フリーランスとはどんな働き方?
働き方改革によって働き方が多様化する現代では、フリーランス転向を考えている方もいるのではないでしょうか。しかし、フリーランスになるには考えておきたいことや、注意点もあります。事前に知っておくことで失敗するリスクを下げることができるので、フリーランスになりたい場合は備えておきましょう。
今回はフリーランスとはどのようなものか、なり方と併せて解説します。
フリーランスとは
フリーランスとは、そもそもどのような働き方なのでしょうか。まずは、フリーランスの定義や個人事業主との違い、働き方の特徴を解説します。
フリーランスの定義
<日本フリーランス協会の定義>
フリーランサーを支援する特定非営利活動法人「日本フリーランス協会」では、フリーランスを次のように定義しています。
- 会社や組織に属さず、スキルや才能を活かして働く個人事業主や個人企業法人
- フリーランスを自ら選択し、仕事と生活のバランスを調和させる働き方
<中小企業庁による定義>
経済産業省が管轄する「中小企業庁」が定めたフリーランスの定義は、以下の通りです。
- 特定の組織に属していない
- 常時従業員を雇用していない
- 店舗をもっていない
- 事業者自身のスキルや技能の提供によって成立している
個人事業主とは何が違う?
フリーランスと個人事業主は、企業や組織に属さずに個人のスキルや技術を活かして働く人に対して使用する呼称です。どちらも同じような意味として扱われますが、税務署への開業届の有無によって区別が変わる場合もあります。
開業届を提出していなければ「フリーランス」として、反対に開業届を提出していれば「個人事業主」として区別されることが多い傾向にあります。しかし、フリーランスと個人事業主の違いは明確に定められていないため、あくまでも基準の一つにすぎません。
フリーランスの働き方の特徴
フリーランスの働き方には、次のような特徴があります。
- 企業や組織との雇用契約を結ばない
- 労働基準法が適用されない
- 働く場所や時間を自由に設定できる
フリーランスは、すべての仕事を1人で請け負う必要があるため、大きな責任が伴いますが、働く場所や時間を自由に設定できます。
フリーランスとして働くメリット・デメリット
ここからは、フリーランスとして働くメリットやデメリットを解説します。フリーランスとして働きたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
フリーランスで働くメリット
<働く場所を選べる>
フリーランスは、働く場所の自由な選択が可能です。自宅のほか、コワーキングスペースやカフェなど、ライフスタイルに合わせて働く場所を検討するとよいでしょう。
<時間を有効活用できる>
通勤時間や休日を有効活用したい場合など、空いた隙間時間を有効活用できます。自分でスケジュールを調整しながら仕事を受注できるのがメリットです。
<自分のやりたい仕事を選ぶことができる>
フリーランスは、自分で仕事を選択できます。企業や組織に属している場合は、やりたくない仕事を背負わなければならないケースもあるでしょう。しかしフリーランスであれば、仕事を請け負うかどうか自分で決められるため、得意分野に限定して仕事を受注することも可能です。
<定年がない>
定年や年齢の制限がないフリーランスは、どの世代でも挑戦できるメリットもあります。定年後の収入を確保する手段として、自身のスキルや経験を活かしながら働けるフリーランスを検討してみるのもよいでしょう。
<スケジュールを自分で調整できる>
納期に間に合わせることは前提として、フリーランスは自由なスケジュールの調整が可能です。ライフワークバランスに応じて、休日の日数や仕事量を調節できるため、子育てや介護で仕事に費やせる時間が少ない方や、体力に自信のない方でも、自分のペースで仕事ができます。
<収入アップが期待できる>
仕事の成果次第で収入アップが期待できるのも、フリーランスのメリットです。会社員とは異なり、事業の売上が自分の収入に直結することから、モチベーションを保ちながら働きやすいでしょう。
<起業の準備や練習になる>
