再就職と再雇用に違いはある?それぞれについて詳しく解説
平均寿命や健康寿命が伸びている現代では、勤め先で定年を迎えたあとも働き続ける人が増えています。
定年後は「再就職」か「再雇用」のいずれかの働き方をするのが一般的ですが、それぞれの違いを知っていないと後悔するかもしれません。
定年を迎える前に両者の違いを比較し、自分にどちらが向いているかを検討してみましょう。
今回は、定年後の再就職と再雇用の違いについてご紹介します。
再就職と再雇用の違い
再就職とは
再就職とは、定年後にこれまでとは別の企業に就職することを言います。
<再就職の雇用形態>
厚生労働省が公表する2019 年(令和元年)雇用動向調査結果の概況を参考に、再就職の実態について紹介します。
令和元年の再就職者に占めるパートタイム労働者の割合は、以下の通りです。
年齢 | 男性 | 女性 |
60~64歳 | 44.5% | 73.7% |
65歳以上 | 69.2% | 89.8% |
性別に関係なく、再就職者の多くがパートタイム労働者として働いていることがわかります。これまでの経験を活かして正社員として働きたいという気持ちで再就職に臨んでも、実現しない可能性があることを認識しておきましょう。
<再就職の賃金水準>
再就職の賃金水準は、前職と比較して減少傾向です。再就職した60~64歳の人のうち67.6%は前職よりも賃金が減少したと回答しており、1割以上減少した人は6割以上にのぼります。
再就職の場合、これまでと同水準の賃金を維持することは難しいと言えるでしょう。そのため、退職を機に貯蓄額の確認や生活費の見直しを行い、今後の資金計画を立てることが大切です。
再雇用とは
再雇用とは、定年後も同じ企業で継続して働くことを意味します。
再雇用制度は、厚生年金の受給開始期間が65歳へと引き上げられたことに伴って制定されました。再雇用は誰でも希望すれば利用できる制度であり、一般的には以下のような流れで手続きを行います。
- 定年前に勤め先から再雇用に関する通知が届く
- 再雇用の人事担当者と面談を行い、労働時間や賃金などの勤務条件をすり合わせる
- 勤め先と本人の両者が条件に合意することで再雇用が決定する
再雇用は強制ではありませんので、希望しない場合は通常通り定年退職の手続きを行います。
<再雇用の雇用形態>
厚生労働省が公表する高年齢者雇用の現状等についてを参考に、再雇用の実態について紹介します。
60代前半で再雇用された人の雇用形態は以下の通りです。(複数回答)
正社員 | 41.6% |
嘱託・契約社員 | 57.9% |
パート・アルバイト | 25.1% |
再雇用後の雇用形態は、定年前の雇用形態とは無関係です。定年前は正社員として勤務していたからといって、再雇用後も正社員とは限らず、契約社員やパートとして雇用される可能性があります。また、再雇用後の業務の変化に関する企業側の回答は以下の通りです。
定年前とまったく同じ仕事 | 44.2% |
定年前と同じ仕事であるが、責任の重さが軽くなる | 38.4% |
再雇用後に業務内容が大きく変化する割合はそれほど多くないようです。しかし、場合によっては役割やポジションが変わることがあり、プレッシャーから解放されると同時に物足りなさを感じる人も少なくありません。
<再雇用の賃金水準>
再雇用も、再就職と同様に賃金水準は下がります。定年前の賃金を100%とした場合、61歳時点の賃金は平均78.7%です。つまり、再雇用後の賃金は定年前の8割程度にまで減ることが見込まれます。
再就職のメリット・デメリット
再就職のメリット
<65歳以上も働くことができる>
再雇用で働くことができるのは65歳までと定められています。一方、再就職は65歳を過ぎても雇用される可能性があるでしょう。ただし、再雇用によって65歳で退職したあと、また新たに仕事を探すのは簡単なことではありません。65歳を過ぎても働きたいと思っている方は、長く働ける可能性の高い再就職を検討してみるのもよいでしょう。
<自由に仕事を選ぶことができる>
先述した通り、再雇用の場合は定年前と業務内容が大きく変わることは少ないようです。しかし、再就職の場合は自由に好きなことを仕事にできます。
- 趣味を仕事にしたい
- 社会貢献につながるような仕事をしたい
- まったく違う仕事にチャレンジしたい
- これまでの経験を活かして大きくキャリアアップしたい
