セイコーエプソン株式会社 VSMプロジェクト/課長 岸岡氏・アシスタントマネージャー 赤羽氏インタビュー

2022.03.31

企業インタビュー

セイコーエプソン株式会社 VSMプロジェクト/課長 岸岡氏・アシスタントマネージャー 赤羽氏インタビュー

今回企業インタビューにご協力いただいたのは、セイコーエプソン株式会社VSMプロジェクト課長の岸岡佳昭氏とアシスタントマネージャーを務める赤羽浩孝氏。

セイコーエプソン社は私たちの身近な製品としてインクジェットプリンターを始めとするプリンターや、プロジェクター、パソコン、スキャナーといった情報関連機器をはじめ、水晶振動子(クォーツ)、半導体などの電子デバイス部品の製造、さらに産業用ロボットの製造を行っています。

そんなセイコーエプソン社にRD LINKを活用いただきました。
なぜ食やヘルスケア領域のRD LINKとセイコーエプソン?と思われるかもしれませんが、実はセイコーエプソン社は自社の独自ツールを使った特定保健指導事業を展開しています。今回はその特定保健事業のブラッシュアップをお手伝いさせていただきました。

企業紹介

セイコーエプソン株式会社
昭和17年創業。「省・小・精の技術」をベースに、プリンティングソリューションズ、ビジュアルコミュニケーション、マニュファクチャリング関連・ウエアラブルなどの事業をグローバルに展開。2021年3月、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」を制定し、「循環型経済の牽引」と「産業構造の革新」、「生活の質向上」などを企業活動の重要テーマに設定。“「省・⼩・精の技術」とデジタル技術で⼈・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創する”をビジョンステートメントとし、「環境」「DX」「共創」をメインテーマに企業活動を進めている。

プロジェクト内容

『特定保健指導のプログラムリニューアル』×『ヘルスケアビジネスのエキスパート』
独自ツールを使った特定保健指導事業を10年にわたり展開してきたが、サービスがマンネリ化していることもあり、新しいコンセプトを打ち出し更なる価値の提供に努めたい。10年間自分たちなりに取り組んできたが、現状のサービスやアイデアについて外部の専門家による客観的な視点を求めてRD LINKに依頼。

エキスパート支援内容

ヘルスケア領域のビジネスサポートに約22年間従事し、ヘルスケアサービスにヘルスコーチングのコミュニケーションを取り入れたサポートを遂行するなど、ヘルスケア情報や専門家とのネットワークを豊富に保有しているエキスパートをアサイン。まずは1stステージとして半年契約で、新しいコンセプト決めと資料など周辺アイテム制作の支援を実施。ディスカッションを通しコンセプトが決定した後は、保健指導の対象者に配布する冊子やサイト内容への落とし込みのためのアドバイスを行う。現在2ndステージに入り、まずは3ヶ月間を目安に新しいコンセプトに沿った指導内容のブラッシュアップを目的とした支援を実施中。

RD LINKへの依頼の経緯

今回RD LINKを活用いただいた経緯をお聞かせください。

岸岡氏(以下岸岡):既存事業である特定保健指導のプログラムのサービスやコンテンツの見直しを行いたいと思い、指導員の募集でお世話になっている取引先に相談をしたところ専門人材の力を借りてはどうかということで、ヘルスケア分野の人材に強いRDサポートさんをご紹介いただきました。
この特定保健指導の事業を開始して約10年が経ちます。自分たちなりに常に改善に取り組んできましたが、最近ではサービスがマンネリ化しているというお声を頂くこともありました。
そこで、そろそろ自分たちだけの視点ではなく外からの視点で、今の我々はどうなのかというところを見ていただかなければいけない時期かなと思い、プロ人材をスポット活用できるRD LINKさんに依頼することにしました。

     

最初から期間限定での人材活用を検討されていたのでしょうか。正社員採用も考えましたか。

赤羽氏(以下赤羽):今回は保健指導のプログラムを斬新にするというよりも、我々の持っているアイデアをどうやってブラッシュアップしていくかというところが一番やりたいことでしたので、正社員採用までは考えていませんでした。ご紹介いただいたSさんには事業領域について広く知っている中でアドバイスをいただき、弊社のベースを全く壊さずに良い感じのプログラムができてきているという点がありがたいと思っています。