フリーランスは、起業を検討中の方にも適した働き方です。というのも、フリーランスでは仕事の受注から納品、開業届の提出や確定申告まですべて自分で行う必要があります。これは起業する場合も同様であるため、起業の準備や事業を個人で運営する練習過程として、フリーランスを視野に入れてみるのもよいでしょう。
<ライフスタイルに合わせて働ける>
結婚や出産など、大きくライフスタイルが変化する場合にも適しているでしょう。フリーランスなら仕事の時間や休日を自由に設定できるうえに、通勤の必要がない場合も多く、子育てや介護のために外で働くのが難しい場合にも、柔軟な対応が可能です。
フリーランスで働くデメリット
<社会的信用が低い>
フリーランスは、一般的に社会的信用が低い傾向にあります。社会的信用が低いことで発生する主な影響は、以下の通りです。
- クレジットカードの審査に通りにくい
- 住宅ローンが組みにくい
- 賃貸物件を借りにくい
- 銀行からの融資を受けにくい
フリーランスを検討する際には、企業や組織に属している間に上記の契約を結んでおくとよいでしょう。
<確定申告が必要>
企業に属さないフリーランスは、確定申告の手続きを自分で行う必要があります。また、個人で確定申告を行う際には、家賃や光熱費なども経費として計上できるため、管理がややこしくなってしまう可能性もあるでしょう。会計ソフトを導入すれば、収入や経費の管理がしやすくなりますが、自身で管理する手間が大きければ、税理士への依頼を検討するのもよいかもしれません。
<健康保険や国民年金に不安がある>
フリーランスは、健康保険や国民年金に加入する必要がありますが、会社員と比較すると、以下の不安点があります。
- 傷病手当金や出産手当金を受給できない
- 厚生年金よりも受給額が少ない
また、フリーランスが加入できる健康保険は、国民健康保険や文芸美術国民健康保険などが挙げられますが、保険料を全額自分で支払わなければなりません。加えて、国民年金は厚生年金よりも受給額が少ないため、下記のような私的年金に加入して、将来に備えておく必要もあります。
- iDeCoなどの個人型確定拠出年金
- 国民年金基金
<有休がない>
ライフスタイルに合わせて仕事の時間を自由に設定できる一方で、有給休暇がないというデメリットもあります。ケガや病気で仕事ができない場合など、無収入の状態が継続するケースを想定し、収入と貯蓄のバランスを考えておきましょう。
<生活リズムが乱れやすい>
自分のペースで好きな時間に働けるフリーランスは、生活リズムが乱れやすい傾向にあります。フリーランスとして継続的に働くためには、収入目標に向けて努力し続ける姿勢も大切ですが、オーバーワークにならないように自己管理を徹底する必要があります。
<保育園に受かりにくくなる>
ライフスタイルに合わせやすいフリーランスとはいえ、保育園に受かりにくくなるデメリットもあります。保育園への入園を希望する際には、基準指数や調整指数をもとに、保育の必要性を判断するための点数を算出する必要があり、点数の高い家庭から優先的に保育園への入園が認められます。フリーランスは在宅で働くケースが多い傾向にあり、自宅保育が可能だと判断されやすいため、減点されてしまいがちです。
フリーランスに向いている人の特徴
これからフリーランスとして活躍していくために、フリーランスに向いている人の特徴を3つ紹介するので、目指している方は以下の内容を把握しておきましょう。
自己管理ができる人
フリーランスとして仕事をするには、事業に関するすべての仕事を1人でこなさなければなりません。オーバーワークや体調不良などで納期に遅れが生じてしまうと、クライアントとの信頼関係が崩れてしまう恐れもあります。依頼された案件の納期を守るのはもちろん、体調管理やスケジュール管理などの自己管理を徹底できる人が、フリーランスに向いていると言えるでしょう。
コミュニケーション能力が高い人
個人で仕事を進めるフリーランスは、クライアントとのやり取りも自分で行う必要があるため、コミュニケーション能力が高い人であれば、円滑に事業を運営できます。特に、クライアントとの主な連絡手段がメールの場合は、お互いの表情が確認できないため、丁寧なコミュニケーションを心がけるとよいでしょう。クライアントに対して疑問点や報告したい内容がある場合は後回しにしないことをおすすめします。
