複業として個人事業主になる人が増えている!?複業個人事業主のメリットやデメリットを解説

2022.11.04

コラム

複業として個人事業主になる人が増えている!?複業個人事業主のメリットやデメリットを解説

複業として個人事業主になる人が増えています。個人事業主は自由度が高いため、スケジュールの調整が比較的容易で、無理のない働き方ができるのが魅力です。これから複業を考える方は、個人事業主を検討してみてはいかがでしょうか。
今回は、複業として個人事業主になった場合のメリット・デメリットを解説します。

個人事業主とは

複業という働き方を考える際、個人事業主・法人・フリーランスのいずれを選択すべきか迷う人も少なくありません。まずはそれぞれの違いを確認しましょう。

個人事業主とは?

個人事業主とは、法人ではなく個人で事業を営む人のことです。
税法上の個人事業主になるには、税務署に開業届を提出して事業を開始したことを申告する必要があります。

個人事業主と法人の違い

法律上、個人の対義は法人です。個人は個々の人、法人は会社として考えます。
開業するにあたってそれぞれ手続きを行いますが、法人は手続きが煩雑です。また、法人として認められるまでには時間もかかるので注意しましょう。
個人事業主と法人の違いは、以下の通りです。

個人事業主法人
開業時・開業届を管轄の税務署に提出・法務局への登記は無料・株主などの出資者による出資・登記や定款などの作成・20~30万円程度の設立費用
廃業時・廃業届を管轄の税務署に提出・解散登記・清算結了登記など
税金制度・累進課税による所得税の算出・住民税・所得税で最大50%を超えることもある・法人税、法人住民税を合わせて30%程度・赤字でも最低7万円の税金がかかる

個人事業主のほうが開業時・廃業時ともに手続きや費用の面でハードルが低いと言えるでしょう。
税金制度については、個人事業主の税率が高いことから損をしているように見えますが、税金が50%以上になるようなケースは稀です。所得税は累進課税によって算出されますが、個人事業で得られる収入がそれほど多くなければ税金のことをあまり気にかける必要はありません。
まずは複業の仕事を軌道に乗せることに力を入れ、経営が安定してきたタイミングで法人化を検討するのもよいでしょう。

個人事業主とフリーランスの違い

個人事業主と同じように、フリーランスも個人で仕事を請け負います。そのため、個人事業主とフリーランスを混同してしまう人も少なくありません。
個人事業主の定義は、ある仕事を繰り返し継続して行う働き方です。一方、フリーランスは単発の仕事ごとに契約を結び、業務をこなす働き方を意味します。
また、フリーランスは必ずしも開業届を出す必要はありません。フリーランスのほうがやや不安定な働き方に見えますが、その分自由度も高く好きな仕事を選んで働くことができます。

複業や副業をしていると個人事業主になる?

先述した通り、個人事業主は仕事を反復・継続していることが定義です。複業といってもさまざまな職種や雇用形態がありますが、アルバイトは個人事業主には該当しません。なぜならアルバイトは会社に雇われている立場であり、独立には含まれないからです。また、単発で一度複業をした場合も反復・継続にあたらないので個人事業主にはなりません。
一方、複業でサービスを提供して報酬を得る行為を継続・反復している場合は、たとえサラリーマンであっても個人事業主に該当します。

個人事業主に必要な開業届とは?

開業届には、以下の記入が必要です。

  • 今後納税することになる税務署の名称
  • 事業所の住所
  • 屋号
  • 事業主
  • 事業内容 など

個人事業主になる場合でも、必ず開業届を提出しなければならないというわけではありません。しかしある程度の収入が見込める場合は、いずれ税金を納めることになった際の手間を省くためにも提出しておくほうがよいでしょう。

複業で個人事業主になるメリット

多様な働き方ができるようになっている昨今、複業で個人事業主になることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

独立や起業の練習になる

税法上の個人事業主になるには、開業届の提出が必要になります。その他にも、確定申告に向けてさまざまな帳簿を管理したり運転資金を確保したりするなど、事業主としてのマネジメント力が必要不可欠です。個人事業という小規模な経営であっても、このような経験を繰り返すことで経営の基本が理解できます。経験で培ったノウハウは事業の拡大や法人化、独立や起業の際に必ず役立つでしょう。

経費の計上ができる

個人事業主は事業で使ったお金を経費として計上することが可能です。経費とは、事業を行うために支出した費用のことで、業務上使用するものの多くが経費とみなされます。たとえば、業務で使用するパソコンの購入費用や毎月かかるインターネット使用料、ボールペン1本の代金も経費に含んで構いません。経費を計上すると、課税対象となるのは収入から経費を差し引いた所得となるため、節税効果が期待できます。業務で必要なものを購入した際の領収書などを管理し、経費を正しく計上しましょう。

確定申告で青色申告特別控除が使える

個人事業主として開業届を提出すれば青色申告が可能です。これにより、白色申告より最大65万円の特別控除を受けることができます。令和2年分の確定申告からは55万円へと引き下げられましたが、e-Taxによる申告(電子申告)もしくは電子帳簿保存を利用することで改定前と同等の控除が適用可能です。青色申告による節税効果は特別控除以外にもあり、純損失の繰越控除や純損失の繰戻し還付など個人事業主にとって強い味方となるでしょう。

家族を従業員にする場合、給与を経費にできる

利用には一定の条件を満たす必要がありますが、「青色事業専従者給与」を利用すれば家族に支払う給与も経費として扱うことができます。白色申告で利用できる「事業専従者控除」の場合は控除額に上限がありますが、青色申告の場合は給与の全額を計上可能です。家族を巻き込んで事業を行う人にとって大きなメリットと言えるでしょう。