エキスパートが入って変わったこと

過去に外部人材を活用されたことはありますか。

岸岡:弊社が特定保健指導のビジネスを始めた初期の頃には、セイコーエプソンとして保健指導事業が初めてということもあり、色々なコンサル会社さんに相談させていただいたことはあります。それ以降は自分たちでやってきました。

赤羽:ここまでは当初のコンセプトに基づき創り上げてきましたね。今、本当に久しぶりに第三者目線で客観的に見ていただいて、良い面も悪い面も含めて我々の凝り固まった見方をほぐしていただいています。

今回エキスパートを活用されてみていかがですか。

岸岡:まだプロジェクト自体は完了していませんが、弊社がうまく整理できてなかったところを、きちんと整理してもらえたという点がとても印象に残っています。

赤羽:現場サイドとして今回非常に良かったのは、一緒になって考えていただけたという点です。ただ知識をひけらかすのではなく、弊社の良いところをしっかり汲み取っていただき我々の力でやっていくという雰囲気にしていただけたのが一番大きいかなと思いますね。
最初は正直現場のメンバーはかなり構えていましたが、Sさんは知識の豊富さだけでなく進め方が非常にうまく、今ではチームとして良い雰囲気で動けています。また、Sさんのブログが勉強になるようで、プロジェクトの参加メンバー一同一生懸命読んでいますね(笑)

「整理してもらえた」というのは具体的にどのようなことでしょうか。

岸岡:Sさんには、弊社が日ごろ何気なくやっていることや過去にやってきたことの中から我々自身が気付いていないような強みやノウハウ、価値といったものを上手く拾い上げていただきました。またあちこちに散らばっている課題や情報も整理していただき、そのうえで軸は何にしたら良いのかという点をまとめていただけました。

赤羽:自分たちで自分たちを見た時にはなかなか価値や課題が見えてこなかったものも、第三者の目で「これは良いところですよ」「ここはもっとこうしたら良くなるところですよ」「ここは変えた方が良いところですよ」というように拾い上げていただき、それを我々としては戦略やプログラムに落とし込めました。
型にはまらないというか、実地の経験に基づいたアイデアを出していただけたのが非常に良かったですね。10年前にコンサル会社にお願いした時は、アイデアから施策まで全て先方の提案に沿って進めましたが、それとはまた違い整理するところから一緒に取り組めたのは良かったと思います。

RD LINKではエキスパートがいなくなっても進められるよう、活用いただいた企業様の社内に知見やノウハウが蓄積されるような支援の仕方を行っています。正解を教えてもらうことを期待されると少し違うかもしれませんね。

赤羽:そうですね。最初はやはり何か教えてくれるのではないか、画期的な提案をしてくれるのではないかと思っていましたが、それはある意味受け身ですよね(笑)Sさんからはもちろん色々教えていただけるのですが、みんなで作っていきましょうというスタンスでやっていただけましたので、非常に良かったなと思います。
コンサル会社と同じ感じでRD LINKさんに便乗する形で考えると少しギャップがあるかもしれません。Sさんの場合は、我々の意見に対して「それってどうやるの?どうすればできると思う?変えるとしたら優先順位はどうする?」という問いかけがあり、自分たちで考えながら進めている感じでした。
事業の修正をかける際に、自分たちでやっていくのか、コンサルタントのアドバイス通りにやっていくのか色々パターンは出てくると思いますが、RD LINKさんのエキスパート活用は前者のイメージに近いと思います。

外部人材ということで求めるマインドやスタンスがあれば教えてください。

岸岡:本当によく言う「良いところを見つけに行く」ということかなと思います。今回は本当にそうで、私は打ち合わせに毎回出ていたわけではないのですが、メンバーに聞くとやはり気付いていなかった良い部分、それって実はすごく価値がありますよというものを拾い上げてくれたのがとても良かったと言っています。知識があるというのは専門人材の前提だと思いますが、どうやったらこの事業を磨いて光らせられるだろうという観点で接してくれると非常に嬉しいですね。

赤羽:先ほど同じ内容にはなりますが、知識を教えるだけでなくチームの一員として一緒に考えてやっていくという姿勢があるととても嬉しいですね。

RD LINKの良さと外部人材活用の留意点について

今回初めてRD LINKを活用してみていかがでしょうか。

岸岡:一定期間こういう方に入ってほしいということに関して、やはりそこに合った人材、その経験を実際に持つ人材を紹介していただけるというのはとてもメリットです。自分たちが面接しながら集めるのは非常に難しいです。このようなスポットでの人選において、その仕事をやった経験があるかないかというのは非常に大事な部分です。履歴書や職務経歴書だけでは分からない部分が必ずあると思います。
その点RD LINKさんは、スキルももちろんあるけれど求めている業務の経験があるということをしっかり分かったうえで人材をご紹介いただけます。経験値の把握というところがエージェントの非常に大きな強みであり活用側にとっては魅力だと思っています。