向上心がある人
フリーランスとして継続的に仕事を得るためには、向上心を持ち続けるのも大切なポイントです。フリーランスとして多くのニーズに応え続けるために、以下のポイントを実践するとよいでしょう。
- トレンド情報をこまめに収集する
- スキルアップのためにもセミナーやイベントへ積極的に参加する
- 事業に関連する業界の最新技術を学ぶ
責任感がある人
フリーランスは、事業の全責任を1人で背負う必要があるため、仕事のクオリティやクライアントとのやり取りに誠実に向き合える、責任感の強い人が向いています。責任感をもって仕事に励めば、クライアントからの信頼にもつながり、長いお付き合いが期待できるかもしれません。
フリーランスになる前にやっておくべきこと
ここからは、フリーランスになる前に考えておくべきポイントを解説します。以下のポイントを実践して、フリーランスとして活躍できる環境を事前に整えておくことが大切です。
キャリアプランを考える
まずは、フリーランスとして働く際の具体的なキャリアプランを考えましょう。フリーランスの働き方を検討するタイミングの具体例は、以下の通りです。
- 幼い子どもがいるため、在宅で働きたい
- 家族の介護をしながら働きたい
- 企業や組織から独立したい
- 時間に融通の利く仕事がしたい
ご自身のライフスタイルと仕事のバランスを考えながらキャリアプランを検討するとよいでしょう。
自分のスキルやブランディングについて考える
フリーランスとして働くためのキャリアプランが明確に決まったら、自分のスキルや魅力をクライアントへ効果的に伝えるためのブランディングを考えましょう。武器にしたいスキルが複数ある場合は、それらをうまく組み合わせることで、個性を活かして自分を売り出すことも可能です。
将来設計について考える
その他、ライフステージ別の具体的な将来設計を立てておくことも大切です。フリーランスは、育休手当や傷病手当が受給できないため、結婚や出産などに備えて、どのように対応すべきか事前に考えておくとよいでしょう。
各種手続きについて
<社会保険について>
フリーランスが加入すべき社会保険に関する手続きには、4通りの方法があります。
- 健康保険を任意継続する
- 国民健康保険に加入する
- 文芸美術国民健康保険に加入する
- 家族の扶養に入る
保険料を比較しながら、ご自身のライフスタイルに適した社会保険を選びましょう。
<年金について>
フリーランスとして働く場合は、国民年金に加入するのが一般的です。国民年金は20~60歳未満での加入が義務付けられており、毎月一定額を納める必要があります。
フリーランスになる手順
フリーランスになるためには、仕事を探すだけでなく、書類手続きや会計ソフトの導入など、さまざまな準備が必要です。ここからは、フリーランスになるための具体的な手順を確認していきましょう。
①仕事を探す
フリーランスは、仕事を受注できなければ成立しない職業です。仕事を発注しているクライアントを探す方法には、次のようなものが挙げられます。
- クラウドソーシング
- SNS
- フリーランス専用エージェント
- 友人や知人からの紹介
- ブログやホームページで依頼を募集する
- コミュニティや交流会で人脈を得る
- 以前の職場からの業務委託を請け負う
クラウドソーシングを利用して仕事を受注するケースでは、クライアントから受けた評価を第三者が閲覧できるため、高評価を多く得られれば、仕事を受注するチャンスが広がります。ただし、クライアントから支払われる金額から数%の手数料が差し引かれるため、利用する際には注意も必要です。また、仕事を受注するための営業に苦手意識がある場合は、「RD LINK」などのフリーランス専用エージェントに登録して、仕事を得る方法もあります。
②書類の手続きをする
フリーランスとして受注する仕事が見つかったら、続いて以下の手続きを行いましょう。
- 厚生年金から国民年金への切り替え
- 健康保険への加入
- 開業届の提出
開業届は、事業を始めた日から1か月以内に税務署へ提出する必要があります。未提出でもペナルティは発生しませんが、開業届を提出していれば、青色申告の利用が可能です。