このような希望がある場合は再就職がおすすめです。
<新しい人間関係を築くことができる>
勤め先が変われば人間関係も一新します。再就職をきっかけに新しいコミュニティを形成することで刺激を受け、より充実した人生を送ることも可能です。新しいことや変化を楽しめる人は、再就職のほうが向いているかもしれません。
再就職のデメリット
<募集されている仕事が限定されている>
定年後の人を対象とする求人は数が少なく、業種・職種が限定されているのが実情です。やりたいことや働きたい気持ちがあっても、希望の求人を見つけることは難しいでしょう。
定年後の再就職は、今ある求人の中から自分に合うものを選ぶ、という感覚のほうが近いかもしれません。
<希望通りの条件に合った仕事が見つけにくい>
職業・職種だけでなく、賃金や勤務地、就業時間などを含めすべての条件が揃う求人はほぼないと言ってよいでしょう。あまり条件にこだわり過ぎると再就職活動が長引いてしまう可能性が高まるため、注意が必要です。
再就職の希望条件がある場合は、あらかじめ妥協できるラインを決めておくことでスムーズに進められます。
<空白期間がある可能性>
再就職を希望する人の中には、定年後に少しのんびりしたいことを理由に挙げる人もいるようです。しかし、ブランクが長くなると働く意欲がないと思われ、再就職に悪影響を及ぼすこともあります。
また、仕事をしない空白期間は給与による収入がなくなるため、資金的な余裕も必要です。再就職のタイミングなどについては家族と相談し、再就職の目標日を決めておくとよいでしょう。
再雇用のメリット・デメリット
再雇用のメリット
<慣れた職場で働き続けることができる>
再雇用の場合は職場が変わらないことも多く、慣れ親しんだ環境で仕事を続けることができます。再雇用は一から人間関係を構築したり、引っ越しや通勤経路を変更したりする必要がないので心理的なストレスを感じにくいでしょう。
<厚生年金の受給額が増える>
定年以降も働き続けるので厚生年金の加入期間が長くなり、65歳以降に受け取る年金が増えます。また、会社の健康保険も継続されるため、医療費の負担も軽減できて安心です。
<空白期間ができにくい>
再雇用の場合、退職日から再雇用までに1日も空白期間のないケースがほとんどです。そのため、賃金の水準が下がったとしても無給となる期間がありません。また、仕事をしない期間がないので時間をもて余すことがなく、これまで通り仕事に励むことができます。
再雇用のデメリット
<役職や肩書の変化>
再雇用によって役職や肩書きが変わり、重要なプロジェクトから外されてしまうこともあるでしょう。これまで第一線で活躍してきた人は物足りなさを感じ、人間関係でストレスを感じてしまうかもしれません。
しかし、再雇用の場合は割り切って、サポート役に徹するように気持ちを切り替えることが大切です。
<給与が減る>
再雇用では給与が下がるのが一般的ですが、業務内容は定年前とそれほど変わらないことが多いようです。そのため、給与が下がってしまったことに不満を感じる人もおり、再雇用後に雇い主とトラブルになることもあります。給与面で自分の希望を通すことは難しいかもしれませんが、再雇用前の面談時にきちんと希望を伝え、互いに歩み寄って納得したうえで再雇用契約を結びましょう。
<将来的には別の仕事を見つける必要がある>
再雇用はあくまでも65歳までが対象です。65歳を過ぎても働きたいという場合は別の仕事を探す必要があります。しかし、年齢的な問題から再就職はより難しくなるでしょう。定年後も長く働くことを望む場合は、定年のタイミングで再雇用か再就職か、真剣に検討する必要があります。
もらえる給付金の違い
再就職でもらえる給付金
<再就職手当>
定年退職すると、これまでの雇用保険に応じて失業給付を受けることができます。管轄のハローワークに失業申請を行い、失業の認定を受けることで支給される仕組みです。この失業給付は、給付日数内であれば次の仕事を見つけるまでの期間、受け取ることができます。もし、給付日数を残したまま新しい仕事が決まった場合、以下の条件を満たすことで再就職手当をもらうことが可能です。
- 所定給付日数の3分の1以上残して再就職した場合は支給残日数の60%
- 所定給付日数の3分の2以上残して再就職した場合は支給残日数の70%
<高年齢再就職給付金>