銀行口座を屋号で開設できる

開業届を提出しておくと、屋号での銀行口座開設が可能です。個人と事業用の口座と使い分けることができれば経費などの把握・管理がしやすくなるでしょう。また、事業用のクレジットカードも取得可能です。屋号付きの口座やクレジットカードは第三者からの信用を高める効果も期待できます。

複業で個人事業主になるデメリット

確定申告に手間と時間がかかる

先述した通り、青色申告は白色に比べ税制上の優遇が大きいメリットがあります。しかしその反面、必要な書類が多く、手間がかかるデメリットは避けられません。青色申告をするための要件は以下の3つです。

  • 正規の簿記の原則に基づいた複式簿記
  • 貸借対照表と損益計算書の添付
  • 期限内申告

このように青色申告には比較的厳しい要件が課されています。急いで確定申告を行おうとしても書類不備などが起こりやすいでしょう。当然、不備があるとすぐに対応してもらえないこともあるので、余裕をもって準備を行うことが大切です。

失業保険がない

企業に勤めている場合は失業保険に加入しているため、もし倒産や退職となった場合に条件を満たしていれば失業給付を受け取ることが可能です。そのため、新しい仕事が決まるまでの一定期間は生活が保障されます。
しかし、個人事業主に失業保険はありません。仕事を失って収入がなくなっても、自身の貯蓄や他の仕事で生活費を確保する必要があります。

複業で個人事業主になる方法

複業で個人事業主になるための方法を紹介します。

基本的には開業届を提出するだけ

個人事業主になるために必要なのは、開業届を提出することだけです。開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、事業を開始してから1か月以内に税務署に提出する必要があります。
開業届は直接税務署に行って記入・提出するほか、国税庁のホームページからダウンロードすることも可能です。また、郵送での提出も可能で、最近ではインターネットで申請する人も増えています。
青色申告を行う方は、開業届の提出と同じタイミングで「青色申告承認申請書」も提出しましょう。

確定申告について

複業で個人事業主となった場合、以下のケースでは確定申告は必要ありません。

  • 個人事業が赤字の場合(税金が発生しないため)
  • 本業の収入が2,000万円以下で、個人事業の利益が20万円以下の場合

<確定申告が必要な例>

複業で得た収入200万円-必要経費50万円=事業所得150万円
この場合利益が20万円を超えているため、確定申告が必要です。

<確定申告が不要な例>

収入150万円-必要経費140万円=事業所得10万円
こちらは利益が20万円以下のため、確定申告は必要ありません。

確定申告することで特別控除や赤字の繰り越しなどの優遇を受けることができます。手続きが面倒という理由だけで判断せず、申告するメリットがあるかを確認し必要に応じて確定申告を行いましょう。

社会保険や税金について

会社員として働きながら個人事業主となる場合、会社で健康保険・厚生年金保険に加入しているため、社会保険の変更手続きは必要ありません。税金においては、本業と複業の所得の合計金額が課税対象です。複業で利益が出ればその分所得税・住民税が高額になるのは当然と言えるでしょう。もしも複業で赤字になれば税金が還付される場合もあります。
一方、企業に属さずに個人事業主となった場合は、自身による国民健康保険・国民年金保険への加入手続きが必要です。税金は複業で得た所得に対して、累進課税で算出された金額を納める必要があります。

開業届を出す際のポイント

開業届を出す際の2つのポイントを確認しましょう。

開業届の提出は必須?

所得税法第229条により、事業を開始したときには開業届を提出することが義務付けられています。しかし、開業届を提出していないことに対する罰則は定められていません。そのため、青色申告の必要がない場合は開業届を出さなくてもよいでしょう。
もし開業届を提出するのであれば、職業欄に記入する内容に注意してください。というのも、事業税が課される業種は70種類あり、種類によって税率が異なるためです。
また、業種の決定権は事業主にはありません。開業届に記入した職業によって事業税の対象であるかが確認され、確定申告の際に記入した職業によって業種が決定される仕組みです。
開業届を提出する際は、事前に業種と税率を確認し、徴収される税額についても調べておくことをおすすめします。

開業届を出しても事業所得で申告できるわけではない

開業届を提出しても、すぐに事業所得として認められることはありません。事業所得として認められるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 事業を長期間継続している
  • ある程度の規模である
  • 安定して売上がある

これらの要件を満たしているという認定を受けるためには一定の期間を要します。そのため、認定を受けるまでの間は雑所得として申告しなければなりません。雑所得として申告した場合も、収入から必要経費を差し引けるという点は事業所得と同じです。しかし事業所得に比べて受けられる優遇は少ないため、節税効果はそれほど期待できません。
事業所得か雑所得のどちらで申告するか迷う場合には、管轄の税務署に相談するのがよいでしょう。

まとめ

複業として働く場合、個人事業主・法人・フリーランスという3つの選択肢があります。
税法上の個人事業主になるには、開業届の提出が必要です。開業届と青色申告を提出すれば特別控除などの優遇が受けられるため、大きな節税効果が期待できるでしょう。しかし、複雑な会計処理や帳簿類の管理などに手間や時間がかかり、なかなか仕事に集中できない側面もあるようです。
法人の場合は開業時の手続きが煩雑で費用もかかるため、個人事業主よりもハードルが高いでしょう。法人化は事業の規模などを考慮しながらタイミングを見計らうことが大切です。
フリーランスは面倒な手続きが必要なく、すぐにでも仕事を始めることが可能です。複業という働き方が安定し、ある程度の収入が見込めるまではフリーランスとして仕事をするのがおすすめです。

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