赤羽:現場側として一番ありがたかったのは、RD LINKさんに緩衝材の役割になっていただけたことでしたね。
現場の最前線で気にしていたのは、やはりメンバーのことでした。我々も保健指導の開発をする専門職でそれなりのプライドを持ってやっていますので、現場のメンバーからすると全て壊されてしまうのではないか、否定されてしまうのではないかと、かなり構えていました。
私もエキスパートの方を迎え入れるのは初めてでしたので、そこはRD LINKさんに入っていただき状況を見てもらいながら、上手に攻めてきていただいたと思います。そのあたりで現場も満足度高く、不満なく進めてこれたかなと思っています。
やはり専門人材の方と我々だけでも難しい部分があり、RD LINKさんが介在することで緩衝材となって成り立つものであるとも思います。そういった親身なフォローがRD LINKさんの良さかなと思っています。

やはりみなさん最初は緊張されていましたか

赤羽:なんで会議に呼ばれなきゃいけないの?宿題ばかりもらってなんで?とかありますからね(笑)

逆にデメリットを感じる部分はありますか。

岸岡:デメリットがあるとすれば、エージェントさんにジャッジを頼りすぎると、あまり合っていない方を紹介いただいたまま結果も出ないということにもなりかねませんので、そこは第三者であるエージェントに任せている分のリスクかなと思います。今回はそういうことはありませんが(笑)

外部の方がチームに入るということで、岸岡さんや赤羽さんが現場との懸け橋として気を付けたことなどはありますか。

赤羽:やはり最初のマインドセットですね。現場メンバーの中でもやはり行き詰っている感は出てきていましたし、営業メンバーからはもっと良いプランを作ってくれという要望もあります。自分たちでは解決できないものに対して第三者目線を取り入れて改善していくことに価値があるということをチームメンバーに納得してもらい、自分自身はどのように伴走していくか気を遣いました。一度流れができれば進んでいくのですが、そのきっかけ作りは苦労しましたね。

岸岡:我々の事業で言いますと、保健指導の指導員がメンバーの中心となります。これまでの「用意されている題材を元に自身のスキルで指導する」という業務から「より良いプログラムを作っていく側になる」というメンバーに期待する部分をしっかり話したうえで進めていきました。最初は緊張もありますし、大変なことをやるんだという圧迫感もありますが、チームでコミュニケーションを取りながら進んでいったと思っています。

赤羽:実はちょっとした失敗もありました(笑)

そうなんですね!?ぜひそのお話をお伺いしたいです。

赤羽:急遽、新しいメンバーに入ってもらって、お客様向けの制作物のフィードバックをいただく機会を設けた際、その担当メンバーからは自分が一生懸命制作したものに対して指摘を受けたような印象でとらえられてしまった場面がありました。
このプロジェクトに最初から参加していたメンバーは、自分たちの作り上げたものの見直しをしていくために必要な場であると認識して進めていけるのですが、新しいメンバーに対しては、事前の目的や背景説明が丁寧にできておらず、私の進め方に問題があった出来事として大変反省しています。関係者には最初から参加してもらったり、きちんと背景を伝えるなどの綿密なフォローが必要だと改めて痛感しました。
まぁ、プログラム改善と合わせてRD LINKのパッケージの中で派生した様々な資料の改善も一緒にやってしまおうと思った私のやり方が全くダメでしたね(笑)

いえ、お気持ちはわかります(笑)せっかくなのでRD LINKの活用を検討している企業様へのアドバイスなどがあれば是非お願いします。

岸岡:期間をどれくらいでやるのかというスケジュール的なところはしっかり決めたうえで、本当に自分たちが必要な人材をエージェントの方とよく話し、その業務を経験したことがある方を紹介いただくことが大事かなと思います。一定の期間を定め、都度見直しながら繰り返していくという進め方が良いかと思います。
エキスパートの方とも、自社がその期間でどうのようになりたいかというゴールを握って理解いただくことが必要です。そのうえでゴールまでのプロセスはどのように進めたら良いかという、導入部分の骨組みは最初の打ち合わせでしっかり決めさせていただくと良いと思います。

