
- 収入や雇用形態などの条件が変わる
- 期限付きのため先が見通せない
転職する
再就職制度を利用すれば、これまでの会社とは別の企業にシニア人材として就職できます。
転職サイトやハローワークなどで再就職先を探して転職する方法が一般的であり、これまでとは違う仕事をしたい人やキャリアアップしたい人に選ばれやすいです。
<メリット>
- 好きな仕事に就ける可能性がある
- シニア人材として65歳以上も働ける可能性が高まる
<デメリット>
- 新しい仕事を覚えなければならない
- 無職の期間ができる
業務委託をする
業務委託とは、企業から依頼された仕事を請け負い、成果物に対して報酬を受け取る契約です。
得意なことを仕事にしやすく、自由な働き方がしやすいですが、再雇用契約と違い労働基準法などが適用されない点に注意しましょう。
<メリット>
- 得意なことを仕事にしやすい
- 柔軟な働き方ができる
- 働き方によっては収入を増やすことができる
<デメリット>
- 労働基準法が適用されない
- 自分で仕事を探す必要がある
経営者になる
十分なノウハウや経験があれば経営者になることも可能です。
<メリット>
- 自分で意思決定できる
- 自分のペースで仕事ができる
<デメリット>
- 責任やリスクから逃れられない
複数の仕事をする
複数の企業で働くなど、複数の仕事を平行して進めることで自由度の高い働き方が可能です。
<メリット>
- 新しいことに挑戦しやすくなる
- 複数の収入が得られる
<デメリット>
- 自分で仕事を探す必要がある
- 自己管理が必要
その他の活動をする
仕事以外にボランティアや興味のある分野の研究など、報酬のない活動もセカンドキャリアに該当します。
インターネットで検索すれば、地域の見守りからNPO法人のシニアボランティアなどさまざまな規模のボランティアが見つけられるでしょう。金銭面以外の目的でセカンドキャリアを検討する場合、ボランティアや報酬のない活動も有力な選択肢としておすすめです。
人材として登録する
転職エージェントや人材センターなどにはシニア専用のものもあるため、登録をすれば仕事を紹介してもらうことができます。自分のキャリアや強みを積極的にアピールすることができれば、仕事を紹介してもらいやすくなるでしょう。
セカンドキャリアでの注意点
続いて、定年後のセカンドキャリアを選ぶ際の注意点をお伝えします。
今の生活を基準に考えない
定年退職後は収入だけでなく自由に使える時間や人間関係なども大きく変化するため、現在の生活を基準に考えるとうまくいかない可能性があります。というのも、就職してから定年を迎えるまでフルタイムで働いてきた多くの人が、長期的な自由時間がある生活に慣れていないからです。就業時の自由時間を基準に定年退職後の時間配分を考えてしまうと、時間を持て余してしまうかもしれません。
早期退職をした場合、年金支給額にも注意
定年よりも早く退職した場合、年金受給額が下がる可能性が高くなります。そのため、事前に年金受給額や早期退職後の生活費についても考えておくことが重要です。
公益財団法人生命保険文化センターが発表した「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯主が60~64歳の夫婦の老後生活資金として公的年金以外に「月平均20.2万円」が必要とされています。早期退職を検討している場合は、若いうちから計画的に貯蓄しておくことを心がけましょう。
40~50代は転職のハードルが高い
60代以降はシニア人材としての雇用枠もありますが、40~50代はシニア枠のようなものがないため、転職率は低い傾向にあります。株式会社マイナビが2018年に調査した「ミドルシニア採用企業レポート2018」によると、50代の正社員雇用の割合は28.7%となっており、30代の正社員雇用の割合74.4%に比べると半分以下の割合です。
一方、50代は非正社員雇用の割合が24.5%であるため、正社員にこだわらずに非正社員での採用も視野に入れて仕事を探せば、セカンドキャリアが見つけやすくなるでしょう。
待遇面にこだわりすぎると仕事が見つかりにくい