高年齢再就職給付金とは、基本手当を受給したあと60歳以降に再就職し、再就職後の毎月の賃金が基本手当の基準となった賃金日額を、30倍した額の75%未満となった人がもらえる給付金です。給付には以下の3つの条件を満たしている必要があります。
- 基本手当について算定基礎期間が5年以上ある
- 再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上ある
- 安定した職業に就くことにより被保険者となった
支給を受けることができる期間は、再就職した日の前日を基準に基本手当の支給残日数によって異なるため、以下のどちらかに分かれます。
- 基本手当の支給残日数が200日以上の場合は、再就職日の翌日から2年を経過する日の属する月まで
- 基本手当の支給残日数が100日以上200日未満の場合は、再就職日の翌日から1年を経過する日の属する月まで
ただし、支給期間中に65歳に達した場合は、65歳になったその月までが該当します。また、支給対象となる月の初日から末日まで被保険者であることが条件です。
再雇用でもらえる給付金
<高年齢継続給付金>
再雇用でもらえる給付金には高年齢雇用継続給付金があり、以下の条件を満たす必要があります。
- 被保険者であった期間が通算して5年以上ある
- 60歳になったあとも継続して雇用されている
- 60歳以降、各月に支払われる賃金が原則、60歳に到達時点の賃金月額の75%未満である
また、高年齢雇用継続基本給付金を受け取れる期間には、以下のような決まりがあります。
- 被保険者が60歳に到達した月から65歳に達する月まで
- 支給対象となる月の初日から末日まで被保険者である
再就職の場合にもらえる高年齢再就職給付金と、再雇用の場合にもらえる高年齢継続給付金を合わせて高年齢雇用継続給付と呼びます。支給金額についても条件があり、原則として60歳以後の賃金が60歳時点と比較して75%未満になっていることが必要です。
また、75%を超える場合は支給されず、75%未満の場合は低下率によって支給される金額が異なります。
低下率を求める計算式は以下の通りです。
低下率(%)=支給対象月に支払われた賃金額÷賃金月額×100 |
低下率は比較的簡単に計算できますが、支給額の計算は複雑です。支給額を自分で計算したいという方は、厚生労働省愛知県労働局が公表している支給率の早見表で、支給額の目安を調べてみましょう。
なお、支給率の端数は小数点以下第3位を四捨五入し、支給額の端数は小数点以下を切り捨てて算出します。
賃金の低下率 | 支給率 |
75%以上 | 0% |
74.5% | 0.44% |
74% | 0.88% |
73.5% | 1.33% |
73% | 1.79% |
72.5% | 2.25% |
72% | 2.72% |
71.5% | 3.2% |
71% | 3.68% |
70.5% | 4.17% |
70% | 4.67% |
69.5% | 5.17% |
69% | 5.68% |
68.5% | 6.2% |
68% | 6.73% |
67.5% | 7.26% |
67% | 7.8% |
66.5% | 8.35% |
66% | 8.91% |
65.5% | 9.48% |
65% | 10.5% |
64.5% | 10.64% |
64% | 11.23% |
63.5% | 11.84% |
63% | 12.45% |
62.5% | 13.07% |
62% | 13.7% |
61.5% | 14.35% |
61.%以下 | 15% |
早見表を使って、賃金月額が30万円の人がもらえる給付金額を2つのパターンで計算してみましょう。
【支給対象月に支払われた賃金が23万円の場合】
低下率 | 76.66%=23万円÷30万円×100 |
支給の有無 | 賃金が75%未満ではないので支給されない |
【支給対象月に支払われた賃金が21万円の場合】
低下率 | 70.00%=21万円÷30万円×100 |
支給の有無 | 低下率が75%未満のため、支給される |
支給率(早見表より) | 4.67% |
支給額 | 9,807円=21万円(支給対象月に実際に支払われた賃金額)×4.67(支給率)×100分の1 |
また、以下の2つに当てはまる場合、高年齢雇用継続給付は支給されません。
- 支給対象月に支払われた賃金が支給限度額である360,584円を超えた場合
