役職定年とはどのような制度?考えておきたい今後のキャリア

2022.06.17

コラム

役職定年とはどのような制度?考えておきたい今後のキャリア

最近は役職定年を導入している企業が増えており、ベテラン社員になるとキャリア形成において重要なポイントになります。どのような制度か知らない場合は、制度の内容や目的を知ることでキャリア形成をしやすくなるかもしれません。
今回は役職定年についてご紹介します。長期的なキャリアプランを立てるためにも、ぜひご一読ください。

役職定年とは

まずは役職定年がどのようなものかを解説します。

・役職定年とは?

役職定年とは、役職に就いている従業員において、定年を迎えるよりも先に役職を解くことを意味します。

・役職定年制とは?

役職定年制とは、一定の年齢に達した管理者などの役職者を、役職から外す人事制度のことを指します。意味は役職定年と同じですが、これは企業に採用されている制度としての名称になります。
これを機に役職からは退くことになりますが、ビジネスパーソンとしての定年ではないため、企業との雇用契約は継続されます。ただし役職から外れることで、これまでとは異なる業務を担ったり、他の部署に異動を命じられることもあります。役職者としてのやりがいや責任感がモチベーションになっていた人にとっては、不本意な状態になる可能性もあります。
そもそも、役職定年制は60歳未満の定年が禁止されたことで浸透しました。これには、人件費の抑制や従業員の入れ替えによって、企業としての新陳代謝をあげることが目的とされています。

・役職定年の年齢は?

一般的に、役職定年は50代後半~60歳までの従業員に対して定められていることがほとんどです。人事院の「平成29年民間企業の勤務条件制度等調査」によると、部長級96.1%と課長級91.6%が、55~60歳までの間に役職定年を設定されていることがわかります。
設定されている年齢では55歳が最も多く、次に57歳が多い結果となりました。ただし、企業の規模や定年退職の年齢によって変動しやすいようです。
規模が大きく、定年が61歳以上の企業は、役職定年の年齢も上がりやすくなっています。

・役職定年の導入状況

日本では長い間、終身雇用や年功序列を採用している企業が一般的でした。しかし、年功序列の場合、高度成長期が終わった現代では、長期勤めた年長者の賃金が上がることは企業の負担にもなってしまいます。少子高齢化が進む日本では人材不足が深刻化しており、優秀な人材を確保するためにはよりよい条件や環境が求められます。特に、若手の人材を必要とするIT業界ではこれが顕著になっており、若手確保のために役職定年を導入する企業が増えているようです。
第一生命ホールディングス株式会社が2021年2月に発表した「50代男性の働き方とキャリア意識に関する調査」によると、役職定年があると回答している人の割合は全体で33.4%です。また、従業員数30人未満の企業では9.1%でしたが、5,000人以上の企業になると46.4%にまで増加していました。

役職定年の目的

ここからは、役職定年の目的について詳しく解説していきます。

・企業の新陳代謝

これまで多くの企業で採用されていた年功序列制度は、年齢と勤続年数が上がることで役職や給与が保証されていました。しかし、一度役職に就いた従業員が降格されることは滅多にありません。そうなると、同じ従業員が長期間就くことになり、若手が役職に就きにくくなります。
そこで若手を役職に就きやすくし、組織内の新陳代謝アップや若返りを目的とした役職定年を導入する企業が増えました。人材が入れ替わることで、新しい視点や感性などを経営に取り入れることができ、企業としての成長を測れるようになることが期待されています。

・シニア人材のキャリアシフト期間を設ける

定年年齢はこれまで60歳以上と定められていましたが、2025年から「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」によって65歳以上に変更されることになりました。定年年齢が延びたことにより、定年後のキャリアプラン構築の重要性が増すこともあるでしょう。役職は目標になりやすい一方で、ゴールにもなりがちです。特に、定年が近づくと現在就いている役職が自分自身の限界だと感じる方も多く、今後の可能性を閉ざしてしまいかねません。
そのため、役職から解くことで新たな目標を見つけたり、定年後のキャリアについて考えたりする期間としても役職定年は活用されているのです。