③青色申告を希望する場合は青色申告承認申請書も提出する
青色申告を希望する場合は、青色申告承認申請書も併せて提出しておきましょう。青色申告承認申請書の提出期限は、事業を始めた日から2か月以内ですが、開業届と同時に提出すれば、税務署へ出向く手間を減らせます。
④銀行口座の開設
続いて事業用の銀行口座を開設しましょう。プライベート用の口座と分けておけば、事業で得た収入や必要な経費の管理がしやすくなるため、税務処理へのスムーズな対応が可能です。加えて、屋号付きの銀行口座を開設すれば、社会的信用を得やすいメリットもあります。
⑤会計ソフトを導入する
フリーランスは、確定申告を自分で行わなければなりませんが、会計ソフトを導入すれば、スムーズな書類作成が可能です。また、e-Taxなどの電子申告に対応可能な会計ソフトであれば、比較的簡単に確定申告を完了できます。
⑥確定申告をする
フリーランスは、毎年の確定申告を忘れずに行う必要があります。確定申告とは、1年間の所得をもとに、税金の金額を税務署に申告する手続きです。経理作業を毎月行えば、確定申告をスムーズに完了できます。
⑦税金の支払い
確定申告が完了したら、税金の支払いも忘れずに行いましょう。税金の支払いを怠ると、脱税に問われる可能性があるため、確実に納付してください。また、税金の支払った後にも確認できるよう、税務署で納付書を発行しておくと安心です。
知っておきたいフリーランスの税金関連
フリーランスとして働く際には、税金の知識があることも大切なポイントです。
以下で、フリーランスとして働く際に知っておきたい税金に関する情報を解説します。
支払が義務付けられている税金の種類
<住民税>
住民税は、居住地域の自治体に納める税金です。フリーランスに支払いの義務が発生する個人住民税の種類は、以下の通りです。
- 所得割
- 均等割
所得割は、納税義務者の所得をもとに税額が算出され、均等割は、非課税限度額を上回る収入がある場合に支払う義務が発生します。確定申告を行っていれば、別途住民税のために申告を行う必要はありません。6月頃に送付される納税通知書を確認し、年1回か4回払いかを選択して納付しましょう。
<個人事業税>
個人事業税は、事業を運営する個人が納めなければならない税金ですが、住民税や所得税とは異なり、経費としての計上が可能です。業種によって個人事業税の税率は異なりますが、以下の業種は、課税対象外と判断される場合が多い傾向にあります。
- 農業
- ライター
- プログラマー
- システムエンジニア
また、個人事業税がかかる業種の場合でも、事業所得が290万円以下であれば税金を納める必要はありません。住民税や所得税と同様に、確定申告を行っていれば申告手続きは完了しているため、8月頃に送付される納税通知書に従って納付しましょう。
<所得税>
所得税は、1年間の所得にかかる税金です。フリーランスであれば、売上から必要経費を差し引いた金額が所得として扱われます。所得に適用される所得控除の種類の例は、以下の通りです。
- 基礎控除
- 扶養控除
- 社会保険料控除
- 医療費控除
また、所得から所得控除を差し引いた課税所得に適用される税額控除は、以下のような種類があります。
- 住宅ローン控除
- 配当控除
- 外国税額控除
所得税は、1年ごとの確定申告によって納税しています。ただし、フリーランスの場合は、クライアント側が源泉徴収したうえで報酬を支払うケースもあるため、所得税を二重に納めていないか確認しておきましょう。
これからは消費税についても注意
2023年10月から開始されるインボイス制度の影響で、適格請求書を発行できなければ、クライアント側の消費税の負担が増えてしまう可能性もあります。インボイス制度がフリーランスに与える影響は現時点で未知数ですが、免税事業者としてフリーランスで働いている場合は、適格請求書の発行ができません。インボイス制度の影響に不安を感じる方は、将来的に課税事業者になることも視野に入れながら、必要書類の準備を進めておくとよいでしょう。
まとめ
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