- 高年齢雇用継続給付として算定された金額が、最低限度額である2,061円を超えない場合
再就職する方法
ハローワーク
再就職の方法として、真っ先に思いつくのがハローワークという方も多いのではないでしょうか。ハローワークは全国に500箇所以上あり、求人を探す以外にも就職相談や職業訓練を受けることができるのが魅力です。
また、ハローワークの中には生涯現役支援窓口を設け、65歳以上に特化した求人を扱って再就職を支援しているところもあります。
シルバー人材センター
定年退職者向けに職業紹介をしているのがシルバー人材センターです。通常の人材センターに比べ、求人内容に以下のような特徴があります。
- 臨時で短期間
- 軽作業が中心
シルバー人材センターは、生活費を稼ぐというより心身に負担がかからない範囲内で働きたいという人におすすめです。
転職サイト
最近はシニア向け転職サイトも充実しています。利用登録を行えば履歴書・職務経歴書の作成から応募までweb上で行うことができるため、自分のペースで仕事を探したい方に向いています。
人材紹介会社
人材紹介会社は再就職したい人と企業のマッチングを行ってくれるので、入職したあとに「こんなはずじゃなかった」というギャップの少なさがメリットです。また、キャリアコンサルタントによる履歴書の添削や面接練習などのアドバイスを受けることもできます。
最近ではシニア向けの人材紹介サービスも増えているので、自力での再就職が不安という方は利用を検討するとよいでしょう。
再就職支援サービス
再就職支援サービスとは、早期退職や定年退職に伴って再就職を必要とする人のための人材サービスです。サービスを利用する条件として、出身企業が再就職支援サービスの会社と契約を結んでいなくてはなりません。
契約を結んでいれば、求人紹介や履歴書添削、面接練習以外にも再就職に必要な研修や退職・再就職に伴う精神的なケアも受けることができます。退職する前に、勤め先に再就職支援サービスとの契約の有無を確認しておきましょう。
定年後の再就職を有利にするポイント
広く情報を集めておく
中高年向けの求人数には限りがあります。その中で自分の理想に近い再就職ができるかどうかは収集する情報量にかかっています。なるべく早く、できるだけ多く情報を集めることができれば、再就職を有利に進めることができるでしょう。
需要が高い仕事を考える
求人数が少なくても、職種によっては中高年の需要が高い求人もあります。たとえば、専門性が高い分野では若手育成が追いついておらず、経験や知識の豊富なシニア人材が重宝されやすいです。また、慢性的に人材が不足する医療や福祉、教育や飲食のような職業はこれまでの経験などに関係なく採用される可能性が高いでしょう。
条件を考える
再就職を考える際は求人に求める条件を洗い出しておきましょう。求める条件のレベルが高いと、その分再就職は難しくなります。
あらかじめ譲れない条件と妥協できる条件を考えておくと、スムーズな再就職につながるでしょう。
自己PRを考える
再就職を成功させるためには自己PRが重要です。多くの人はこれまでの経験や実績をアピールしますが、度が過ぎるとプライドが高いと捉えられてしまいます。そのため、自己PRには経験や実績以外のことも加えることが大切です。たとえば、「柔軟性がある」「何事にも前向きにチャレンジできる」など、再就職先での活躍をイメージさせるような内容を含めるとよいでしょう。
人材サービスの活用
先述した通り、再就職には情報が欠かせません。しかし、自分で集められる情報には限りがあります。そのため、退職を機に再就職を目指す人には人材サービスを利用しましょう。
人材サービスを利用すると、自分にマッチする仕事を紹介してもらうことができます。また、再就職の動向や履歴書の書き方、面接でのマナーや再就職をスムーズに進めるコツなどをプロからアドバイスしてもらうことが可能です。なるべく早く好条件の再就職を決めたいという方は、ぜひ人材サービスを利用しましょう。
業務委託というもう一つの選択肢
定年後の働き方には再雇用と再就職があり、自分で選ぶことができます。最近では、再就職(正社員)にこだわらず、新しい働き方として業務委託が広がっています。業務委託の魅力は、これまでの経験や実績、スキルを活かして働くことができるのと同時に、趣味や自分の時間を楽しむことができる点です。
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