定年後のセカンドキャリアは、定年前に比べると一部例外を除き収入や待遇は落ちることが一般的です。
定年退職は体力面などで仕事に影響が出やすい年齢でもあるからです。
そのため、雇用形態や給料面などこだわりたい条件が多いほど、仕事は見つかりにくくなるでしょう。
こだわりはできるだけ少なくし、広い視野を持って仕事を探すことで仕事が見つかりやすくなります。
家族の理解と協力を得る
セカンドキャリアは自分だけでなく、家族の生活にも大きな影響を与えます。そのため、事前に協力や理解を得ることが大切です。特に、定年よりも早く退職する場合は必ず家族と話し合い、自分の考えを理解してもらいましょう。
早期退職は自分1人だけの問題ではないため、家族に相談せずに決めてしまうと家庭でのトラブルにつながりかねません。理想だけを語るのではなく、論理的に今後のライフプランを説明できれば理解が得やすくなるでしょう。
定年後のセカンドキャリアで利用できる支援制度
最後に、定年後のセカンドキャリアで利用できる支援制度をご紹介します。
・定年後も働き続けることができる支援
定年後のセカンドキャリアに対する支援として、再就職支援や関連会社への転籍・出向、独立開業支援などを行っている企業があります。企業によって内容が異なるため、支援そのものがない場合もありますが、利用できる場合は定年退職後のセカンドキャリアとして検討してみましょう。
なお、派遣会社の中にはセカンドキャリアのためのスキルアップセミナーを開催したりセカンドキャリアの求人に特化していたりするところもあります。
・地域での支援
政府による定年後のセカンドキャリアに対する支援の一つに、シルバー人材センターがあります。
シルバー人材センターは働きたいシニア層を対象に、公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会によって市区町村単位で設置されています。パートやアルバイトとは異なり、お住まいの地域にあるシルバー人材センターに入会することで委任や請負といった形態で仕事を引き受けることができます。特に、シルバー人材センターでは継続的な仕事よりも単発の仕事が多いため、さまざまな職種を体験したい方や短期的に仕事をしたい方、人生の「生きがい」として仕事をしたい方向きです。
・ハローワークなどの支援
各地域のハローワークでは、定年退職後のシニア世代向けの再就職支援も行っています。
ハローワークなら地元に根付いた求人情報が入手できるため、お住まいの地域周辺で仕事を探しやすいでしょう。さらに、ハローワークでは仕事の紹介だけでなく、面接対策や働き方のアドバイスを受けることもできます。
転職経験が少なく、転職活動に不安がある場合でもサポートを受けながら仕事探しができるため、安心して取り組めるでしょう。
・助成金制度
条件を満たしていれば助成金制度の利用が可能です。
たとえば、日本政策金融公庫では「女性または35歳未満」もしくは「55歳以上の起業家」を対象とした融資を実施しています。最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)まで融資を受けることができるため、セカンドキャリアに初期投資が必要な事業の経営者を考えている方にもおすすめです。
また、各自治体にはシニア世代を対象とした補助金制度、低利子・無利子の融資制度があります。事業計画書の審査や報告書の作成などがあるため、誰でも無条件で融資してもらえるわけではありませんが、うまく活用できれば多額の資金が調達できるでしょう。
助成金の利用を考えている方は、お住まいの地域のホームページなどを確認してみてください。
まとめ
人生100年時代とも言われる現代では、定年退職後のセカンドキャリアに注目が集まっています。
この機会に、自分に合った定年後のセカンドキャリアを考えてみてはいかがでしょうか。これまでのキャリアので研究や開発などの理系職を経験されている方は、理系プロ人材と企業をつなぐ複業エージェントのRD LINKがセカンドキャリアの形成をサポートします。
これまでの専門的な経験や知識を活かしてセカンドキャリアの場を広げたい方は、ぜひRD LINKの利用をご検討ください。