赤羽:現場の窓口として補足するとすれば、エージェントの方、エキスパートの方含めて、やはり馬が合うというか、自分自身と合うかどうかはひとつの大事なポイントかなと思っています。どんなに素晴らしい方でも人物的にフィットしないと、普段のコミュニケーションがうまく取れませんし、進められるものも進められなくなります。単純に専門的な権威の方が入っただけではうまくいかないことは多々ありますので、そのあたりは重要かなと思いますね。

なるほど。それぞれの立場からのお話をお伺いできるのは非常に参考になります。契約前に三者面談で実際にお会いいただきスキル面や人柄を確認できるのはRD LINK活用の良さのひとつかと思います。そこで企業様もしっかり確認いただくのが大事ですね。

赤羽:そうですね。やはり仕事をするうえでは、最終的にはお人柄が一番重要視されると思います。

岸岡:チームにうまく飛び込めるかというところは大事ですね。外部人材の方が黙々と研究をして何か結果を出すということであればそれもありかもしれませんが、我々の場合はチームの中に入ってきていただくので、やはりコミュニケーションがしっかり取れる方が良いというのはあります。

経験や知識だけで活躍できるということではありませんね。ちなみに打ち合わせの頻度や連絡の取り方はどのようにされていますか。

赤羽:打ち合わせは月に2回です。RD LINKさんと相談しながらという感じですね。連絡も担当の方を介して取っています。今まではオンラインで行っており、本当は今年対面形式を設定する予定でしたが、現在はまたコロナの感染拡大によりオンラインのみで進めています。

連絡上でのタイムラグなどストレスを感じることはありますか。

赤羽:いえ、特に不都合はありません。逆にまとめてしっかりと1回の打ち合わせをさせていただくことになっていますので、それまでに内容を整理いただき課題もまとめていただけるので非常にスムーズに進んでいます。

R&D人材の複業について思うこと

セイコーエプソン社は複業制度はありますか。

岸岡:現時点では、個別に相談があれば会社として必要な確認をした後、許可する可能性もあるという状況で、一般的な制度とはなっていません。 働き方改革という中では、複業といったテーマは出てきますし会社全体として検討しなければいけない課題としてはありますが、取り込むのはまだこれからという状況です。

今回のプロジェクトはR&Dとは少し異なりますが、RD LINKの領域である研究職や開発職の方が複業することについてはどのように思われますか。

岸岡:弊社はメーカーですのでどちらかというと理系の方が多いのですが、一つは秘密保持のネックが大きいかなとは思います。
こういう世の中で働き手がどんどん少なくなっている中なので、当然色々な人材の方が活躍する機会が増えるというのは良いと思いますし、弊社としてもそういう観点で見ていかなければいけないなという思いはあります。
一方であるかないかは別として、弊社の先端の研究内容をご承知の方が競合で複業するという働き方は現時点ではちょっと厳しいかもしれませんね。そのあたりが、企業としても働く方としても何かに抵触することが無いように安心できる仕組みがしっかりできれば、将来的には良いかなと思いますね。

赤羽:岸岡の話の通りだと思います。ただ、私は文系ですが実際に自分自身がもし理系専門職だったらあまり他の会社のことが分からないので、たとえ同じ技術を持っていても他の会社に働きに行き他社の企業文化に触れるといった部分でアイデアや発想も変わってくる気がするので、個人としては良いなと思います。
一方、機密情報の管理とか危機管理意識を持ってやらないと、個人的にもトラブルになってしまうのではないかなという懸念事項もありますね。

今後研究や開発の複業は広がると思いますか。

岸岡:全てがオープンにというのはまだ難しいですが一定の管理と条件を付けていけば広がるとは思いますね。若い人がいませんからね。そこをどうするかですよね。

赤羽:ずっと専門でやられてきた方にとっては非常に魅力的な働き方になるかなと思いますね。各社で経験を積んだ方が定年退職後にも業務委託として他社でバリバリ活躍するとか、そういう形では広がっていくイメージはありますね。保健師や管理栄養士は複業の文化で、みなさん他の仕事もしながら弊社でも働いていただいています。自分のやりたい専門の分野を高めていくという意味で働き方として魅力的ですし、伸びていくのではないかなと思います。

一定の管理と条件というのは本当にその通りですね。その仕組みを弊社が作ってサポートできたらいいなと思います。本日はありがとうございました。

関連記事