・定年延長によるコストを下げる

定年年齢は現在に至るまで延長され続けており、今後下がる可能性はほぼないと考えられます。これまでのように終身雇用や年功序列を採用している企業では、従業員の高齢化により、人件費が大きな負担になっています。特に、役職に就いている期間が長いと基本給だけでなく役員報酬も発生するため、役職が多い大企業ほど負担も大きいでしょう。
この問題を解決するために、定年年齢よりも早い役職定年を設け、人件費の削減を図ることが目的です。

・無理なくシニアが働ける環境を整える

超高齢社会の日本ですが、医療技術の発達や生活の変化により60歳を迎えてもまだまだ現役で働く意欲的な人が多くいます。しかし、年齢による体力の低下により、働き盛りの頃と同じように働くことは難しいかもしれません。役職に就いていると責任や負担も大きくなり、心身共に厳しくなることがあるでしょう。
役職定年により、定年年齢よりも早く役職を退くことで、体力的に厳しいと感じるよりも先に負担が少ない業務に代わることができます。
また、早い段階で役員が入れ替わることで、知識や経験の豊富なシニアが、若手の育成やサポートに回ることもできるでしょう。
結果、年齢を問わず無理なく働ける環境が整い、離職率の低下や企業への安心につながるといえます。

役職定年後の仕事では何が変わる?

役職定年を迎えることで、従業員にはどのような変化があるのか、特にわかりやすい4点を解説します。

・所属部署での業務

役職定年を迎えた後、業務が2つのパターンに分かれます。一つはこれまでの役職と同格の専門的知識を要する一般職、もう一つは降格による異動です。
業務内容としては、役職定年後も以前とほぼ同格の専門職として勤務をするケースが多くなっています。役職には就いていないものの、これまで培ってきたノウハウやスキルを活かすことができるので、やりがいは感じられるのではないでしょうか。また、若手の育成を担当する教育係になるケースも増えつつあります。
公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団が発表した「50代・60代の働き方に関する調査報告書(2018年)」によると、役職定年の際に所属異動をした人の割合はおよそ33%でした。つまり、大半が異動をしていません。これは企業やかかわる業務内容によって異なります。
また、同サイト内では部署異動をした人の満足度調査も行っています。満足したと回答している人の割合は、7割程度と高い割合でした。理由としては、元上司が同じ部署内に居続けることで新しい役職者がやりにくいのではないかという気持ちがあるからのようです。
反対に異動に不満を感じていた人の意見で最も多いのが、これまでの知識や経験を活かすことができないというものでした。
満足度の割合だけみると、異動がなかった人で満足している人が87.9%と9割近い割合を占めており、異動のないほうが満足度は高くなっていることが見受けられます。

・給与

公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団が発表した「50代・60代の働き方に関する調査報告書(2018年)」によると、全体で9割以上が役職定年後に収入源を報告しています。役職定年前の給与から50~75%に減少したと答えている人は全体の40%近い割合になりました。以前と同じ年収を維持できている人は1割しかいません。
役職がなくなることで役職手当がなくなるだけでなく、基本給も下がるのが一般的です。
また、人事院の「平成29年度民間企業の勤務条件制度等調査」によると、役職定年制があると回答した企業数は全体の16.4%、企業規模が500人以上の場合は30.7%で、95%以上が今後も役職定年制を継続すると回答しています。
少し古いデータですが、同じく人事院の「平成19年度民間企業の勤務条件制度等調査」の結果では、役職定年後の給与項目は役職定年前と比較して基本給36.6%、賞与33.1%、役職手当30.7%でした。そのため、役職定年がある場合は、早めに老後資金のことを考えておく必要があるでしょう。

・モチベーション

役職定年後はモチベーションの維持が難しいようです。公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団が発表した「50代・60代の働き方に関する調査報告書(2018年)」によると、役職定年後に収入が減った人のうち6割近くが大幅なモチベーション低下を起こしていることがわかります。ただし、収入が減っていない人でも24%の割合でモチベーションが下がっているため、役職から外れるだけでも影響は大きいと考えられます。
これを踏まえて、未だに役職定年制度の導入を渋る企業もあります。

・年金

役職定年後に収入が減ることで、年金の受給額も下がることが一般的です。企業に所属している場合、受け取れる年金は老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金)の2つがあり、このうち老齢厚生年金は給与額によって受け取れる金額が変動します。
老齢厚生年金は下記の計算式で受給金額を調べることができます。

月収×係数(5.481)÷1,000×厚生年金加入月数

仮に月収60万円で10年間勤務した場合、「60万×5.481÷1000×120」となり、年金の受給額は39.4万円と計算できます。しかし、3年早く役職定年を迎え月収が40万円になっていた場合、「(60万×5.481÷1000×84)+(40万×5.481÷1000)×36」となり、「27.6万円+7.8万円」の合計35.4万円が支給額です。役職定年をしなかった場合に比べて4万円の減額があることになります。

役職定年に向けて考えておきたいこと

役職定年を迎えるにあたってどのようなことを考えておけばいいのでしょうか。
こちらで4つのポイントをご紹介します。

・収入について考える

収入について不安を覚えた方は多いのではないでしょうか。変化でも紹介したように、多くの人が役職定年前の50~75%程度の収入になると言われています。同時に年金受給額も減少するため、できるだけ早期から老後資金を考えておかねばなりません。
ただ貯蓄するだけでなく、投資を始めるなど長期的にお金を育てることを意識してみるとよいでしょう。少額でも長くコツコツ続けることが大切です。

・新しい働き方を考える

役職定年をきっかけに、新しい働き方を考えることもおすすめです。シニア人材は若手に比べて体力は低下していても、これまで培ってきた経験や知識があり、勤め先以外からも需要があります。特に、専門的分野で活躍してきた人であれば、多くの企業から重宝される存在になるかもしれません。他にも、新たにスキルを身につける勉強を始めるなどもおすすめです。
一つの企業だけでなく、空き時間を活用して副業を始めてみるのもよいでしょう。
役職定年を迎えることでモチベーションが下がる主な理由としては、「自分の限界を感じること」、「もう必要とされていないと感じてしまうこと」などが挙げられます。しかし、新たなキャリアをスタートさせればやりがいやモチベーションの維持にもつながります。長年の経験を活かし、自分が得意なことや興味があることなどから積極的に挑戦してみてはいかがでしょうか。
役職定年後に新しく別の企業に就職を考えている場合は、これまで培ってきた経験や知識から即戦力になれることをアピールすると、興味を持たれやすくなるでしょう。転職活動は役職定年前に行うと、役職定年以前を基準とした給与の交渉がしやすいため、早めに行動することをおすすめします。

・給与以外のやりがいを見つける

給与が下がることで、自分自身の価値も下がったように感じてしまう方もいるかもしれません。しかし、新たなやりがいを見つけることができれば、モチベーションの維持につながります。
給与は数字で表れるのでわかりやすいかもしれませんが、見えないものにも目を向けてみましょう。たとえば、周囲からの信頼、感謝などもやりがいにつながります。経験が豊富な人は後継の育成に力を入れれば、若手の成長からやりがいを実感できるかもしれません。
給与以外にやりがいと感じられるものが何かを考え、やりがいを得られる働き方について考えてみましょう。

・キャリアデザイン研修などに参加する

自分だけでは考えることが難しい場合、キャリアデザイン研修などの講習会に参加することもおすすめです。役職から退いたとしても、これからもキャリアは続きます。人によっては定年後にまた新しく就職するなど、活躍の場があるしょう。定年を終わりと考えるのではなく通過点と捉えることで、今後のキャリア形成を考えやすくなります。
企業によっては自社内での講習会をしているケースもありますが、外部の研修などに参加することで、新しい視点を手に入れられるかもしれません。できるだけ多くの視点から見つめ直すと、自分のキャリアについて客観的に見ることができるようになるので、講習会に限らずさまざまな催しに参加してみるとよいでしょう。

まとめ

役職定年はゴールではありません。一つの区切りとして、これまでとは違った業界に挑戦するなど、新しいキャリア形成のチャンスと考えてみるとモチベーションを維持しやすくなります。役職定年を良い機会と捉え、働き方を見つめ直してみませんか?
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